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能力がある、そんな理由で私はいつも殴られたり蹴られたりしていた。普通じゃないから、気味が悪いから、そういわれて育った。10歳で両親を亡くし、頼れる近しい親戚はおらず、引き取られた家は遠縁の野坂家。そこで空気のような扱いを受け、ある時は殴られて口が切れて血を流しその血が布へ付着したことで、その布を腐食させてしまい余計に殴られたりする原因になったのは今でも覚えている。でもそれからは血が出るほどはひどい暴力に晒されることはなくなったけれど、暴力がなくなることはなかった。都合のいいときは無視する癖に、虫の居所が悪いときには私でうっ憤を晴らすかのように殴る蹴るを繰り返す。両親を亡くしてすぐのころ、まさか引き取られた家がそういうところだと思わなくて、でも嫌々引き取ってくれたことはわかっていた。暴力があるとは思っていなくて、あまりにも悲しくて辛くて、お母さんとお父さんに会いたくて一人公園に逃げた。その時に初恋の人に出会った。結局、そのあとも会えるわけもなく今に至るんだけど。
「力を使う上で気を付けておくことはあるのか?」
初めて、そんなことを聞かれた。今まで誰も心配などしてくれなかった。
「貧血に気をつけておけば、あとは何もありません。でも私はみなさんのお役に立てる能力ではないのです」
私の力は誰かを助ける能力ではなくて、誰かを傷つける能力。誰かの役には立てない。こんな能力、いらなかった。私の能力がもしも、もしも…誰かの役に立てる能力だったのならば…。そう考えない日はなかったくらい、私は自分の能力が大嫌いだった。
「役に立てるかどうか、なんて考えなくていいんだ。俺は、君のことを利用しようなんて考えていないから、大丈夫だ」
そっと頭を撫でられて、思わず、一筋の涙をこぼしてしまった。野坂家に引き取られて、役に立たない気味の悪い娘だと言われるのは当たり前。優しく育ててくれた巫家でさえも、この能力を持て余した。そんな私の周りに優しさというものはどこにもなかった。
「あ…」
「我慢、していたんだな」
ずっと、我慢していた。会えるのならばお母さんとお父さんに会いたい、縋りついて泣いて、私も連れて行ってほしいと願いたいくらいには。
「大丈夫、俺が守る。君は何も考えなくていいんだ、紅姫」
「…っ」
声を上げて泣くことは、できない。そのやり方を、私は知らないから。お母さんとお父さんが亡くなった時もそうだった。泣けなかった、涙一つ流れ落ちることはなかったのだから。
「俺に全部任せてほしい」
「…ぃ…」
声にならない声で、はい、と言えば、ハンカチで涙を軽く化粧が落ちない程度に拭われた。その優しい手に私は自身の手を重ねた。




