表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

創作ホラー

創作ホラーまとめ

作者: 狂言巡

訳アリ物件の事


 Aが子供の頃に住んでいた町の郊外に、「鬼が棲んでいる」という噂の空き家があった。今の言葉で古民家といった趣で、広さも建物も子供から見てもお洒落な物件に見えたものだ。しかし、なかなか買い手が付かず、買われてもいつの間にか売り地の看板が立っている。

 人気はほとんどなく、車も滅多に通らない。ホームレスや不良にとってもたむろするには好物件だったが、貴賤問わず誰もがどこかその家を避けているようでもあった。不法投棄や落書きで問題になったこともない。それでも、子供というものは本来大人に駄目と言われるものに興味を持つお年頃である。

 Aはある日、その家の敷地内に友人と入り込んだことがあった。敷地はちんけなロープを張っているだけで、不法侵入等お茶の子さいさいだ。さすがに家の中には入れなかったが庭は広く、ボールを持ちこんで遊べそうだった。思い思いに散策していると、縁側でAより少し年下らしき女の子がぬいぐるみとままごとで遊んでいるのを見かけた。A達より先に入り込んだというより、お洒落で動き辛そうな着物をしっかり着こんでいて、ずっとここで暮らしているような寛ぎ方だった。

 ということはつまり女の子はお化けということになるのだが、不思議と恐ろしさや気味の悪さを感じることはなく、むしろ思わず話しかけたくなるような気安さをAは抱いた。


「あ、鬼だ」


 その和やかな雰囲気は友人達がやってきたことで、一瞬で壊れた。友達が女の子に石を投げたからだ。命中はしなかったものの、驚いた女の子は泣きながら部屋に引っ込んだ。

 障子がぴしりと閉まった瞬間、ドンと家が大きく揺れた。まるで家が女の子にした仕打ちを怒ったように思えて、Aは友達を蜘蛛の子を散らすように家から逃げ出した。

 その日から、女の子に石を投げた子供と友人達はひどい不幸に舞い込むようになった。

 ペットが突然死する、野犬に襲われる、信号無視の車に引かれる、朝親が起こしに行ったら身体中の骨が折れていて……。Aは女の子とおそらく一緒に住んでいる何かが怒っているのだと気が気ではなかった。ある夜、Aが目を覚ますと、枕元に男が立っていた。深夜だというのにAは男の頭に角を見た。ああ、殺されると思った時、男が口を開いた。


「テメェは何もしなかったからな、一発で済ませてやる」


 その言葉を聞いた瞬間、Aの目に火花が散った。翌朝、Aは母親の叫び声で目が覚めた。Aの頭頂部には大きなタンコブができており、医者に行ってもしばらくの間治らなかったという。


化け物と子供


 身内だけでなく、集落ぐるみで冷遇されている子供の唯一の友達は、廃寺に棲む毛むくじゃらの化け物だった。人目の偲んで遊んでいたのだが、ある日子供は養子という名目で売られてしまうことになった。どうしようと泣く子供を化け物は皮膚と頭髪を残して喰い尽くすと、子供に化けて子供の血縁者のみを全て食い殺した。


 厳密には人肉ではなく人の負の感情が好物であった化け物は、再び集落で除け者に誰かが巣穴に迷いこんでくるまで眠ることにした。


最期のお願い


 急死したクラスメイトに、一日身体を貸してくれと頼まれた。曰く、告白しようと思っていた同級生に想いを遂げたら成仏できるからと。快諾したのはクラスメイトの想い人が、自分も気になっていた女生徒だったからだ。上手くいけば自分が付き合える。そう思い、件の女生徒を呼び出して、霊体のクラスメイトは自分の身体に入り、その間何処かに行くわけにもいかないので、自身の肩辺りに意識を留めて見守っていた。


「えっと、××君?」


 やってきた女生徒が自分とそれなりの距離を縮めた時。クラスメイトはしゃがんでちょうど足元にあった植木鉢を掴んで。女生徒の頭に振り下した。倒れた少女の口から、何か煙のような塊が噴き出す。クラスメイトは透明な手でそれをしっかり掴み、掌中に収めた。割れた植木鉢と頭から血を流す少女を茫然と見比べている、かつての万引きの濡れ衣を着せた同級生に礼を言って姿を消した。


無用の親切


 山の神から土砂崩れが起こると予言された男は住人達に伝えたが、誰一人信じる者はいなかった。それなら自分だけでも逃げようとしたのだが、住人達は気狂いが他の村に迷惑をかけるかもしれぬと、寺の柱に縛り付けてしまう。それを見た山の神は人間が生贄を捧げたと思い、その男を喰い殺した。捧げ物に満足した山の神は土砂崩れを起こさず、住人達は嘘をついたから罰が当たったのだと男の死を嘲笑った。


Q&A


「A君には好きな人がいますか」


 エンジェル様にそんな質問をしたら「いない」と帰ってきた。その答えに喜んだ翌日、意中の相手は交通事故で死んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ