第3話 魔導書記憶管理(グリモワールメモリー)
魔導書記憶管理の意識共有空間での出来事とナズナと禊の会話で物語が少しずつ始まります。
目を開けると天井まで見渡せるほどの本で敷きつめられた本棚に囲まれた書斎にいた。
ここは… 禊はぼーっと立ちつくしていた。
「ここが魔導書記憶管理よ」近くに現れたナズナがそう言う。
なんだか、見覚えのある懐かしい感じがする…そうか…母さんの書斎だ。
「ここにある本は全部魔導書なのか?」辺りを見渡しながらナズナに尋ねる。
「いいえ、ここにあるものは魔導書とは関係ないわ。今から禊の部屋にある魔導書をここに転送するね。」
ナズナが言うと天井からふわふわと一冊の本が降ってきた。その本は地面に着くことなく目の前で浮遊し始めた。
なんか不思議だな…空から本が降ってくる空間だなんて…
「あくまでここは魔導書記憶管理の空間だからね。本は見た目のイメージって感じ。」
それからたくさんの本が書斎の天井から次々と降ってくる。
「これで全部ね!!」
最後の1冊を片手にとってナズナは伝えた。
「ところでここは魔導書の力は使うことは出来るのか?」
「それがここはあくまで記憶管理の空間だから魔導書の力は使うことが出来ないの。」
この魔導書を使うタイミングっていつなんだよ…
「うーん、マディアじゃないから使うタイミングは無いかもしれない…けどここに管理しておけばとりあえず部屋に置いてあるよりはいいかなって」ナズナは困りながら応えた。
禊は興味本意で近くにある魔導書をとり読み始めた。なんて書いてあるんだ、全くわからん…
「そろそろここから出ない?」ナズナが禊に言ってきた
「私ここの世界のことよく分からないからもっと見てみたいの。それに何かマディアに帰れる手掛かりもあるかもしれないし。」
ナズナは目を輝かせウキウキしながら話しかけてきた。
「そうだな。俺も色々と聞きたいことがあるし」
禊は読みかけていた本をそっと閉じた。
それから魔導書記憶管理から戻ってきた禊とナズナは外に出て家の周りを散歩することにした。
もう既に外は日を沈んでいて、月明かりと薄暗い街灯が進む道を照らしている。
「そうだ…いつも俺が行く河川敷にでもどうだ?」
ここからもそう遠くないし、夜は静かで川のせせらぎ音と虫の声を聴きながら考え事をする時に丁度良い場所だった。
しばらく暗い道を歩くと河川敷の階段にたどり着いたナズナと階段を駆け上がる。
人気は感じられない相変わらず静かで過ごしやすい場所だ。
「私、実はまだ不安なんだ…」ナズナの言葉から弱音が出てくる。
「この世界に来て、魔導書の力も使えないし、自分がなんでここに来たのかも…わかんなくて。」
当然だろう。突然別世界に飛ばされてナズナ自身も混乱している、普段通りの日常生活とは打って変わったんだ不安なはずだ。
何か励ましの言葉でも掛けるのが良いのだろうけど…なんか気遣いのある言葉は…と禊は頭を悩ませる。その悩んでいることが表情に出る。
それを見てナズナが変な顔してる~と笑を零した。
なんだよ、せっかくお前を励まそうと…
ん?あれは、何だ?
川の中央が不自然な赤い光に包まれている。
ナズナは目を見開き驚いた。
「まさか!!あれは…!!!」
赤い光は徐々に大きくなり、光の中から人の形をした者が現れた。
次回から魔導書の戦闘になります。
まだ、もう少し世界感を説明してから話をスムーズに進めていけるようにしていきます。