ワルキューレ
『あぁ勇者よ!卑劣なる迷宮が2人の勇者を喰らい、その財産を奪うとは。あぁぁぁ、哀しい』
贅の限りを尽した豪奢な部屋で、綺羅びやかな衣服を纏った勇者協会の長、セイントジャスティスは、割れた2つの宝石を見て、1人哀しむ。
全ては終わった。
天上の雲茸を探しに来ただけのヒョロい青年は、偶然にも、そこで人身売買のアジトを発見した。
たった1人で凶悪で強大な敵に挑み、死にそうになりながらも激戦の結果に勝利して、囚われの7人の乙女を救出した。
振り返れば、事実はこういう話になる。
皮肉な事に、こちらが、まるで古き物語の勇者だ。
全滅させた事で秘密は守られた。もう追手は来ない。座り込み、安堵する。
((しかし、困ったわね?))
「なにが?」
((子供達よ。事実が漏れたら討伐隊が来るわ。後味悪いけど、さくっと始末する?))
「しないよっ!」
なんて、ぶっそうな銃だ。
なにが貴方の考えくらいワタシにはお見通しだ!全然分かってない。ローズはローズだった。
((はぁ?なら、どうすんの?))
「安心しろ、お決まりのやり方があるんだ」
視界の先に殴られれ、必死に涙をこらえて、うずくまる少女がいる。
そっと近くに歩き声をかける
「大丈夫?」
『うん。。ありがとう』
見上げた子供に優しく手をのばし、そのすべすべとした手をとる。
「痛かったよね。よく頑張った」
『うわぁぁ痛かった!怖かった!』
「うん。もう大丈夫だよ」
ぐずぐず泣く子供をあやす。子供達は護られたのだ。手をつないで部屋までエスコートする。
部屋に入る。
そこには、決死の覚悟で武器を構えた少女達。
だから、微笑んで勝利を告げた。
「大丈夫、もう終わったよ」
ガシャ、ガシャン
武器を落とす音。
『うわぁぁ』『うぇぇん』『ありがと』
泣き声なのか歓声なのか分からないその声は、ハッキリと戦いが終わったのだと実感させられた。
さて、落ち着いた所で最後のお仕事。
秘密が漏れたら討伐される。
そこで、子供達を始末する。
なんてぶっそうな事はしない。それじゃ頑張った意味が無いだろう。なんであんな発想が出てくるか分からないが、種族の壁なのかもしれない。
お決まりのやり方。それは秘密の共有だ。
「みんなー、良く頑張った。」
『うん。』『頑張った』『おー』
「1つ問おう。勇者は嫌いか?」
『うん。』『嫌いー』『大嫌いー』
「宜しい!ならば皆には我らの組織に入る資格がある。しかし、それは秘密を死んでも守れる者だけだ。出来るか?」
『当然っ』『死んでも守る』『守る』
「認めよう。今日から秘密組織ワルキューレの一員だ!隠されし目的は、勇者の魂を死後の世界、ヴァルハラに集める事!裏切りは許さない。最優先は、秘密裏に行動する。誰にも気付かれてはならない。」
『おーっ』『分かった』『任せて』
この後、なんやかんや話して、その気にさせた。あやふやな知識と難しそうな言葉でいい感じに誤魔化し、切り抜けた。設定はガバガバでいい。真の目的は秘密の共有。
秘密は守られたのだ。
夕食を一緒に食べて、持ってきた、茸大全の2巻をペラペラとめくる。
「はぁ、探す暇もなかったな。」
『どうしたのー?』
「いや、この茸探しててな」
『キノコー?』
違う子が興味を持ってやってきた。
「これなんだけど」
と天上の雲茸のイラストを指さす。
『うん。食べた事ある。美味しーの。あるところ知ってる!』
「え?凄いな。何処にあるの?」
『えへへ、凄いでしょ。あたしの村、フォレストマッシュ』
「ありがとう、凄いな」
行先地が決まった。
目的地は、フォレストマッシュ




