停滞
今日は強い雨。
外に出る気にはなれない。宿屋の一室で窓際に座り、物憂げに空を眺める。
自分を見つめ直し、今後の方針を立てるにはいい時間だろう。
どうすれば強くなれるのか?
攻撃力が無いのが盾使いの共通の悩みだ。ローズ様頼みの1日1発では困る事が多い。
経験値が無いとスキルが有効化できない。
火魔法1で、その悲しい現実を知った。おそらく剣技を練習しても有効化出来ないだろう。
ただ、勇者を殺して経験値を得るのは、今のところナシなんだよなぁ。最初の一歩を踏み外すにはそれなりの理由がいる。オレは化け物になってしまったが、心を持った化け物になりたい。ただの美学、自己満足だけど、大事にしたい。
なら、道具だろう。人間が動物に勝てるのは、道具が使えるからだ。どんな最強の格闘家も素手で象には勝てない。道具がなければ圧倒的に体格の劣る狼にすら苦戦する。となると、毒竜の毒素を回収しなかったのは勿体無かったな。
「ローズ、強くなるために毒や爆弾やボウガン。このあたりが欲しい。何かオススメはある?」
((えっと、スキルが無いと、管理が出来ないけど、いいの?))
「管理?」
((うっかり街中で、毒気をこぼしたり、暴発したりするの。やるなら一気にやりなさい))
あっぶねぇぇ、やらねぇよ。
「ローズに聞いといて良かった。」
((ふふっ))
道具も難しいと。
あれ?
もう草むしりしかなくね?
「そういえば、収納スキルは無いの?」
((ちょっと待って、セレスに聞いてみる))
ずっと気になってた。皆の憧れ、青いタヌキのポケット。念話で問い合わせてるのか少し待つ。
((えーと、レベル10になるか、スペルカードを手に入れるかだそうよ))
「残念、遠いな」
ただ、手にさえいれれば、有効化の問題は残るが、魔法適正が大賢者や勇者を凌駕するオレには簡単に覚えられる。魔側と人側など比べるまでもない。楽しみだ。
他に何かないか。
そういえば変体に賢者の石が必要とか言ってたな。もしもの時のために、一つぐらい仕入れとくか。
「賢者の石の値段は知ってる?」
((小国1つ分))
「え?」
((紅い石の材料は、小国の人族や亜人族を皆殺しにして集めた命))
「」
((三流品の、愚者の石なら気軽に手に入るかもね。10人くらいの魂でいいから))
「愚者の石で出来る事は?」
((変体なら、指先一本分))
「力を入れるとナイフ状に変化とか、この暗器は格好良くないか」
((悪くないけど、ナイフスキルが無いと、食事のステーキを切るくらいしか出来ないわよ。))
「ステーキを切るだけは、ちょっと。他の変化を考えておこう。手に入れた時のために。。」
残るは金くらいしか思いつかない。
ゲスだがマネーパワーで殴る。
奴隷や私兵で強化。
「明日から地道に採取クエスト頑張ろう」
そういって、ベットに倒れ込む。
寝転がり、天井に手を伸ばす。開いた指先を見つめ、この手でなにか手にいれる事は出来るだろうかと思案する。
ざんざんと降りつける雨のように、上手くいかない。




