僕と彼と…
「僕はなぜここにいるのだろうか」
自分が何者で、どんな名前かすらわからない
僕は途方に暮れていた
すると突然背後から何者かが近づいて来た
「あなたは誰?」
そこには、帽子を被った1人の男性が立っていた
「私は、ホームズ。シャーロック・ホームズだ」
彼はホームズと名乗った
だが、この時代にホームズはいないはずだ
「なぜここにいるの?」
僕は問う
「なぜだろうね。私は気分屋だからわからないな」
「そうじゃない。ホームズは死んでいる」
シャーロック・ホームズ。彼はそう名乗った
だが、ホームズは第一次世界大戦直前に死んでいるはずなのだ
「私が死んでいる?冗談はやめてくれ。私はここにいる」
どういうことなのだろうか
一つ言えるのは
ここは、私の知っている時間軸ではない
「少し質問してもいい?」
「あぁ。大丈夫だよ」
彼がそう答えた
「ここはどこ?」
「さぁ?私も気分屋だと言っただろ」
「第一次世界大戦は終わったの?」
「もう終わってるに決まってるじゃないか」
終わってる?
つまりここは、第一次世界大戦後の世界
やはり、本来ならありえない事が起こっている
「あなたは第一次世界大戦直前は何をしていたの?」
「助手と一緒に旅をしていたさ。ただ…」
「ただ?」
「いや、何もない…」
「…………」
「…………」
沈黙が続く
「一つゲームをしないか?」
ホームズがそう問う
「何をするんですか?」
僕は少し嫌そうに答えた
「なに、誰でもできる単純なゲームだよ」
僕はなにをするか全く想像がつかなかった
「コイントスさ」
その言葉に僕は驚いた
「それはゲームではなく運なのでは?」
「いや、これも立派なゲームさ。確率の壁を超えてこそのコイントスだよ。ルールは簡単。わかってると思うけど、私がコイントスして裏か表か当てるだけだよ」
「わかったよ」
その言葉と同時にコインが弾かれた
「さぁ、どっちだと思うかね?」
こんなのテキトーでいいか
僕は心の中でそう思った
「表」
「残念裏」
またコインを弾く
「次はどっちかな?」
「表」
「残念。また裏」
「イカサマしてる?」
「行ったはずだよ。確率の壁を超えてこそのコイントスだと。2分の1とはいえ、これは立派なゲームになり得る」
僕はどういうことか全くわからなかった
「次当てられたら、私が知っていることを全て教えてあげよう」
「二言はないですか?」
「あぁ、もちろん」
そういうと、ホームズはコインを弾いた
どっちだ?僕は考えた
だが迷いはなかった
「さぁ、答えてみなさい」
「表で」
「……裏だ」
外れた
「こういうこともあるさ。自分に向かって風が吹いている人は、当たり続ける。だが君は3問とも外した」
《これは運だから仕方がない》
「君はそう思うかい?」
「!?」
心を読まれたようで一瞬戸惑った。さすがはホームズとでも言うべきなのだろうか
「残念だけど今の君は落ちぶれ過ぎている」
「どういう意味ですか?」
「どういう意味だろうね?」
教えてはくれないようだ
「さて、私はそろそろいくよ。また会おうワトソンくん」
「ワトソン?」
ホームズが何を言っているかわからなかった
「ちょっとまt……」
彼はいなくなった
少し足取りが重い
彼の言葉はどこか引っかかる
僕は考えたが、結局答えはわからなかった
「結局、僕は誰なのかさえわからないままなのか」
そう呟くと、僕はまた霧の中歩いて行った…
どうも、かまきり娘です。二作目ですが、想像が膨らまないこともあり、なかなか進まなかったです。
今回意識したことは、ループさせるということです。うまくループできるかはわかりませんが、最後まで行って最初に戻る。そんな展開になっていればいいです。
いつもの日常にヒントを見つけつつ、新しい作品を模索中なので、暇つぶし程度に楽しんでもらえると嬉しいです。