第六話
深夜テンションで書いていた部分もあるので若干文章がおかしいです。
それでは、どうぞ
宴会というのは不思議なもので、普段お酒を呑まない人でも浴びるように飲み、その人の素の姿を出しやすくする。
つまるところ酔っ払って、他人に対する理性やらの壁が無くなっているだけなのだが。
アルコールというものは、対人関係を深めるキッカケとなるアイテムになることが多い。
まぁ逆の場合もあるわけで。
「えへへ、葉月さぁん頭撫でてくだしゃ〜い。」
「うわぁん!太子様どこぉ!!」
「君はもっと命蓮寺にくるべきだと思う。聖だってご主人だって来るのを楽しみに待っているのに君ときたらあの日からまったく…」
おかしい。静かに呑める人達とゆっくり飲んでいたのに何故こうなった。
「にししし、面白くなったね〜。」
「また貴女のせいですか。萃香さん…」
ホントにこの人は…静かに呑まさせてくれないのか?
こうなった原因は一時間程前に遡る
一時間前…
僕の向かった先にいたのは屠自古さん、衣玖さん、ナズーリン。
あそこにいる従者組とはまた違った意味で、苦労している人達だ。
あっちの従者組を仮に社畜組とするなら、こっちの人達は保護者組。自由な上司や同僚に振り回されているのは同じだが、こき使われているわけでは無い。
「こんばんわ皆さん。」
「やぁ、ご店主。君も夜桜かい?」
「まぁ、そんな感じです。」
最初に気付いたのはナズーリン。お酒も入ってるからか機嫌の良さそうな感じで尻尾を振っている。
「お前、さっきあの魔法使いになに食わせたんだ?」
「これですよ。屠自古さんも食べます?」
「なんだ?それ。」
「恐らく世界一辛い料理。」
「なんてモン食わせようとしてんだお前は!?」
キレの良いツッコミをしてくれた屠自古さん。味は保証しますよ。舌はぶっ壊れますが。
「それ少し譲ってもらっても良いですか?」
「へ?使うんですか?コレを?」
「はい、総領娘様へのお仕置きにちょうど良いかと。」
黒い顔で笑う衣玖さん。後ろになんか見えてますよ。
使う事に反対はしないが果たして効くのかどうか…『総領娘様』こと比那名居 天子は頑丈なことで有名な天人だ。刺激を求めて下界に降りて来て、異変を起こし博麗神社を壊した前科がある。
そんな人にコレを喰わせたら、むしろ嵌りそうで怖い。紫さんに頼めば材料が手に入るとは言え無料では無い。
今回も材料の調達に、一週間八雲家で朝食を作ることと引き換えにもらって来たのだ。
「良いですけど…効きますかね…?」
「大丈夫ですよ。総領娘様は辛いものが苦手ですから。」
なら良いや。
とりあえず、白黒の齧ったところは除いて、半分くらい譲ることにした。
残りは自分で使う為に残しておく。蓬莱人に効くんだから妖怪にも効くだろう。
最強の魔除けの出来上がりだ。
「ところで皆さん何を話してたんです?」
「なに、ただの愚痴さ。私はご主人の落し物拾いだけで一日が終わってしまうことも珍しく無いからね。こういう時間は貴重なんだ。」
まだ治ってなかったのか…あれで毘沙門天の使いなんだから世の中面白いよなぁ。
「そうだ!聞いてくれよ。布都のやつまた仏像に…」
「まぁ!しかしそういう事は…」
愚痴って言うより相談会に近いような気もするけど…まぁどっちも同じか。
三人の話をBGMに宴会の中心を眺める。相変わらず混沌としている。吸血鬼姉妹は霊夢にシメられたようだ。現在進行形で正座して説教をくらっている。
白黒はまだ気絶したまま、八意先生に処置受けている。若干痙攣してるし、顔は真っ白だから本気でしぬかもね(笑)
不老不死の酒飲み勝負は大盛り上がりだ。酔っ払った茨木童子も混ざってよりペースが上がっている。あの人仙人じゃなかった?一緒になってお酒呑んでて良いのかな?…深く考えるのはやめよう。
「おい!葉月!ちゃんと聞いてんのか?」
「ああ、聞いてるよ…うん?」
屠自古さんに言われて意識をこっち側に戻すと、いつのまにか肩に毛玉がのっていた。
普通の毛玉なら気にしなかったが、色が気になってしまった。
僕が今まで会った毛玉達は基本白か赤。しかしこの毛玉は真っ黒だ。それに毛玉達は結構なお喋りで近くに来ると必ず話しかけてくる。
「え〜と…こんばんわ?」
『……!』
やはり喋らない。挨拶をしてもビクッとしただけで何も言ってこない。今までこんな事はなかったので反応に困る。
取り敢えず飴玉をあげてみたら嬉しそうに食べた。
「キュ〜」
どうやら鳴き声は出せるようだが、喋れないみたいだ。なんか和む。小動物って可愛いよね。
「毛玉…ですか?地上でよく見かけますが宴会では初めて見ましたね。」
「それに真っ黒だな。普通毛玉は白じゃなかったかな?」
「へぇ〜、毛玉店長の名は嘘じゃなかったんだな。人に懐いてるのなんて初めて見たぜ。」
やっぱり珍しいみたいだ。一人だけなんか感想が違うけど。屠自古さんに能力の説明、してなかったっけ?
もう一度黒い毛玉をよく見る。体の色と喋らないこと以外には特に害はなさそうだ。
この毛玉の事はまた今度調べる事にして保護者組の方に向き直る。
なぜか三人の顔は真っ赤になっていた。
もう酔った?まさか。幻想郷の住人は基本アルコールに強い。一升瓶一本空けたぐらいで酔うはずがない。
鬼が呑むようなお酒でもない限り……
嫌な予感がして視線を一升瓶のラベルにうつす。名は『酒呑』
『酒呑』とは、鬼が造る最高ランクのお酒だ。味、香り、純度、全てが一級品で、アルコール度数もかなり高い。普通は水やお茶などで薄めて飲むもので、ストレートで呑むのはよっぽど酒に強い妖怪か、鬼ぐらい。別名『鬼殺し改二』
これを持ってくるようなヤツは一人しかいない。
「やられた…」
現在…
「たぁ〜い〜じ〜ざ〜まぁ〜!ど〜ご〜!」
「えへへへへ、葉月さんいい匂いがしますぅ〜。」
「聞いているのかい?君はもっと命蓮寺にくるべきだと言っているだろ?ただでさえ…」
大号泣する屠自古さん。めちゃめちゃ猫撫で声で甘えてくる衣玖さん。さっきから同じ説教を永遠繰り返しているナズーリン。
「ど〜しよ。コレ…」
「お酒を飲めばみ〜んな解決!」
「酔っ払いの!あんたのせいで!こうなってるんだよ!」
「いはい!いはい〜!!」
頬を引っ張って上下に揺する。おお!よく伸びるなぁ。そのまま引っ張っていても良かったが涙目になってきたのでやめておいた。
「ねぇ萃香さん。僕はただ静かに呑みたかっただけなんだ。邪魔するような無粋な事はしないで欲しかったなぁ。」
「いーや!宴会なのに静かに呑もうとする方が無粋だね。そういう事はひとり酒をするときにやるもんさ。宴会は大騒ぎして賑やかにやるもんだよ。」
ふむ、確かに一理ある。だけどあまり騒がしく飲むのは落ち着かない。いっそのこと追加で料理を作っているところの加勢に向かうべきか。
「て、わけでほ〜れ!」
ぐいっと盃を握らされた。考え事をしていたので反応が一歩遅れる。
その隙に盃になみなみお酒を注がれてしまった。
言うまでもなく『酒呑』のストレートだ。
萃香さんは『にしし』と笑いながら、
「人生の大先輩である鬼が宴会の楽しみ方を教えてあげるよ〜」
いつもの瓢箪をあげながら、少し気取ったような言葉で言ってくる。
少し固まっていると桜の花びらがヒラヒラと落ちてきて盃の中に入る。
まるで早く呑め!と言っているようだ。仕方ない今回はおとなしく教えを請う事にしよう。
「よろしくお願いします。」
「よろしい!…それじゃ〜」
「「乾杯!」」
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「あの萃香さん…もう…ウエップ…」
「な〜に言ってんの!宴会はまだまだコレからだ〜!」
「いや…ホント…無理…待って待って、その一升瓶は下ろそう?おねgゴボぼぼ!」
「お〜!いい呑みっぷり!ほれほれまだお酒はたんまり…ありゃ?寝ちゃったか。」
宴会は今回で終わりです。
ああ…宴会とかお祭りとか参加して騒ぎたい…