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幻想郷の食堂  作者: 東かた
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第五話

異変が起こることもなく、季節は無事に春。

天魔さんは相変わらず風巻さん(漢字名は教えてもらった)にしばかれながら仕事をしている。宴会に誘うために山に訪れた時、挨拶に行ったら一切景色の変わらない執務室があった。

あの人仕事する気あるのかな?


今日は博麗神社でお花見宴会があるから来いよ、と例の白黒魔法使いに誘われたので、その為の料理を作っている真っ最中だ。マスクとゴーグル装備で。


速度馬鹿魔法使いに復讐するべく、紫さんに頼み込んでハバネロとブート・ジョロキアを仕入れておいた。

お試しに知り合いの不老不死に食べさせたら筆舌に尽くしがたい表情をして倒れた後、二日間お腹を壊していた。辛さの究極って怖いね(他人事)。


この凄まじいブツを肉まんの中にふんだんに練りこんだモノを一個と、普通の肉まん、後は稲荷寿司とか煮物とか所謂普通の料理を作る。


「…くぅ…ッ!!」


ゴーグルしてるのに目に染みてきた。湯気がヤバイです。窓全開なんだけどなぁ。他の料理は作り終わっており、後はこの凄まじいブツを作りあげるだけ。ぼちぼち良いはずだけど…

砂時計が落ちきったのを確認してから蒸し器の蓋をあける。中にはうっすらピンク色の肉まんが存在感たっぷりに居座っていた。

赤色じゃなくピンク色にまで薄めるのに苦労した。


何故ここまでするのか。気になるであろう。

たかが高速飛行、されど高速飛行である。金欠巫女に話したら『馬鹿じゃないの?』の一言で片付けられそうだが、白黒魔法使い(あの馬鹿)は料理人を舐めている気がする。

料理人の本気を見せてやろう。


赤肉まんは湯気でバレる可能性があるので少し冷ましてから、お酒や、その他の料理を運ぶ準備をして外に出る。お店の扉に『宴会の為外出中』と書いた紙を貼り出発。さーて誰が来てるかな。




日はすっかりくれた頃、目の前には博麗神社に行くための長〜い階段。毎回思うがコレがキツイ。

道中は妖怪に襲われる事もなく無事ここまで着いた。


こういう時は僕も飛べたらなぁと思ってしまう。


「葉月〜はやく登るのだぁ。」


「急かさないでよ、君は肩車されてるんだから楽なんだろうけど…はっ!君が僕を運べば解決じゃない!?」


「葉月は重すぎなのだ〜」


肩車しているのは、宵闇の妖怪ルーミア。お前さん『重すぎ』は言い過ぎだろ。僕はデブじゃないぞ?運動してるぞ?ただぼちぼち体力がなくなって来てるだけだから。


仕方なくルーミアを肩車したまま登る。あんま重くないな?と思ったらルーミアは少しだけ浮いてた。もう飛んだ方が速いんじゃない?


どうにかこうにか、階段を登りきった。やった、僕、やりきったよ…


「あ!チルノなのだ〜!お〜い!」


ルーミアは友人を見つけたようでさっさとそっちに行ってしまった。労いの言葉ぐらいかけて欲しかったなぁ。


「お疲れ様。」


「やぁ、博麗。髪伸びた?」


「雑魚妖怪が繁殖期だったから、髪切る暇もなかったのよ。」


「お金がないの間違いだぜ?」


「魔理沙五月蝿い。」


右にいるポニテの紅白脇巫女が博麗霊夢、左の魔女っ子白黒が霧雨魔理沙。

左のやつが例の速度馬鹿魔法使いだ。早速お土産をプレゼントしよう。


「ホレ魔理沙、餞別だ。」


「お!肉まんか?見たことない色してるが…」


「新作だよ。感想聞かせてよ。」


「よし!魔理沙さんにお任せだぜ!いっただっきまーす!」


大きくかぶりつく魔理沙。異変はすぐに表れた。まず顔の色が赤になり、紫になり、青になり、最後に白くなった。

顔が真っ白のまま口から泡を吹き始める。そのままピタリと動きを止めた。よく見たら立ったまま気絶しているようだ。


「うん、やっぱり凄まじいね。」


「何食わせたのよ?」


「世界一辛い唐辛子を入れた、恐らく世界一辛いであろう料理」


「料理人が料理で遊んでいいわけ?」


「遊んだわけじゃないよ。普段の意趣返しさ。」


「魔理沙も災難ね…自業自得だけど。」


呆れたような顔をしつつもどこかさっぱりした顔をしている霊夢。なんかされたのか?

僕の顔をみて察したらしく話始める


「葉月さん、よく『失敗作だから』って料理くれるでしょ?アレのほとんどコイツに食われたのよ。私の生命線なのに…」


ここも相変わらずお賽銭が入らないみたいだ。


霊夢には割とお世話になっているので、うちの店に来た時は無料にしたり、料理のおすそ分けをしたりとなにかと世話を焼いている。年の離れた妹みたいだしね。

それに僕の料理を美味しそうに食べてくれるので、それが楽しみだったりする。コレは内緒。


「あ、そうだ。はいコレ。今日の宴会用。」


「…コッチには変なもん入れてないでしょうね?」


「まさか、いつも通りのヤツだよ。」


「なら良いわ。」


料理を受け取った霊夢は宴会の中に帰って行った。

よく見れば宴会場は混沌としている。


あっちではピンク髪の亡霊が凄い勢いで食っているし、そっちでは不老不死同士が呑み勝負を始めてるし、各権力者の従者が集まって愚痴を言い合ってるところもある。空では吸血鬼姉妹が弾幕ごっこを始めていた。


「比較的平和なとこで呑みたいなぁ…」


霊夢は霊夢で紫さんに捕まって頬ずりされていた。やめて。そんな助けを求める目で僕を見ないで。無理だから、僕普通の人間だから。

苦笑しながら手でばつ印を作ったら、睨まれた。すまん今度なんか奢るから。


ぐるりと宴会場を見渡すと一箇所だけ平和そうな場所を見つけた。僕はそこに足を運んだ。





宴会って楽しそうですよねぇ

学生だから呑めませんが

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