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幻想郷の食堂  作者: 東かた
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第四話

今回はエセ関西弁が出てきます。関西方面とくに近畿地方の皆さんすみません。




それでは、どうぞ

河城に大差で負けて、連敗記録更新に落ち込みながら犬走を待っていたのだが、本人が件の鬼ごっこから帰ってきていない。仕方がないので河城に伝言を頼み、今は山登りの最中だ。

少し前に話したと思うが、僕にも能力がある。残念ながら戦闘向きではないが護身ぐらいはできる能力だ。

紫さん曰く、【毛玉を操る程度能力】。名前のまんま、毛玉と会話ができ自由に動かすことができる。毛玉は妖精と同じくらいの弱さだ。弾幕を一撃加えられたらすぐに消滅してしまう。だが、ちりも積もればなんとやら数を揃えて使えばそれなりの戦力にはなる。

これだけなら、幻想郷中の全ての毛玉を操れて俺TUEEEEEっぽいが、そこまでうまくは出来てない。

僕の能力には『一度会ったことのある毛玉しか操ることができない』と言うデメリットが付く。そこで僕は自分の護身のために多くの毛玉と会わなくてはいけない。

ここで話は冒頭に戻る。言い方は悪いが自分の駒を増やすために山道を歩いているのだ。

ぶっちゃけ、この山の半数の毛玉とは会っていると思う。妖怪の山だけで百匹近く操れる毛玉がいる。ここの毛玉とは付き合いも長いので自分の兵と言うよりは友人に近い感じだ。


『大将、久シブリ』


「うおわぁ!?びっくりしたぁ!!」


『ソンナニ驚カナクテモ…』


気づいたら、肩に真っ白な毛玉が乗っていた。さっぱり気づかんかった。これが毛玉、見た目は毛糸玉に犬の毛を生やして顔を書いたようなもの。『大将』は天狗達に呼ばれている僕のあだ名だ。


「ちょうど良かった。羊羹作って持ってきたから皆、呼んでくれる?」


『羊羹!?分カッタ!スグ呼ンデクル!』


そう言うとパッと目の前から消えた。彼等(彼女ら?)は甘い物が好物だ。その為、僕のポケットには常に何かお菓子が入っている。

コラ、そこ!餌付けとか言わない!

すぐ呼んでくる、の言葉通り二秒とかからず毛玉達が大集合した。


『呼ンデ来タ!』


『羊羹!ドコダ!?』


『私ガ来タ!』


『オッス、大将』


『ハジメマシテデゴザル。』


『羊羹コソ至高』


『甘イモノ!ヤッタゼ!』


うるさい。耳じゃないぶんマシではあるが、頭の中に数百匹ぶんの声が同時に響くのはツライ。


「ハーイ、静かに!羊羹は逃げないから!流石に一人一本ずつは無いから仲良く分けて食べろよ〜!」


『『『『『ハーイ!』』』』』』


適当に羊羹を切って放り投げると、ワラワラとそれに群がり始めた。差し入れをあげるたびに思うんだけど鯉みたいだなぁ。

別のモノ紛れ込ませても普通に食べそう。


『失礼ナコト考エテナイカ?』


「…気のせいじゃない?」


何故気付かれたんだ。ポーカーフェイスには自信があるのに…


『付キ合イガ長イカラナ。』


また、読まれた!?





持って来た羊羹が綺麗さっぱり無くなり、会ったことのなかった毛玉とも話せてひと段落した。

殆どの毛玉は帰ってしまったが、まだ数匹残っていたので、その毛玉達から情報収集をしている。


「へぇ〜、だから最近、博麗が来なくなったのか。」


『ソウ、偶々繁殖期ガ重ナッチャッタカラネ。』


「他には?」


『ウ〜ン…他ニハネェ…』


『ソウイエバ!杉サンガ会イタガッテタヨ!」


『ソウソウ、《葉月ニウムガタラヘン〜》トカ言ッテタデゴザル。』


「そういえば天魔さんも店に来てなかったな…んじゃぁ挨拶に行ってこようかな。」


『ソウシテアゲレバ良イヨ。』


『杉サン喜ブヨ!」


「良し。じゃ、また今度来るよ。」


『『『バイバーイ』』』


毛玉達がフヨフヨ漂って行くのを見届けてから、歩き始めた。

しばらく会ってなかったけど天魔さん元気かなぁ。





妖怪の山中腹にある天狗の里。鴉天狗達は上の方にある家に住み白狼天狗達は下の方の家に住んでいる。

排他的な天狗社会だが、河童とは仲良くしているようで、先程からチラホラと姿を見かける。

そういえば、此処で営業している時も河童が来てたな。気にしていなかったけど。

普通の人間だったら入る前に、白狼天狗に消されるか追い返されるかされているが、天魔さんの団扇もあるうえに天狗には顔見知りが多い。

料理の力は偉大だ。


「大将!久しぶりだなぁ!帰って来たのか!」


「ええ、まぁ、近くまで来たので天魔さんに挨拶でもと思いまして。」


「そうか。そういやぁ、最近大将の飯食ってなかったなぁ…今日は久々に店、開けてくれよ!」


「考えておきます。」


近くを通った白狼天狗の男性や、


「あら、久しぶりねぇ。今日はどうしたの?」


「近くまで来たので天魔さんに挨拶を。」


「あらあら、それは天魔様も喜ばれるわぁ。ところで折角来たんだからお店開けて頂戴よ。」


「さっきも言われましたよ。まぁ考えておきます。」


「開けるなら言って頂戴ね。皆に知らせるから。」


「分かりました。」


鴉天狗の女性などにしょっちゅう声をかけられる。決まってみんな店を開けるのか聞いてくるが。

やるのは良いけど、暫く来てないから店の屋台。壊れてるんじゃないかなぁ。


「南方さんですね?」


突然後ろからよばれて振り向くと、白い翼に赤色の眼をした鴉天狗が立っていた。


「あなたは…あっ!天魔さんの秘書の…!」


「はい、秘書の風巻(しまき)です。天魔様がお呼びですのでお迎えにあがりました。」


「わざわざ、ありがとうございます。」


「いえ、これも仕事ですから。」


そう言うとシマキさんは僕の手首を掴んだ。………え?なんで?


「あの、この手は…?」


「南方さんは博麗の巫女と違う飛べない人間と聞いています。天魔様の屋敷はこの先、崖の上にありますので。」


「え?つまり、引っ張っていくってことですか?」


「はい。」


何か問題が?みたいな顔をしているが冗談じゃない。

一度、自称魔法使いに乗せられて飛んだことがあるがアレは酷い体験だった。あんな事は一度きりで十分だ。


「待って下さい。空はさす「それでは行きます。しっかり掴んでて下さいね。」待って、ねぇお願いだからさ。空は勘弁して。」


僕の制止も虚しく、突風を感じた時にはもう空に浮かんでいた。

…あれ、酔わない?て言うか意外と遅い。なんで?


「人間の体は脆いですからね。最高速で飛んだりしませんよ。」


僕のポカンとした顔を見て察したらしく、可笑しそうに笑いながら言ってくれた。

幻想郷の女性は美しい人(?)が多いなぁ。と思いつつ、『幻想郷じゃこれが普通だze★』とかほざいてた白黒にあったら激辛料理をしこたま食わせてやる事を静かに、しかし硬く心に誓った。












ゆっくりと着地してくれたおかげで、特に不調も無く天魔さんの屋敷にたどり着いた。

屋敷はでかい、広い、豪華の三拍子揃った和風な豪邸だった。天狗の長なんだから当たり前か。


「それではご案内します。」


戸を開け、中に入れば予想通り。案内が無ければ迷いそうだ。早過ぎず遅過ぎず歩いてくれるシマキさんに感謝しながら廊下を歩く。

枯山水の綺麗な庭を通り、何故か敷地内にある竹林を横目に通り、「湯」と書かれた暖簾を通り過ぎた。

幾ら何でも広過ぎでしょ。


「こちらは重要な客人を招く時も使いますので宿泊施設も兼ねているんです。」


「あ〜、成る程。」


そりゃ広くもなるな。

体感的に十分、正確には五〜六分ぐらいだろうか。それぐらい歩くと視線の先にしっかりとした作りの扉が見えた。


「あちらが天魔様のいる執務室です。私はお茶を持ってきますのでここで。」


「あ、はい。ありがとうございます。」


シマキさんは元来た道を戻っていった。さて、入ろうか。

扉を開くとまず目に入るのは書類の山。高いのは僕の頭ぐらいまで(170くらい)。低くても膝くらいまである山がそこら中にあり、奥が見えない。


「天魔さーん、挨拶に来ましたー!」


「あ〜、こっち来てやぁ〜。」


奥の方で声がしたので、書類の山を崩さないように行くと僕より頭一つ分小さく、真っ黒な羽を生やし、髪を肩まで伸ばした女性が机に突っ伏していた。


「え〜と…大丈夫ですか。」


「大丈夫なわけ無いやん。ちょーと休憩が長引いただけやのに風巻ちゃん、鬼のように怒ってウチにこんなに書類仕事させるんやで。あないに短気やといつかハゲるんちゃうかと心配や。」


あの優しそうなシマキさんが理由も無く怒るとは思えない。って事は…


「ちょっとってどれくらい休んだんですか?」


「ほんの二、三年。」


「天魔さんが悪いです。働きましょう。」


「あ〜ん!葉月ちゃんも同じことゆうんやな!こん薄情もん!」


「二、三年って事は…僕がいた時も仕事してなかったんですか…?」


「書類仕事嫌いやもん。ウチは悪くない。」


シマキさんの髪とか翼ってストレスで白いんじゃ無いよね…?

……お店開こう。で、天魔さんの身の回りの世話をしてる人は無料にしてあげよう。シマキさんは特に。


「シマキさん大変だなぁ(ボソ)」


「なんやて?風巻ちゃんよりウチの方が大変やっちゅうの!!酒飲む時間も無いし!葉月ちゃんの店行けへんし!散々や!」


「ほぉ〜そうですか。因みに私は天魔様のせいで八意印の胃薬と頭痛薬が手放せなくなりました。」


「げ!?風巻ちゃん!?」


「南方さんお茶です。あとよろしかったら此方もどうぞ。」


「わ!干し柿!好物なんですよ。ありがとうございます!」


近くにあった椅子に座り、お茶を一口。うん、美味しい。

僕が干し柿をしゃぶっている間、シマキさんの説教が始まった。


「天魔様進みましたか?愚痴を言う暇があるのですから、半分は終わりましたよね?」


「い、いや〜三分の一も終わっとらへん…」


「はぁ、成る程。溜めたのは誰でしたっけ。」


「う、ウチ…です。」


「そうですよね。三年間も酒三昧遊び三昧で、遊んでましたからね。その分のツケを今精算してるんですよ。言わば借金です。三年間の中で早急のモノは片付けましたが、天魔様出なくては出来ない事が多いんです。天狗の長としての自覚はあるんですか?」


「だ、だって…」


「だってじゃありません。終わるまで外出は一切禁止します。もちろんお酒もいけません。」


「そんな!殺生な!」


「先程の話聞いてました?ここにある書類の大半は片付いていなきゃおかしいモノなんです。それを引き延ばして来たんですから。早く通常業務に間に合わせないといけません。こうしている今も溜まって行く一方なんですから、休む暇なんてありませんよ。」


天狗社会は上下関係が厳しいといったが、どうやら秘書の方が上のようだ。

説教が終わると天魔さんは泣く泣く仕事をはじめた。もちろんシマキさんの監視付きで。


「天魔さん。ここのお店今日だけ開けようと思うんですけど、屋台って残ってます?」


「ああ、綺麗に残っとるよ。葉月ちゃんが帰って来たときのためにぃって河童達を中心にして整備してたんよ。多分道具もそのままやからいつでもはじめれるで。」


「それはありがたい。シマキさんも是非来てください。僕で良ければ愚痴ならいくらでも聞きますよ。」


「それは嬉しいです!ぜひ行かせてもらいますね。」


「ウチも行かせて…」


「仕事が終わったらいいですよ。」


「葉月ちゃんの料理のためや!本気でいくでぇ!!!」


突然気合いを入れて速度を上げ始めた天魔さん。シマキさんも呆れ気味だ。

まぁ、やる気がでたなら良いか。


この後案の定、仕事が終わらずシマキさんだけ嬉しそうに来たのは完全に余談である。







————————————————————————



「ヒック!聞いてくださいよぉ、天魔様そんなに短気だとハゲるぞぉとか平気言ってくるんヒック!ですよぉ。私だって女なんですから髪は命なんですよ!ヒック!だいたい誰のせいだと思って…」


「大将!日本酒追加!」


「はぁーい、ただいま!」


「ちょっとぉ、南方タイショー、聞いてるんですかぁ?」


「ハイハイ聞いていますよ。(コレは、明日になったら記憶残ってないよなぁ)」




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