砲市、声掛け事案に遭う
ドスン!
「いたた……こいつは本格的にお尻が痛くなって来たぞ」
そう、雷に撃たれて間もなく散々お尻をぺんぺんされた挙げ句に二度も尻から落下した為に砲市のお尻は深刻なダメージを負っていたのだった。いかに柔軟性が高い小学生の年代とはいえ砲市はもう少し体をいたわるべきなのだ
「なんだか騒がしいなあ……」
砲市は自身の周りを見回して納得する
高校生のお兄さん達やお姉さん達が騒がしさの原因だったのだ
◇
「一体どこなんだよ!」
「はっ? マジでここどこなん?」
「なんでもいいけどさああの連中は何者よ?」
「コスプレって奴じゃね?」
「コスプレっつーか映画撮影っぽくね?」
「こっこれは」
「なんかキモオタがドモりだしたんですけど」
「あっそ」
「キモオタとかどうでもいいよ」
「デュフフ! 異世界チーレムキター!!」
「今度は別のキモオタが謎言語喋り始めたんですけど」
「謎言語ってマジウケるわ」
「グフフフフ!」
「おい! 今度はこっちのキモオタが」
「いやウチの学校キモオタ多過ぎじゃね?」
「マジウケる」
「あーでもそうすっとさあ何でキモオタっていつも一人ぼっちなんやろうね? あウチのクラスのキモオタね」
「何かいつも本読んでるみたいだし本好きだからじゃね?」
「ああそう言えばってそっちのキモオタも本好きなん?」
「うん、何かいつも本にかじりついていて静かだよ。何読んでんのか知らんけど」
「あーわかるわかる! っていうか本好きなのは構わんけどあいつ等ももっと学校でしか出来ない事やりゃあいいのにね」
「だよねー! 学校生活って限られてるからいくら本好きって言っても学校でしか出来ない事を」
「いい加減に静かにしろ貴様等ああ!!!!!!!!」
高校生達があんまりにも緊張感無くダラダラ会話しているものだからタイミングを完全に失っていた騎士団長クルサゴもついにキレてしまった
「王の御前で貴様等何たる無礼を」
「よい」
「しかし王よ!」
「よいクルサゴ。私は全てを許そうぞ」
「おお! 何という寛大なる慈悲であらせられましょうか!」
「驚かせてしまってすまなかったな勇者諸君」
「あの、勇者とは一体」
「貴様! また無礼を」
「よいのだクルサゴ」
「はっ!」
「諸君等は我々ユルフシ王国の窮地を救うべく太古の儀式によって」
◇
「うるさいなあ……」
当然ながら召喚者の中で一番背の低い砲市はイライラしていたのだった
何だかよく分からないがさっき王様らしき人が高校生のお兄さんお姉さん連中に頭を下げてから更に騒がしくなった事が原因である
どうやら高校生のお兄さんお姉さんはユルフシ王国というこの国を守る勇者として召喚されたらしく僕はそれに巻き込まれた一般人という位置付けらしいという事はしわくちゃじゃなかった紙………いやもうしわくちゃのまんまでいいや
兎に角、しわくちゃのユニークスキルっていうので既に理解しているからいいのだけれど何で高校生のお兄さんお姉さん達が騒いでいるのかが僕には分からないのだ
いいじゃん! 楽しんじゃいなよ! と僕は思ったりするのだが高校生のお兄さんお姉さん達の中には「ふざけるな今すぐ返せ」とかその場で泣き崩れちゃったりとか、逆に「俺は無双して奴隷ハーレムを作るんだー」とか「現代知識チートでハーレム」とか意味がよく分からない事言っている不健康そうな人もいて収集がつかなくなっているからだ
というか多分僕は気付かれていない
背がちっちゃいから仕方ないね!
で今は高校生のお兄さんお姉さん達のユニークスキルとかを調べる為の水晶を運んでいるらしい
何か高校生のお兄さん達の中には妙に澄ました顔やポーカーフェイスを気取った顔で「ステータスオープン(ボソッ)」とか言った後にニヤニヤしてる変態とかいるけれど何なんだろうね?
まあ自分のユニークスキルを確認してるのはしわくちゃのおかげさまで理解出来るんだけどそこまでニヤニヤする事の物かね?
まあ僕には関係のない事だしもう出て行こうかな。水晶も到着したみたいだし
◇
高校生達のユニークスキル鑑定が始まり砲市が謁見の間から出て行こうと扉に手をかけたその時だった
「まてっまつんじゃ~」
どこからともなく現れた謎のジジイが砲市に声を掛けながら迫って来たのである