プロローグ
初投稿です。
誤字、脱字等があった場合はすみません。
ふわっと香る甘い君の香り。
気のせいだと分かっていてもつい振り返ってしまう。
ずっと続くはずだった日常は音もなく崩れ、跡形もなく消えていった…。
何事も無かったかのように過ごすクラスメート。見ないふり、気にしていないふりをする彼女。そして未だに君を探している俺。
こんな状況を見たら君は何を言うんだろう…?
いつか来る別れはずっと遠い未来で、今じゃない。
次の日には君が笑っている。
そう思って一日を過ごす。
きっと、俺と君と彼女の3人でたわいもない話をしている。
そう願って笑っている。
今まで日常は変わることなく一日を終えていた。彼女が冗談をいえば俺は突っ込み、君が笑う…
それが当たり前過ぎたのか?
君が眠るベット。
君はまだ目を覚まさない。
「…」
電子音が途切れることなく鳴り響く。それは君がまだ生きている証拠。
小さな台に置かれているノートは彼女が書いた日記。君が起きた時に見てもらいたいものだと、言っていた気がする。
何がいけなかったのかはわからない。
君が何に苦しみ、悩んで、こんなことになったのか…わからない。
君は、君が好きだと言っていた日常が始まろうとした時、自分で人生を終わらせようとした。
部屋に散らばる大量の薬が、握られたカッターが、赤く染まった手首が、ピクリとも動かない君が…全てを物語っていた。
それを一番に見つけたのは俺だった。
もしかしたら頭では理解していたのかもしれない。君が死んでいるってこと。
でも、多分、心が追いついていなかったんだ。
俺は立ち尽くしていた。何分そうやってしていたのかもう覚えていないが、長い間ずっと立ってたようなきがする。
いつもならすぐに降りてくる俺が遅いのを不思議に思ったのか、君のお母さんが部屋へ来て俺に一瞬笑顔を見せ、「どうしたの?」声をかけると同時に悲鳴を上げた。
君の姿を見てしまったから。
先に動いたのは大人達だった。
救急車を呼んだのは騒ぎに駆けつけた母さん。救急車が来るまで懸命に呼びかけていた君のお母さんを、俺はただ見ているだけだった。まるで、興味の無いドラマのワンシーンが流れているような感覚。
母さんに今日は学校を休むように勧められ、俺は部屋に閉じこもったまま一日を過ごした。
俺の望んだ、君の好きだったはずの日常が崩れ始めた。
一命は取り留めたが回復する見込みはほぼ無いらしい…らしいと言うのは、俺が直接話を聞いた訳じゃないからだ。
彼女は病室で君を見るなりその場で泣き崩れていたが、俺は不思議と涙が流れなかった。
次の日から世界が一変した。
君のいない世界はつまらない。
彼女との距離ができ始めたのもきっとこの頃からだ。
植物状態の君が笑うことができなくなったように、彼女からも笑顔が消えた。まるで人形のように無表情でいることが多くなっていた。
だが、俺はそれでも笑っていた。
ある日、彼女から言われたのだ。
「なんで笑えるの?」
って。俺は何も言わなかった…いや、言えなかった。
日常が壊れてしまう気がするなど、言えるはずがなかった。もう日常なんてとっくにこわれているのだから。
彼女はそれ以上聞くことはしなかった。
それが3日前で、彼女との最後の会話になった。
日常が崩れていく。
君がいなくなって、1週間がたった頃。
転校生がやってきた。
名前は『竜宮 緋夜』
この子との出会いが俺の運命を変えることになる。
俺は君を失った日からずっと願い続けていた。
何を代償にしてでも過去に戻って君を助けたいと。
それは非現実的な願いなのだとどこかで思っていたが、それは現実となって目の前に現れた…。
ー日常が終わるまであと3日。