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聖骨のスケルトンブレイヴ  作者: 虹乃夢見
序・下 其レハ真ノ選定ノ刃
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序章・第6話『英雄屠り(ヒーロー・ディフィーター)参』

人体模型「…ふぅ」


骨格標本「お疲れっすけど、大丈夫か?」


人体模型「よもやあなたに心配をされてしまうとは…明日は血の雨が降りますね」


骨格標本「酷ぇ!?」


人体模型「煩いですね…全く。 『未知なる人体の神秘展』でずっと展示されて、疲れているというのに」


骨格標本「……何、この落差……」

 ――――トンネルを抜けると、そこは森があった。

 いや、正確には“壁に閉ざされた森”といった方が正確か。

 兎に角天井は無く、柔らかい太陽の光がさんさんと降り注いでいて思わず寝っ転がって今すぐ昼寝をしたいくらいに心地よく、それでいて気持ちが良かった。


 「ふぉっふぉっふぉっ。 おやおや、こんな所までお客さんとは…珍しいのぉ…」


 …………言って良いか?

 …………いや、これは言った方が良いんじゃね?

 …………うん、今一度突っ込んだ方が良いよね?

 …………そうしよう。


 「幼女…だと!?」


 絶対年齢詐欺だ…そうに違いない!!

 全国の幼女に謝れ、今直ぐに!!


 「ちっちゃい…」


 「そこの小娘……何か言ったかの?」


 「へ? いいいいいいいえ、何でも!」


 嬢ちゃん、慌てすぎだって。

 さっきから高速で首を横に振りすぎだ。


 「……そこの骨も、何か変な事を考えておらんか?」


 「いえいえ、貴女の様な麗しき御方にお会い出来て感動しております」


 「ならば良いが」


 何だ、この合法ロリっ娘は…?

 妙に鋭すぎるぞ?

 まぁ、流石の俺も追撃なる物を喰らいたく無いんで此処は黙っていよう。

 それにしても…。


 「それにしても此処、何だか気持ち良いです。 ポカポカしてて」


 「ふぉっふぉっ、それは此処が『精霊の里』じゃからじゃよ」


 …あー…そーいえばさっきユミエルっつたけな?

 確か彼女、そんな事を言ってた様な……。


 『ジャヨー』


 『ジャネー』


 ……何だ、このちみっこい光球は?


 『ホネー』


 『ジンタイノフシギー』


 『とりっくおあとりーと』


 『ソレ、チャウネン』


 「これこれ、お前達。 今から長はこの者達と大切な話をせねばならんのじゃ、彼女達の傍に居ても良いがくれぐれも話の腰を折らん様に気を付けるのじゃぞ?」


 『うぃ』


 『いえーす、まぁむ』


 『らじゃー』


 (おさ)と自称した幼女が光球に注意を促すと、俺のローブの中や、嬢ちゃんの服(特に胸元)の中に入って行った。


 『ヨロシュー、ゴザマス』


 『シクヨロ』


 どうでもいいが、喋り方がコミカルすぎて妙にシリアスな雰囲気が壊れるどころか中和されてる様に見えるのだが…そう思うのは俺だけか?


 「ほっほ。 驚いたじゃろ? こ奴等は生まれたばかりの“精”霊じゃ」


「精、霊…」


 成程…だから魔力が極僅かに感じられるし、形が不安定な訳か。


 「まぁ、込み入った話の続きは儂の家でしようかのぅ」


●●●


 俺は順追って、長に此処までやって来た経緯を説明した。


 「――――ふむ、そうか…。 お主等、ようやってくれたの。 我が同胞もこれでようやっと浮かばれよう」


 「そう言ってくれれば恐縮です」


 「そう改まんでもよい。 唯でさえ『英霊ヒロイニクル』へと成りて、昇華せし者は特に、の」


 「…は?」


 「『昇華せし“英”雄の聖“霊”…即ち『英霊』。 ――――言っておくが儂より位は高いぞい?」


 『シズマレィ!』


 『コノモンドコロガメニハイラヌカ!』


 ……ちみっ(たま)共の言葉(ざれごと)はこの際無視だ。

 重要なのはおさが最後に吐いた台詞だ。


 「どう、いう…こっちゃ…?」


 『コノオカタヲドナタトココロエル!』


 『オソレオオクノさきの副しょう…』


 「――お前達、少し黙らんかい」


 『『ヘヘェー!!』』


 ちみっ球に一喝する幼女(おさ)…なんかシュールな光景だなぁ、とほのぼの感に浸りながら思ったりもしたが実際の光景は間逆だった。

 やはり歳の甲なのだろう……殺意、とまではいかないまでも“人差し指と親指で摘まみながらぷちっと潰す”様な殺気をピンポイントではなって来た時、こっちも同時に恐怖で身震いした時は無かった。


 「すまぬな」


 「いんや、まぁあれはあれで解り易い説明だったと思うぞ? ツッコミ入れたくなる衝動を抑えたくなる以外は」


 『ホネー、イイヤツ』


 『ホネー、カッコユス』


 ……長、ハリセン有るかな?

ジト目でちみっ(たま)を睨みつけてやると、光が青くなってブルブルと震えだした。

 ん……なんか、怯えてる光球とか意外と可愛いんだけど。


 「こほん…しかしお主…いやそこの骨のお前さん、名は何と申す?」


 「人の名を尋ねる時は先ず自分から言うもんだろ?」


 「おっと、これは失敬。 儂は『聖霊プネウマの一族』にして二十五代目プシュケー頭目の、“セルジオール・ルーアハ・カドシュ=プシュケー”と申す」


 おお、噂に聞くプシュケー家の。

 生前は一度もお目に掛った事が無かったから、こりゃ丁度良いや。


 「俺はリティ。 『ヴァルハラの一族』がひとつ、トリード家の長女にして『戦女神ヴァルキリー流天剣術』の使い手“リティ・クレア=トリード”だ」


 「――――は?」


 『オサー?』


 『ドッタノ?』


 「……いや、済まない。 しかし成程、通りで妙に懐かしく感じたのか」


 腕を組み、うんうんと頷きながら独りで勝手に納得していく幼女……うーむ、些かシュールだ。

 そんな光景を余所にちらりと嬢ちゃんの顔を見るとぽかんと目を見開きながら呆けていた。

 あ、こっちも駄目だ。


 「もしもー…」


 「――――よし、決まりじゃ」


 仕方ないので嬢ちゃんを現実に戻そうとしたが、それを遮るかの様に幼じ…セルジオールが叫び出した。

 今度は俺達が呆気にとられる番だった。


●●●


 暫く俺と嬢ちゃんはセルジオールの後に着いて行くととりわけ寂びれた空間へと辿り着く。

 其処にあったのは俺の、良く知る、“それ”だった。

 ――――“それ”の輝きはとうの昔に失われていたものの…俺の心を、魂を、肉体をも、震わせた、いや、奮わせるには充分だった。

 地に刺さる(にび)色の“それ”は、生前の走馬灯(記憶)を呼び起こすに相応しかった。

 ――――”それ”は妙に、異様に、神々しさと、禍々しさを、同時に魂の奥深くまで一気に叩きこむ、混沌孕む一振りの刃。


「ああ…再び巡り合えるとはな、聖剣『バルムンク』――――――――いや、“英雄屠りヒーロー・ディフィーター”魔剣『グラム』よ!」

また何か在りましたら削除&修正していきます。

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