序章・第1話『魔犬歩けば骨魔物に当たる』
地獄の三頭犬「黄泉帰りは、いけまへんでぇ~!」
骨格標本「俺、九十九神だからぁ~(泣)」
ふう、ようやっと体が慣れて来たなぁ。
盗賊の残党と片っ端からぽいぽいしている間中、生前の記憶を便りに魔力の調整をし続けていた。
その甲斐あってか、肉(骨)体の魔力の親和性が良くなっていたのだ。
それだけじゃない、制御や質の善し悪し等も感覚で解る様になっていた。
それに合わせて身体能力も何故か潜在能力まで引き出しちゃって、逆にそれを調整するのがかなり難しかったのだが…。
そんなこんなでこの騒動の発端となっている主犯らしき奴や残党全員に目隠しをし、猿轡を噛ませ、例の、少女達に着けられていた“魔封の枷”を着けて更にそこ等剣にあった太い縄で纏めて縛り上げてやった…見張りも含めて。
「何故に龜甲縛り?」
「その方が屈辱的だろう?」
「うっわ、鬼畜」
「何を言う。これでも生前の記憶に基き、人道的に処理した結果だ」
『はっ!?』
あら…?
とにかく此処を出よう。
「待っ…て」
おおう、なんだかクーデレちゃんらしきロリっ娘が半端じゃ無い殺気で魔力を溜めていらっしゃる。
「街に行って…どうする…つも…り?」
属性からして光、か。
「取り敢えずギルドに登録して、依頼をこなしながら旅をしようと思うんだが」
俺が故人と言う事には変わりは無い。
今現在の時代が俺の生きた時代と変わってしまってる感はどうしても否めない。
「今代の世界を旅したい。 もし世界が危機ならば、例え火の中水の中、迫る悪鬼の群れの中」
「変、な…の」
「ま、そんな所だ。 …それとクーデレちゃん?」
「な…に?」
「電流による発光か高熱による発光じゃないと俺は倒せないぞ?」
そう言い残して俺はその場を後にした。
だって臭かったんだもん、あの豚が。
そう、決してクーデレちゃんの魔力にビビった訳じゃないぞ?
そんなこんなでさっさと森へと戻った。
洞窟からある程度離れて、気付く。
さっきは慌ただしかったから解らなかったけど、この森、レベルとしては(盗賊なんかを除けば)かなり低級と言う事が解る。
いや、ね?
森から流れる魔素の流れからしてそんな感じなんだ。
勘、では無い。
はっきりと感じるんだ。
俺は心以外、欠損している。
筋肉・臓器・皮膚・血…特に顕著なのが五感。
骨以外が欠損しているのにも関わらず、感覚がしっかりと機能しているのだ。
昔辞書を調べて知った事なんだが、一般の骨魔物は強い“想い”という魔力の残滓が自身の骨に憑依するか、術者が魔力の残滓を同調させて骨に付与する事で生まれるため、浄化を求める感情以外、全てが失われてしまうのだ。
だがしかし、どうだろう。
どうしようもなく死んでいる筈なのにまるで“五体満足“で”生前の様に全てが備わって“いる“状態のまま“本当に生きている”実感が在るのだ。
――おいおい、これじゃ“全身骨格”が、“受肉されている肉体”と言っている様なものだぞ?
ん…?
だとしたら…?
「……」
魔力を全身に循環させる…そして、全身鎧を切る様な感じに魔力を纏わせてみる。
びゅうびゅうと俺から発生している魔力による風の、吹き荒ぶ音が聞こえてくるが…この際無視だ。
「魔装『疑軆』…!」
――体が――痛い。
――けれども――欠損していた何かが――着いて行く――そんな――感じ。
暴風雨が過ぎ去った後には――――何も変わって無い気が――――気が――――…………?
掌を見てみる。
――妙な違和感。
皮膚が擦れる様な…体温の温もりを感じる様、な…?
「…………!???」
ええ、と?
得体の知れない感触に放心している間、人の声が森中に響いてくるがそんな俺には聞えていない訳で…。
「あれ、人?」
「んあ?」
振り向いた先に現れた少女? の瞳に映っていた憎たらしい程美少女の顔は…忘れもしない、生前の俺の姿だった。
また何かありましたら削除&修正していきます。