表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

生ものVS私

作者: 詠野佑耶

みなさん。初恋の味はどんなものでしたか?

きっと、思い思いの味を想像されたでしょう。

今回のお話は、その味の中でも誰も想像したことのない味になるお話です。

「もげーもげばー」

 意味不明。

 今日中にこなさなければならない課題を前に、私は倒れこんだ。目の前にはなまず。ついこの間、弟が川から拾ってきたものだ。弟がいうに、拾ってくださいの紙と共に、ダンボール箱にはいっていたそうな。んな訳あるかい、と内心突っ込みつつ見やる。

「ねー。あんた何か言いなさいよぉ。何見つめてんのさ」

 期限が迫ってることもあり、焦りからどうしても口調がきつくなってしまう私。

 なまずは私の言葉を無視し、潤いたっぷりのぱっちりお目めはさっきと変わらず私を映す。

 微かに沈黙。

「もげもげーごぎゅるりー♪」

 何故だかにんまり笑うなまず。

 音符つけんな!!

 心の奥底で突っ込んだ。ここまでされるとどうしても対抗したくなる。

「……むねちゅあーぬぬにゃおぬばだー」

 ヤツに劣らずナイスな台詞。

 と、心の底でほくそ笑みながら、私はさらに顔を変形させる。

 なまずに負けず劣らず変顔である。今の自分は流石に見たくない。だって……不細工だもん。きゃは☆

 星を飛ばしても、大丈夫な年齢である。一様これでも大学生。すると、今まで沈黙を守ってきたなまずが口を動かした。にやりとニヒルな笑い。

「ぬばぁーん」

 自分の鼻面に生暖かな感触。生臭さが私の鼻腔を、ビームライフル並に貫いた。

「ぷぎゃあっっ!!」

 私は今日、初めてなまずを体験しました。

 やつは、私の鼻をその暖かでぬめぬめの唇でソフトタッチに接吻すると、満足そうにべろりと自分の唇を嘗め回した。

 今更ながらに激しく後ろに引き下がるものの、もう遅い。

 この事実はもう、変わらないのだから。

 私は現実を忘れ、自暴自棄になってなまずを頭に乗せた。台所へ走りだす。

「おかーさーん。わたしーなまずとラブホ行くー」

「!!」

 母は凍りつき、なまずは満足そうに、欠伸をした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ