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彼女の両の手  作者: ハイネ
3/3

日曜日、相瀬隣佳ちゃん Ⅰ

清々しい日曜日の朝。馨は窓に切り取られた青空見て、ふと彼女の顔を思い出した。彼女の目も青い色をしていた。

時刻は午前8時30分。ベッドから降りて制服に着替える。学校に泊まった彼女に会いに行くために。僕は自分でもどうしてこんなに執着してしまうのかわからない。けど、人をひきつけるような不思議なオーラがあるのかもしれない。

リビングのソファには大型犬のミロクがでんと陣取っていた。馨の気配に気づき、尻尾を大きく振りながらはしゃいでこっちに近づいて来た。

「おはよう、ミロク。今日はやけに元気だな。おすわり!おて!」

じゃれあっていると、後ろの方から声が聞こえた。

「もう!朝からうるさい」

双子の姉の優里(ゆうり)が機嫌悪そうに言った。

馨と優里の両親は2年前不慮の事故で亡くなったから、今は2人と1匹暮らし。

「ごめん。ミロクがなんか嬉しそうで。今日学校行ってくるから」

「ふーん。忘れ物でもしたの」

「ちょっとね」

そう言って馨は軽い食事を済ませ、マフラー、Pコートを羽織って通学カバンを片手に学校へ向かった。


学校のグランドには野球部、サッカー部、テニス部、陸上部などが、日曜日だというのに活発に活動している。

グランドの横を通り抜け職員玄関から保健室へと向かった。

「失礼します。昨日の彼女、様子はどうですか」

「あ、おはよう。その子なら今朝目覚めたわ」

彼女が使っているベッドから手招きされた。

「ねえ斎宮君。彼女について話があるの。ちょっといいかしら?」

彼女について話?僕はたまたま出会った彼女を助け、ここに連れて来ただけなんだけど……

「この子、斎宮君の親戚?」

「いえ、違います」

「そう。。。」

先生は難しい表情を見せた。

「どうしたんですか」

「彼女、相瀬隣佳(あいせ りんか)ちゃんっていうらしいんだけど、わたし、学校で一度も見かけたことがないの」

確かにそうだ。銀の髪してるから目立たないはずが無い。

「それにね、50年近く前の校章を付けているのよ。名簿にも載ってないし、制服も今のものと少し違う」

今の制服は薄くチェック柄が入ったのスカートだが、隣佳がはいているスカートはチェック柄が入っていない。

「隣佳は、隣佳さんはーー」

口を開こうとしたその時、隣佳がベッドから遠慮がちに顔を出した。

「あの、昨日は助けてくれてありがとう。私は相瀬隣佳。あなたの名前は?」

「僕は斎宮馨。よろしく」

その姿はすっかり元気になっていて、昨日熱を出して倒れたとは誰も思いもしないだろう。

「とにかく元気になったみたいだし、お家に帰りなさい。親には私から電話しておくから。番号教えてちょうだい?」

「…電話……番号」

隣佳は聞こえないくらい小さな声で呟いた。しばらく無言が続き、その表情と隣佳を取り巻く動揺した雰囲気は一瞬に消えて、

「あっ、そうだ!昨日教室に忘れ物したんだった。取りに行ってから帰りますね」

そそくさと荷物を抱えた。

「おわっ!」

なぜか馨の腕を引っ張って保健室を出て行った。廊下を小走りにかけてゆく。

「ちょ、ちょっと!」

背中に、湊の声を申し訳なさそうに聞きながら、だが振り向くことなく隣佳について行った。

少し行ったところで、手に持ち替えた。

彼女はーーー。彼女の掌は氷のように冷たかった。まるで雪を素手で掴んでいるみたいな感覚だった。

向かっている先は教室ではなく、理科室とか、家庭科室とか特別教室がある棟だ。突き当たりまできたら今度はどんどん上へ階段を上がってゆく。何がしたいんだろうか。

「なあ、教室そっちじゃないよ」

「えっ!…あ、そ、そうでした」

踵を返して逆の方向へ進む。この学校は迷路見たいなつくりをしていて、おまけに広い。学生の僕でも多少迷ったりするのだが、隣佳は多少、どころか完全に迷っている。

「ねえ、本当は隣佳はここの生徒じゃないでしょ?」

「いえいえ、ちゃんと鷺野成の生徒です」

「どこのクラス?どの辺に住んでるの?」

「それはさっ…」

「さ?」

しばらくの沈黙。

「……ない……憶えてません」

嘘で言ってるようには聞こえない。もしかして記憶の一部がなくなってるとか。

「本当に何も憶えてないのか?」

「………はい。私の記憶は名前と、 秋が来ない って事だけです」

「秋が来ない?どうゆうこと?」

「私にもわかりません。だけど、その言葉は痛むように頭をよぎるんです」

これは困った。多少厄介ごとに巻き込まれるような気がしてきた。手を引っ張られた時から薄々感じていたが、記憶喪失は多少どころの騒ぎではない。

「そうか。それは不安だろうな」

「お願いです、馨くん。私、秋を過ごしたことがないんです。すごく、怖い感じがします…」

過ごしたことがない?日本にいれば、春夏秋冬来るはずだ。うーん。

「隣佳はどうしたい?」

「秋が来ない理由が知りたい…」

それだけなら僕でもできるかもしれない。

「じゃあ僕も手伝うよ。理由を見つければいいんだろ?」

「ありがとうございます!あ、お礼とかじゃないけど、これ、よかったらあげます」

それは、控えめな雪の結晶の飾りがついたシンプルなブレスレットだった。おまけに高校生になって女の子から初めてのプレゼント(笑)

学校では禁止されているから、大事に胸ポケットにしまった。とりあえず馨のクラスの1年F組に、無意識に癖で足を運んだ。

この話は二部構成にする予定なんですが、一部の終わりがモヤンとしててすいませんm(_ _)m


キャラも軸がちょいちょいブレてます。これが、ハイネのクオリティでございます。


自己満足以下の作品ですが、何卒、最後までお付き合いくださいませ。

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