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暗闇の中だった。

ぼんやりしたような意識、体が重く…怠い。


少しずつだがはっきりとしてくる。

風が頬を撫でるような感触、背中には冷たいがしっかりとした物がある、もたれかかっているのかな?

重い指先から感じてくるのはさらに冷たい地面と小さな草の感触だ。


(ここはどこだろう…)


まだ目が開かない、自分の胸が上下する感覚と共に澄んだ空気が体の中に入ってくる。

葉ずれの音が耳に心地いい。このまま意識を沈めたら、きっと気持ちがいいだろう。

ほんの少しの間、意識が遠のきかけた。寝てしまいそうだった。


…なんだか誰かに呼ばれた気がする。

近づいてくる足音が聞こえてきた。


「…おい…」


足音が少しずつ大きくなる、きっとこちらに近づいてきている。


「おい」


今度こそはっきりと呼びかけられた、足音の主はこちらに用があるようだ。

しゃがみ込むような気配がするが、まだ目が開かない。

こっちとしても開けようと努力しているのだ、でもどうにも体がだるくて頭も上がらない。


「はぁ…起きろ!」


ため息とともに両頬に連続で鋭い痛みが走る、叩かれた。

その痛みに、ようやく意識がはっきりとする。

頬を抑えながら勢いよく顔を上げた。

目と鼻の先にそれなりにがっしりとした体格の男の顔があった。


「やっと起きたか」


男は「やれやれ」と男は首を振って立ち上がった、呆れたような雰囲気が伝わってくる。

あたりを見回すと想像通りの森の中、あたり一面大きな木々に囲まれた少し開けた土地。

振り返ると周りの木々と比較しても一回り以上に大きな木、もたれかかっていたのはこれだったらしい。


「お前、なんでこんなとこにいるんだ?目的は?」


周りを見渡していると男が話しかけてきた、質問だ。

しかし質問に答えようにも何故ここにいたのかというのはこちらにとっても疑問だった。

ここで眠る前の記憶がないし、そもそもここで眠っていたのかも怪しい、気が付いたらここにいた…それが適切な答えだった。


「不思議な奴だな、噓は言っていなさそうだが」


男は顎に手を当て首をひねっていた。

満足な答えが出せずに申し訳なかったがしょうがない。


「おい、立てないのか?」


さてと立ち上がろうと手に力を込めたがうまく力が入らずにそのまま上半身が地面に倒れてしまう。

意識こそはっきりしたがどうやら体の方がまだ完全に起きていないみたいだ。

足に力を入れようにも震えるだけで立ち上がるだけの力が入らない。

そんな様子をみて男は面倒くさそうにだがしゃがみ手を貸してくれる。


「お前軽いな、ってことは学者とかか?人に言えないような調査でもしてたのか」


確かにそうかもしれない、納得しかけたがそれにしても荷物が少なすぎる。

せめてノートとか記録するものがあってもいいだろう、淡々とした返事ではあったが男も納得したのか返答はなかった。


「そういえば名前はなんていうんだ?」


ようやっと肩に手をまわして立ち上がれた所で男は聞いてきた。

名前、ぼんやりとだが覚えている気がする、確か


「僕は田中です」


聞いたくせに男は特に興味なさげに頷くだけだった。

こちらも尋ねたところ男はアレックスと名乗った。

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