私とソレイユローズは、膨大な要望書の山を、とにかく仕分けだけすることにした。
まず大きく分けて、貴族間の調定などの王子案件と、設備に関する案件に分ける。設備に関する案件は、修繕・点検・交換・清掃・その他に分類することにした。
「多少の誤りは気にせずに、仕分けの速度を優先しましょう。複数の要望が書いてあるものは、一旦除けておきましょう」
ソレイユローズの指示に従い、要望書をひたすら分類していく。
王子達も生徒会室に戻ってきたので手伝ってもらった。
どっぷりと日の暮れた頃、仕分け作業が完了した。
「皆さんお疲れ様でした。設備に関する案件は、修繕・点検・交換・清掃・その他でよさそうですね」
ソレイユローズが床の上に積み上げられた要望書の山々を見回しながら満足気に言う。私を含めて生徒会の面々は疲れ果てているのに、何でソレイユローズはこんなに元気なんだ。
「ほんま元気やねえ(ちょっと落ち着けお前)」
私の「貴族ことば」を聞いたソレイユローズは、途端にしおらしくなった。
「すみません、ブラック企業勤めの謎テンションで、つい」
ブラック?
ソレイユローズの言うことは、ほんとに分からないことがあるな。
「さて、要望書を分類したのはいいが、これからどうするんだい?」
クリアストーン王子が疑問を発したことで、ソレイユローズは我に返ったようだ。
「はい。まずこちらの貴族間の調定などの要望ですが」
ソレイユローズが一際大きな山を指し示す。これだけで全体の半分くらいありそうだ。
「こちらは王子様の権限で調停できるものもあるとは思いますが、王室に丸投げでいいと思います」
「丸投げ?」
聞き慣れない単語を訊き返したのはルビーストーン王子だ。
「はい。全て王室で処理していただけばいいでしょう。王室としては王子様に経験を積ませたい思惑もあるのでしょうけど、いずれ王子様達が卒業したときには処理が回らなくなります。そもそも私達の本分は学生ですので、政治に関することは大人に任せましょう」
「一理あるな」
クリアストーン王子が同意する。
「そして、設備に関する要望書ですが、これは学園事務局に丸投げしましょう。そもそも生徒会を通す必要もないので、新しい書式の要望書を作成し、提出先は学園事務局にしましょう」
「すると生徒会の負担は激減するな」
蒼の制服のサファイア・クロムウェルが感心しながら頷く。
「じゃあ、僕達は文化祭や舞踏祭といった、生徒主体の行事に集中できるね」
黒の制服のオニキス・ヴェイルが黒い瞳を輝かせて言う。
ソレイユローズのおかげで、生徒会の諸問題が一気に解決してしまった。すごいな聖女。
おっと、感心している場合じゃない。悪役令嬢としては、こういう時は手柄を横取りするような卑劣な真似をすべきだろう。しかし、私が卑劣な発言をする前に、話は思わぬ方向に進んだ。
「ソレイユローズのおかけで、生徒会が生徒会の仕事に集中できそうだ。感謝する」
クリアストーン王子の言葉に、ソレイユローズが予想外の返答をしたのだ。
「いえ、これは私だけの考えではなく、ヴィラネッタ様と一緒に考えたことです」
何ですって、それは初耳よ。
「そうか。ヴィラネッタ、ソレイユローズを生徒会に入れるように進言してくれたことも含めて、感謝するぞ」
クリアストーン王子がとびきりの笑顔を私に向けてくる。ちょっと待って。
「いえいえ、これはソレイユローズの手柄です。褒めるべきはソレイユローズです」
って、思ってたことと違うことを口走ってるぞ私。
生徒会役員達は、私を見て何かを納得したように、うんうんと頷いている。いや、謙遜しているわけじゃなくて、私は何もしていないのに。
ソレイユローズの顔に、何か不穏な笑みが浮かんだように見えたが、彼女がすぐに背中を向けてしまったので、気のせいかも知れない。
ともあれ、こうして生徒会での一日が終わったのであった。