009 - おうたいしでんか -
009 - おうたいしでんか -
とてとて・・・
「シーアさん、ごきげんよう」
「ごきげんよう、ヌコーニ様」
寮を出て学園の門を入るとヌコーニ様が待っていた、僕が今日から復帰すると聞いて一緒に行こうと言ってくれたのだ。
ヌコーニ様の隣には学園の制服を着た男性が立っている、護衛・・・かな?。
「紹介するわ、転校生のスタン・ラリアット君よ、私達と同じ学年ね」
ごごごご・・・
「ちょっと待って、この人どう見てもおじさんだ!」
ダメだ、情報量が多過ぎてまた思った事が言葉に出ちゃった。
「老け顔なのよ」
「・・・」
「・・・」
僕は目の前のおじさん・・・スタン・ラリアット君を見る、鍛え上げられた上腕二頭筋が眩しいな、胸も筋肉でパッツンパッツンだ、ボタンが弾け飛びそうになってるよ!。
「スタン君、こちらは私の親友でシーア・ユーノスさん」
ごごごご・・・
「・・・上級貴族ラリアット家の隠し子、スタンと申します、さんじゅうよ・・・いえ、13歳です」
スタン君、声低っ!・・・ってか今34歳って言おうとした!。
ごごごご・・・
「あ、はい、よろしくお願いします・・・」
僕はこれ以上考えるのをやめた・・・。
ざわっ・・・
教室に入ると皆の視線が僕達に集まった。
駄聖女様をいじめている王太子の婚約者、暴漢に襲われ片目を失った令嬢、筋肉モリモリマッチョな中年男・・・注目されない方がおかしい!。
「スタン君のおかげで僕への注目が薄れたね」
「ふふっ・・・計画通りよ」
「・・・」
僕とヌコーニ様が席に座るとスタン君も当然のように隣に座った。
ぎしっ!
スタン君の体重で椅子が嫌な音を立てて軋んだけど僕は聞こえていないふりをする。
みしっ・・・
きゅっ・・・
僕の隣で時々スタン君の筋肉が軋む音がするけれど気にしない!。
授業時間になり教室に入ってきた教官にもスタン君が見えている筈なのに普通に授業を開始した・・・コヴァーン家による謎の力が働いているようだ。
「さぁ皆さんお食事に行きますわよ!」
「「「はい、ヌコーニ様!」」」
お昼になり僕達は食堂に向かっている、襲撃事件があったりコヴァーン家の悪い噂が派手に流れているのに取巻きの5人は減ってない。
3人は元からコヴァーン家の派閥で残りの2人は関係のない弱小派閥の令嬢だった。
僕が残った理由を聞くと一人はヌコーニ様の顔が好き、もう一人はあの冷たい目で罵られたい踏まれたい・・・などという頭を抱えたくなるような理由だったのはヌコーニ様本人には秘密だ。
廊下を歩きながらヌコーニ様は楽しそうに彼女達とお喋りしている。
でもよく見るといつもは背筋を伸ばして姿勢良く歩いているヌコーニ様の様子がおかしい、足も小刻みに震えている・・・。
事件のあったこの場所を通るのが怖いのかもしれない。
すっ・・・
「・・・え」
僕はヌコーニ様の側に寄り添い・・・そっと手を繋いだ。
「大丈夫ですよ」
ヌコーニ様は一瞬驚いたような表情をした後、僕にだけ聞こえるような小さな声で一言・・・。
「ありがとう」
わぁ・・・これって百合っぽい、前世では娘の百合漫画コレクションを拝借して読んでたけど自分がやると恥ずかしいな!。
かちゃかちゃ・・・
もっもっ・・・
ざわざわ・・・
わいわい・・・
食堂に入り僕達は昼食を食べ始める。
初期取巻きの3人組が僕の隣を通り過ぎ、こちらをチラチラと見ながら少し離れた席で食事を始めた、ゴリーネさんは相変わらず沢山食べているようだ。
しばらくして僕達のテーブルに王太子殿下が近付いてきた、もちろん駄聖女も一緒に居る。
だんっ!
殿下がヌコーニ様の目の前までやって来てテーブルを叩いた・・・とても怒っているようだ。
ざわっ・・・
「婚約者が目の前に居るのに挨拶も無いのかい?」
「ごきげんようでんか」
ヌコーニ様が殿下を一瞥して挨拶をする・・・凄い棒読みだ、感情が全然入ってない。
「ホリーに聞いたぞ、お前は最近彼女に嫌がらせをしているそうだな」
「記憶にございません」
「なっ・・・嘘をつくな!」
「証拠はありますの?」
「・・・」
殿下の目が泳いでる、まさかこのアホは証拠も揃えないで言ってるのかな?。
「あ・・・あるぞ!、ホリーが嫌がらせをされたと言っている!」
「そうなんですぅ!、私何も悪い事してないのにヌコーニ様がぁ・・・」
殿下の腕に貧相な胸を押し付けて駄聖女が涙目になって叫ぶ、大した演技力だ。
「・・・」
「・・・」
取巻きの皆からゴミを見るような視線を向けられているのに殿下は一方的にヌコーニ様を罵り、満足したのか駄聖女を連れて食堂を出ていった。
あんなのが次の国王なんて・・・僕が心配する事じゃないけどこの王国の未来は暗そうだ。
既に学園内では幼女好きの変態王子だと言われている、その噂に尾鰭が付いて大臣達の耳にも入り王太子交代の要望が出始めているのだとか?。
ぽんっ・・・ぽん・・・。
「シーアさんに貰った耳栓が役に立ったわね」
以前ヌコーニ様が殿下の声が大きくて頭が痛くなると言っていたので僕が自作の耳栓をあげたのだ、聞き耳を立てていた周りの生徒からも笑い声が聞こえた。
読んでいただきありがとうございます。
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