006 - あくやくれいじょう -
006 - あくやくれいじょう -
「悪役令嬢?」
僕の言葉にヌコーニ様が反応した。
「そうです・・・あの駄聖女は被害者面して悲劇の主人公を演じてる、だからヌコーニ様は彼女と2人きりにならないように注意して下さいね、常に人目のある場所で行動して悪者に仕立て上げられないようにしないと・・・」
話している途中でヌコーニ様を見るとテーブルから身を乗り出して僕の話を聞いている、顔が近い!。
「それなら学園に居る時はシーアさんが私と一緒に行動してくれればいいわ」
「えぇ・・・」
「何でそんな嫌そうな顔するの!」
「最悪僕まで悪役令嬢になるじゃないですかぁ!、良くて悪役令嬢の取巻きその1とか」
フルフル・・・
「最近取巻きの数が減っているわ!」
「そうですねー、将来の王妃様とお近付きになりたい令嬢は離れて駄聖女の方に擦り寄ってるみたいですよ」
「例の噂が原因かしら」
そう、30人以上居たヌコーニ様の取り巻きは今8人に減っている、今日用事があると言って来ていない初期取巻きの3人組も距離を置き始めた。
あの3人は一応僕の友人でもあるから名誉のために言っておくと家からの命令で仕方なく離れている、ヌコーニ様宛に当主の署名入りでお詫びの手紙を渡されたそうだ・・・。
取巻き令嬢が散って行った原因の一つは確かに王太子殿下と駄聖女なのだけど、もう一つ大きな理由がある、最近コヴァーン家に不祥事の噂が広がっているのだ。
宰相である当主様が汚職に手を染めている、違法な人身売買をやっているようだ、教会を貶める発言をした、他国に情報を売った裏切り者・・・等々、何の根拠も無い噂なのに異常な拡散力で庶民にまで広がっているらしい。
「おそらくコヴァーン家と激しい権力争いをしているニードロップ家の策略だろう、これからもっと酷い噂が流れそうだけど・・・」
また思った事が声に出ていたようでヌコーニ様が絶望的な表情をしている、自慢の取巻き令嬢が激減して元気が無いのに僕が追い打ちをかけてしまったようだ。
「元気を出してください、今回の件で権力だけが目当ての者や噂に踊らされた馬鹿・・・つまりヌコーニ様の本当の味方じゃない人間が選別出来たのだから良かったじゃないですか」
ヌコーニ様はまだ不安そう・・・無理もないかな、王妃教育を受けている貴族令嬢と言ってもまだ13歳の子供だ、友人だと思っていた娘が離れて行って辛い気持ちは分かる。
なでなで・・・
僕は椅子から立ち上がり、泣きそうになっているヌコーニ様の隣に寄り添って頭を撫でた。
「何ですの?」
「いえ、なんとなく撫でて欲しそうに見えたので」
なでなで・・・
「ありがとう(ぼそっ)」
「何か言いました?」
「何でもありませんわ・・・」
がさがさっ!
「ひっ!」
ずぅぅぅぅん!
陽の光に照らされていたテーブルの上が突然影に覆われた、驚いて見上げると・・・。
ぽろぽろ・・・
「うぉぉぉん!、すまないヌコーニちゃん!」
テーブルの横にある植木の影から現れたヌコーニ様のお父様・・・ゴンザレス・コヴァーン様が涙と鼻水を垂らして立っていた。
「お・・・お父様!、いつからそこに?」
「・・・「本っ当に信じられませんわぁ、あの駄聖女!」辺りからだろうか」
「最初からじゃん!」
あ、まずい、思わず声に出ちゃったよ!。
「・・・も・・・申し訳ありません、動揺してつい思った事が声に・・・」
僕は素直にゴンザレス様に謝った、何度もヌコーニ様のお家に遊びに来ているからお父様とも顔見知りではあるのだけど・・・。
「大きな身体に躍動する筋肉!、宰相にしておくのは惜しい鍛え上げられた肉体といかついお顔、かっこいいけど正直迫力があり過ぎて怖いよ!」
「また全部声に出ていましてよ」
「そうか、かっこよくて宰相にしておくのは惜しいか、シーアちゃんは嬉しい事を言ってくれるね」
「わぁぁぁ!」
・・・
・・・
「・・・というわけで、うちの派閥にはニードロップ家と通じている裏切り者が居る事が分かった、いい機会だから噂を放置して我が家への忠誠心を見極めているのだ、それにあの家は裏で悪事を働いていてね、目障りだから証拠を集めてそのうち潰そうと考えている」
「・・・わぁ」
「しばらく悪い噂は出るだろうが・・・シーアちゃんは娘の味方だから計画を話した、この事はくれぐれも内密に頼むよ」
ごごごごご・・・
「あ、これは僕に拒否権のないやつだ・・・」
「ふふっ・・・また声に出ているわ」
「・・・」
一緒にお茶をしながらゴンザレス様と話して分かった事は・・・ヌコーニ様の初期取巻き3人組の家は昔からコヴァーン家に仕える忠臣なのだそう。
今回の噂を利用して身分や状況に関係なく側に寄り添ってくれる友人を選別する為にそれぞれの当主様に依頼して最初にヌコーニ様から離れて貰ったらしい。
ヌコーニ様はあの3人組に距離を置かれた事を一番悲しんでいたから誤解が解けて良かった・・・。
今回の件は王家とも協力していて・・・陛下は女癖の悪い王太子に最後の更生の機会を与えるようだ、今のところ廃嫡が濃厚で次の王様は第二王子殿下になりそう・・・。
「そんな重要な話を僕に教えても大丈夫なのですか?」
「シーアちゃんは信用できる、悪いと思ったのだが娘の友人はうちの影を使って全員調べ上げた、家族構成、学園での素行、性格や性癖まで全て把握済みだ、うちの影は優秀でね、調べようと思えば寮に置いてある君の下着の色まで・・・」
「なぁっ!」
とんでもない事を言い出したぞこの筋肉親父!。
すぱこーん!
不穏な発言に驚いているとヌコーニ様がお父様の後頭部を殴り倒していた。
「お父様気持ち悪いです」
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