005 - ろりこんだ -
005 - ろりこんだ -
僕が学園に入ってちょうど2年が経ち13歳になった、ここでの生活は相変わらず平穏・・・という訳ではなく少し厄介な事件が起きている。
ヌコーニ派閥内での人間関係は特に変わっていない、初期からの取巻き3人との仲も良好だ、3人の他に親しい人は居ないけれど僕は友達が居なくても平気な性格なので問題は起きていない。
ヌコーニ様にも僕の方から話しかける事は少ない、でも向こうから結構な頻度で絡まれるのだ・・・理由は分からないし本人に聞いても教えてくれない。
彼女は自分本位でわがままな性格だから僕はいつも振り回されている。
ざわっ・・・
「・・・またですわ」
「あぁ・・・なんという事でしょう」
今、学園の廊下では見過ごせない出来事が起きている、ヌコーニ様の婚約者である王太子殿下と並んで仲良く歩く新入生の女の子・・・。
最初は女好きの王太子殿下が新しい獲物を見つけたのかと思った、ヌコーニ様の時も一目惚れをしたと言ってそれまで仲の良かった娘と別れ突然結婚を申し込まれたのだ。
当時のヌコーニ様は12歳、王太子殿下は僕達より3つ上の15歳だった、限りなく犯罪に近いけれどまだ許容範囲だろう・・・でもあの幼女は11歳だ、王太子殿下は今16歳だから・・・。
「ロリコンだ・・・」
「ろり・・・何ですって?」
声がしたので振り向くといつの間にか背後に居たヌコーニ様が首を傾げて僕を見ている、顔が良いからちょっとした仕草でもドキッとさせられる・・・しかも至近距離だ!。
「いえ、思った事が声に出てしまっただけですのでお気になさらず」
「そう・・・」
僕達の存在に気付かず仲良く廊下を歩く殿下達・・・ヌコーニ様の様子を伺うと殿下達をガン見していて少し怖い。
新入生の名前はホリー・ニードロップ、教会が認めた聖女様だ。
1年前に教会で神託があったらしい・・・本当かどうか分からないのだけど教会があったと言い張るからそうなのだろう。
とある上級貴族が率先して探索を行うと神託通りアンブレラ王国北部の寒村で手の甲に聖痕のある幼女が見つかって国中が大騒ぎになった。
そして驚くほど速やかに「とある上級貴族さん」が偶然にも身寄りの無い孤児だった聖痕幼女を引き取り養女として貴族籍に入れたのだ。
加えてあの幼女は殿下の好みを煮詰めて凝縮したような容姿をしているらしい・・・。
余談だけどその上級貴族、ニードロップ家は教会に多額の寄付をしていてヌコーニ様のコヴァーン家とは対立関係にあったりするのだ。
「権力争いかぁ、面倒臭いなぁ・・・」
僕達の目の前で仲良くじゃれあっていた幼女が勢い余って王太子殿下に抱きついた、王太子も鼻の下を伸ばして嬉しそうだ。
「また思った事が言葉に出てしまったのかしら、一応貴方も淑女なのだから気を付けなさい」
「一応って・・・でも今のヌコーニ様だって淑女がしていい表情じゃない・・・」
「あ?」
「・・・いえ、何でもないです」
ヌコーニ様は王太子殿下に恋愛感情は無い、本人もそう言っていたし殿下の容姿は彼女の好みからかけ離れている。
艶やかな長い黒髪、女の子のような華奢な身体、顔も整っていて恐ろしいほどの美形だ。
近くで微笑まれたら殆どの女性は堕ちるだろう、僕やヌコーニ様は違うけど。
ヌコーニ様は大柄で逞しい筋肉質の男性がお好みだ、宰相の地位にある彼女のお父様やお兄様もムキムキマッチョだ。
普段からアレを見慣れていると殿下の容姿は貧相・・・いや物足りなく感じると思う。
殿下があの駄聖女に乗り替えたら今まで耐えてきた厳しいお妃教育が無駄になるし、王族に捨てられたような形になって次の婚姻にも影響する、何より自尊心の高いヌコーニ様にとっては許し難いのだろう。
あれから10日程経ち事態は更に悪化した。
王太子殿下は駄聖女を常に連れ回すようになった、定期的に開かれるヌコーニ様とのお茶会にも当然のように同席していたらしい。
だから最近のヌコーニ様は酷く機嫌が悪い・・・宥めるのが大変だから勘弁して欲しい。
「本っ当に信じられませんわぁ、あの駄聖女!」
「そうですねー、信じられませんねー」
駄聖女呼びは僕が最初に始めたのだけど影響されてヌコーニ様も使っている、間違っても公の場でポロッと言わないでね。
「殿下もあんなのに簡単に騙されて!」
「そうですねー、酷いですねー」
「どうにかして殿下から引き剥がせないかしら」
「難しいですねー」
だんっ!
ヌコーニ様が突然テーブルを叩いた。
「うわびっくりしたぁ!、ティーカップがちょっとだけ浮いたよ!」
「適当に返事をしないで下さる?、私は真剣に相談しているの!」
「わぁ、適当にしてたのバレちゃったぁ!」
「また思った事が口に出ていましてよ!」
今日は学園がお休みの日だ、僕はヌコーニ様のお家でお茶をご馳走になっている。
「まぁ、殆ど愚痴を聞いてるみたいになってるけど・・・」
「あ?」
ダメだ、また思った事が口に出てた。
普段なら初期取巻き3人組も居る筈だけど3人とも偶然用事が重なってここには居ない、だから今日は僕とヌコーニ様だけでお茶会だ・・・正直気まずいし面倒臭い。
「シーアさんは私とお茶をするのが面倒くさい・・・」
また口に出ていたようでヌコーニ様が涙目になってフルフル震え始めた。
「いえ!、王太子殿下とは面倒臭い事になりましたねって言いたかったんです!」
「そう、なら問題ないわ」
機嫌が直ったようだ、ちょろいな・・・。
「殿下との婚約、解消できないのですか?」
「お父様の権力なら白紙に戻す事もできるでしょうね、でもあの駄聖女に負けたみたいで悔しいの!」
「・・・」
確かにあの駄聖女はあざといし調子に乗っている、殿下のお気に入りという立場を利用して学園でもやりたい放題だ。
上級生であるヌコーニ派閥の令嬢達が注意すれば泣くし虐められたと騒ぎ立てる・・・。
前世で僕の娘が集めていた小説や漫画に似たような話があった、時々娘のコレクションを拝借して読んでいたから僕は詳しいのだ。
王子様と平民・・・身分違いの真実の愛、それを邪魔する婚約者。
「まるでこっちが悪役令嬢みたいじゃないか」
読んでいただきありがとうございます。
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