004 - ひみつ -
004 - ひみつ -
僕が学園に入って1年半が過ぎた、相変わらず学園生活は平穏だ・・・。
毎日授業を受けて終われば寮に帰る、食事は寮の食堂で提供されているし学園が休みの日には外出届を出せば友人達と街へ遊びに行ける。
僕は友人が少ないから普段は学園の図書室に篭って本を読んでいるか趣味に没頭している、刺激を求める人には退屈に思える毎日だけど僕にとっては居心地がいい。
ヌコーニ様と初期取巻き3人組との関係も上手くいっている。
近付き過ぎず離れ過ぎてもいない・・・僕が静かな環境を好むという事も理解してくれていて用事があると言えば無理に誘って来ない。
そんな快適な毎日の中で僕の身体に変化が起きた。
その日・・・というか数日前からやけに体調が悪かった、ヌコーニ様にも顔色が悪いと心配されたのだけど熱っぽいしお腹も痛い。
これ以上具合が悪くなるようなら午後から休んで寮に帰ろう・・・そう思っていた。
「わぁぁぁ!」
僕はお手洗いで叫んだ。
・・・僕に初潮が来たようだ、もちろん家庭教師から一通り教わっていた、でも実際になると衝撃的だ。
「う⚪︎こを漏らしたのかと思ってお手洗いに駆け込んだけど・・・どうしよう」
今は授業中だから誰にも見つからないように寮へ帰れるかな、そんな事を考えていると・・・。
コンコン・・・
誰か来た。
「シーアさん・・・」
ヌコーニ様の声だ、お手洗いに行って結構な時間戻って来ない僕を心配して様子を見に来てくれたのだろう・・・我儘なお嬢様のくせに優しいじゃないか。
ガチャ・・・
僕は個室の鍵を開けた。
「まぁ・・・大変」
僕の姿を見て何が起きたのか察してくれたヌコーニ様は泣いている僕を学園の医務室に連れて行ってくれた、自分でも気付かないうちに泣いていたようだ・・・。
「そのうち何かで恩を返せるといいな」
実は僕には誰にも言っていない秘密がある・・・前世の記憶があるのだ。
物心がついた頃からそれはあって今の僕の人格を支配しているのは前世の「私」、だから僕は幼い頃から大人びた言動をする子供だった。
問題なのは前世の「私」は40歳まで生きて不慮の事故で死んでしまった「男性」だという事・・・。
前世で妻や娘が辛そうにしていたのは知っていた・・・でもまさか自分が体験する事になるとは思ってもみなかったよ。
「人生何があるか分からないなぁ・・・」
残念ながら?今僕が生きているこの世界には魔法が無いし魔物も居ない、転生者が勇者や聖女になって倒す魔王も居ないのだ。
もちろん死んだ後に怪しい神様にも会っていないし特別なスキルも与えられていない・・・もし勇者になって悪を倒せと言われたとしても僕は断固拒否するだろう!。
文明はそれなりに発展している、田舎は知らないけど王都には上下水道が整備されているし空気中にある魔素を利用して動く魔道具というものが発達している。
夜は魔導灯が闇を照らし、魔導列車の路線が都市を繋いでいる・・・街並みは中世ヨーロッパ的な佇まいを残してはいるものの魔道具の発展でスチームパンクっぽい雰囲気もある世界だ。
・・・
コンコン・・・
「はーい」
翌日も体調が戻らなくて学園を休んだ僕のところに誰か来た、学園の寮は基本的に一人部屋だから身体がだるくても僕が対応しないと・・・。
ベッドから起き上がりふらつく足取りで扉を開ける。
がちゃ・・・
「お見舞いに来たわ!」
ヌコーニ様だ、手には果物の沢山入ったカゴを抱えていて後ろには顔馴染みになった有能そうなメイドのポーラさんが控えている。
僕はお部屋の中に2人を招き入れた、よく見るとポーラさんも大きなお皿を手に持っている。
「それは?」
「ゴリーネさんが作ったミートパイよ」
ヌコーニ様が貧相な胸を張って自慢そうに言う、でも作ったのはゴリーネさんだよね・・・。
ふわぁ・・・
ポーラさんがお皿に被せていた蓋を取ると部屋いっぱいに美味しそうな香りが充満した。
ゴリーネさんはコング家という裕福な貴族令嬢なのに料理が趣味だ。
お部屋の中に立派な調理器具を持ち込んでレストランのシェフ並みの料理を作る、そして試食役は幼馴染の「ぽっちゃりさん」ことルシンダさんだ。
最近では体重を気にし始めて食事制限をしているルシンダさんに加えて僕達も試食に呼ばれるようになった・・・。
「シーアさんがお腹を空かせていると可哀想だからと持って行くように頼まれたわ」
「・・・」
ゴリーネさんはああ見えて細やかな気配りのできる優しい子だ、僕は今まさにお腹が空いていて食堂に行くのもだるいし困っていた・・・今度何かお礼をしないといけないな。
もっもっ・・・
「美味しい!」
「本当に美味しいわ、あの子また腕を上げたわね」
「美味しゅうございます」
僕とヌコーニ様はゴリーネさんのミートパイを食べている、量が多いので普段は後ろに控えているポーラさんにも手伝って貰っているのだけど、それでも残りそうだ。
「もう入らないわ」
「あ、そのままにしておいて貰えれば僕が夜中に食べますから」
「そう・・・それにしてもこの量をルシンダさん一人で処理していたなんて恐ろしいわね」
「・・・確かに」
僕の両腕で抱えて余る大きさのミートパイは2欠けを残して3人のお腹に収まった、残りは夜中か翌朝に食べようと思う。
「明日は授業に出るのかしら?」
「はい、そのつもりです」
すっ・・・
「・・・今日の授業のノートを渡しておくから写しなさい」
そう言って鞄から取り出したのはヌコーニ様のノートだ。
「・・・ありがとうございます?」
ヌコーニ様は我儘で人当たりがきついけれど一度身内と認識した人に対してはとても親切なのだ、普通は筆頭貴族の令嬢がこんな事はしない。
・・・本当にそのうち何かで恩を返さないといけないな。
読んでいただきありがとうございます。
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