EX-004 - おこられたわ! -
EX-004 - おこられたわ! -
「それで、王太子は変わりないか?」
「はい、お義父様!、王太子殿下は既に私に心を許しておりますわ、ご安心ください」
「だがコヴァーンの娘を傷物にする計画は失敗したではないか」
「・・・申し訳ございません、もう少し屈強な者にしていれば良かったのですが教会に居る司祭の中で私に誘惑できたのは彼だけでした」
「ふむ・・・その貧相な幼児体型では難しいか」
「・・・」
「下がって良いぞ」
「はい、失礼致します」
・・・
・・・
カーン
カーン
「またあの頃の夢だわ・・・本当に嫌になる」
私は硬いベッドから起き上がり簡素な修道服に着替える、今はまだ薄暗い早朝、鐘が鳴れば起き出して教会の掃除をしなくてはならない・・・。
「今までは暖かなベッドで遅くまで眠っていられたのに・・・何で私がこんな目に・・・」
私の名前はホリー・ドロップキック・・・ニードロップ家に養女に出された元下級貴族令嬢よ。
私の家は先代・・・お祖父様が事業に失敗したそうでとても貧しかった、なのに5人の兄弟姉妹が居るから食べるものにも困っていたわ。
そんな時、私の家にとある上級貴族様から話が持ちかけられたの。
私を養子に欲しい・・・多くの候補から選んだ結果私が適任だと・・・。
両親は大金を積まれて即答したそうだ、相手が力のある上級貴族様だから頼みを断る事も出来ず仕方なく・・・というのならまだ許せたのだけど、結局両親は私を売り渡したのよ。
「ホリー、お前は病気で死んだ事にする、家の為に死んでくれ」
ニヤニヤと笑いながら私にそう伝えた父親の顔は今でも忘れないわ!。
使いの者だと名乗る男に連れて行かれた大きなお屋敷で両手の甲に消えない刻印を刻まれお前は今日から聖女だと言われたわ。
兄弟からも性格が悪いと言われてる私が聖女なんてあり得ないし両手がとても痛くて泣いてしまった・・・。
その後は教会に行って司祭から綺麗な服とローブを渡された、最初は戸惑ったけれど身分の高そうな司祭達や修道女の皆が私に頭を下げるから気分が良かったわ。
私の仕事は1日おきに教会に行って皆の前で聖女の祈りを捧げる事、それから学園に入り王太子を誘惑する事・・・。
「上手くやればお前は聖女で王妃だ、この国で一番高貴な女性になれるのだ」
義理の父親になった男は私に醜悪な笑顔でそう言ったわ。
気に入らない・・・何もかもが全部気に入らないわ!、私を売った両親、欲望まみれの醜い義父、聖女のご機嫌を伺う司祭達・・・。
私が権力を持ったらお前達全員に復讐してやるっ!。
1年が経ち私は命じられた通り王太子に近付いたわ。
「きゃっ、転んでしまいましたぁ」
「大丈夫かい(ニコッ)」
少し失敗してわざとらしく転んでしまった私に手を差し伸べる王太子、くそっ、顔がいいじゃない!。
「あぅぅ・・・いたぁい、立てないですぅ・・・」
「ほら手を出して」
傷ひとつない綺麗な手だ、私と違って何一つ苦労なんてしてないんだろうな・・・そう思ったら腹が立ってきた!。
「あ・・・ありがとうございますぅ(うるうる)」
自分で演じておいて鳥肌が立ってきたわ!。
心を掴んだ後は思いっきり甘やかして私に溺れさせてやれ、などとよく分からない事を命じられている、甘やかせば・・・いいのよね?。
見た目はいいけど正直好きになれそうもない、でも私は聖女だから横に立たせておけば見栄えはするかもしれないわね。
彼には婚約者が居て幼女が大好きだと聞いている・・・義父に言われた通り少し身体を寄せて胸を押し付けたら私を意識し始めた・・・。
そして王太子との初対面から僅か5日で婚約者を放置して私だけを見てくれるようになったわ、私って凄いじゃない!。
毎日私を連れ回して学園を歩く王太子、お願いしてみたらお茶会にも同行できた、婚約者のヌコーニは抗議するでもなく無表情だけど絶対に悔しがっている筈よ!。
しばらくしてヌコーニの取巻き令嬢がうるさく言ってきた。
「婚約者が居る男性に馴れ馴れしくするな」
「王太子殿下に失礼だとは思わないのか」
「礼儀がなっていない」
彼女達の言い分は全部正しいわ、でも私は義実家からの命令でやっているの、文句があるなら醜悪な義父に行って頂戴!。
そんな事を思いながらか弱い令嬢を装った。
大声で泣いたり、わざと転んだり・・・寒いのに池に落ちたりもしたわ!。
・・・義実家が流した噂も派手に流れたわ。
殿下は私に気持ちが移った、コヴァーン家の不祥事が発覚した、ヌコーニが私を酷く虐めてる・・・全部嘘だけど学園中に広まった。
ヌコーニの取巻きは減り私の取巻きは増えたわ、私の勝利は確実だった筈なのよ!。
「王太子の卒業式までは全て上手くいってたのに・・・」
ぎりっ・・・
「あの宰相に全部ひっくり返された!」
そう、ゴンザレス・コヴァーン、あいつが王と結託してニードロップ家を潰したの!、私の今までの苦労が全部台無しよ!。
だんっ!
「おい、そこの!、掃除道具を乱暴に扱うな!」
怒られたわ!。
今の私は長かった髪を短く切って毎日タダ働きさせられている下っ端の修道女・・・1日おきに聖女服に身を包み皆の前で祈りを捧げている私に似た彼女は偽物だ。
しおらしく祈っているから心を入れ替えて深く反省しているのだだろうと・・・。
誰も私が祈りを捧げていた元聖女だと気付かないし言っても嘘つき呼ばわりされてしまうのよ!。
逃げようと思えば教会から逃げ出せる、でも逃げても飢えて死ぬだろうから今は耐えるの!。
どうにかしてあの宰相に復讐できないだろうか・・・そんな事を考えながら毎日を過ごしてどれくらい経っただろう。
あの筋肉モリモリの宰相は私じゃ絶対勝てないから溺愛していると噂の娘・・・ヌコーニを狙おうか・・・。
「絶対復讐してやるんだからっ!」
「おい、何一人で叫んでんだ!、仕事しろ!」
「あぅ・・・」
また怒られたじゃない!。
「い・・・今は復讐の機会を伺っているだけよ!・・・ぐすっ・・・今に見てなさい!、いつか必ず泣かしてやるわ!」
「ねぇ、聞いた、今度この教会に聖公国から使者様がいらっしゃるみたいよ」
「わぁ、凄いねー」
ある日、床掃除をしていると修道女達の雑談を聞いた、聖公国はこの教会の・・・というか大陸中の教会を支配、管理している国だ。
使者というのは・・・何?、分からないわ。
「ねぇ、そこの貴方!」
「あ?、何だよお前!」
私が聖女の時はこいつら全員私に頭を下げてたくせにお前呼びかよ!、私は心の処刑ノートにこの2人を刻み込んだ。
「いえ、あの、聞きたい事が・・・」
「人に物を訊ねる態度じゃねぇな!」
こいつ・・・
「お・・・お願いします教えてくださいっ!」
跪いて汚い靴にキスさせられたけど情報は手に入れたわ!。
今度ここに聖公国から使者がやって来る、彼等は定期的に各国の教会を視察して不正や腐敗が無いか調査しているらしい。
私は元々国に認められた聖女よ!、今聖女面してるあのクソ女は偽物だ、おそらく両手の刻印も洗えば落ちる・・・。
「ふふっ・・・私にも運が向いて来たわね」
使者とやらに偽聖女の事を密告してやろう、国の命令では私を聖女として死ぬまで使い潰せと言われていた筈よ。
偽聖女は教会で好き放題して嫌われていた私への嫌がらせ、おそらく教会の独断ね、この秘密がバレたら絶対怒られる筈よ!。
上手くやれば私は聖女の地位に戻れるわ!。
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