EX-003 - あんじぇりかさん、なやむ -
EX-003 - あんじぇりかさん、なやむ -
「ふふっ、シーアちゃん驚いてたなぁ」
今日は学園の卒業式、私はシーアちゃんをエスコートしてパーティ会場に入った、父上に頼んで内緒で参加させて貰ったのだ!。
私が卒業して3年になるからこの学園の景色や空気に懐かしさを感じてしまう、今はあの鬱陶しい駄聖女も居ないし王太子という重い肩書きも無い。
今日は存分に美味しそうな料理を堪能しよう!。
「正直なところお前はシーアちゃんをどう思っているのだ?」
そんな事を考えていると私の隣に居る父上が話しかけてきた。
「どう・・・とは?、シーアちゃんは大切な友人ですけど・・・」
「そうではなくてだな・・・将来結婚したいという気持ちは・・・」
「何を言っているんですか父上、女同士で結婚はできませんよ」
「・・・お前は男だろ」
父上が頭を抱えている。
この3年間女性として生きていたから自分が男だという事を忘れてた!、今日だって男装するの恥ずかしいと思いながらこのお洋服に袖を通したのだ。
「男女だから何の問題も無く結婚できるぞ、お前達は仲が良いから結婚したいのなら私が協力・・・」
「・・・シーアちゃんは親友です、それ以上の事は考えていません」
そう、今の2人の関係が心地いいし、踏み込み過ぎてシーアちゃんとの仲が壊れるのが怖い。
シーアちゃんは私の1番の理解者で親友なのだから。
それにシーアちゃんは男に抱かれるのは絶対に嫌だと言っていた。
「ふわぁ・・・抱かれるなんて、いやらしい響き」
「・・・お前は何を言っているのだ?」
ダメだ、つい言葉に出ちゃってた、父上が真顔になって私を見ている。
「あらあら」
その横では母上が生暖かい目で私を見ている。
「お料理を食べてきます!」
がしっ!
「待て」
美味しそうなお料理が並んでいるテーブルに向かおうとしたら父上が私の腕を掴んで引き止めた。
「周りをよく見ろ、令嬢達がお前を見ているぞ」
父上の言葉を聞いて周囲を見渡すと・・・飢えた獣のような目をした令嬢達が待ち構えていた!。
「料理を諦めるかシーアちゃんと一緒に行動しろ」
料理は絶対に食べたいので私はシーアちゃんの居るテーブルに向かって歩いた。
「フェリック様っ!」
「失礼っ、急いでいますので(ニコッ)」
すたすたっ・・・
「あのっ!、お話を!」
「ごめんね(ニコッ)」
「フェリッ・・・」
ささっ・・・
「フェ・・・」
しゅぱぱっ・・・
・・・
私は群がって来る令嬢達を華麗に躱しながら、お皿一杯に料理を乗せて美味しそうに食べているシーアちゃんの所に行き腕を絡めた。
がしっ!
「・・・ひぃっ!」
シーアちゃんは私の顔と、私の後ろにずらりと並んだ獣・・・いや令嬢達を見て小さく悲鳴を上げた。
「私も料理を食べたいので協力してください(ひそっ)」
「僕を殺す気なの?、早く離れてよ(ひそひそっ)」
「こんなに美味しそうなお料理しばらく食べてないの、協力してくれないと今ここで抱き付くよ(ぼそっ)」
「ひぃ・・・」
「あ、あのお肉美味しそう!」
私はメイドさんに頼んで取り分けて貰う。
「ありがとう(ニコッ)」
「はひっ・・・ひゅぅ・・・」
お礼を言うとメイドさんは何故か顔を赤くして挙動不審になった。
「他に美味しそうなものは・・・っと」
向こうのお魚のソテーは自分で好きなだけ取っていいみたいだ!。
「あのお魚も取ろう!、シーアちゃん早く!」
すたすた・・・
かちゃかちゃ・・・
とりとり・・・
「あれ、シーアちゃん食べないの?」
シーアちゃんが快く協力してくれたから私は美味しいと定評のある料理を沢山堪能した。
パーティが終わり美味しい料理でお腹が一杯になった、シーアちゃんはお家に帰り、私は馬車を持っていないからトリスさんと歩いて帰ろうと思っていたら・・・。
「今夜は城に泊まれ」
そう言って両親に引き止められた。
今私は学園からお城に向かう王家の紋章が付いた馬車に揺られてる、目の前には両親と弟、すぐ後ろの馬車には両親達の護衛とトリスさんが乗っている。
「凄い食べっぷりだったな、普段は何を食べているのだ?」
父上が私の食生活を聞いてきたから正直に答える・・・トリスさんから聞いてないのかな?。
「えと・・・街で貰っ・・・じゃなくて買って来たお野菜の切れ端が入ったスープとパン・・・」
「金が無いのか?」
「お給料と絵を売ったお金で何とかやっています・・・お給料前は時々シーアちゃんのお家で夕飯をご馳走になってますけど」
「少しは王家で援助を・・・」
父上が言いかけたのを私は遮った。
「いえ、私のわがままで家を離れたのですから援助は必要ありません、当面は自分の力で生活してみたいです」
「・・・お前に結婚の申し込みが山のように来ているぞ、殆どが男兄弟の居ない令嬢で当主になって貰いたいそうだ、私のところで全部弾いてはいるが」
「この国は女性でも当主になれますけど・・・」
「当主の話は建前だ、お前を取り込もうと狙っている家は多いのだから気をつけろ」
「・・・」
「まぁ、しばらくは好きにするがいい、私としては王兄としてアポロを支えてやって欲しいのだがな・・・宝飾店のアンジェちゃんとして一生を終えるかフェリック太公として国を支えるか・・・よく考えて決めるがいい」
「はい」
翌日、美味しい朝ごはんをお城で食べた後、両親から持ちきれないほどの野菜やお肉を渡されて私はお城を後にした。
「私は宝飾店のアンジェちゃんとして一生を終えるつもりだったんだけどなぁ・・・」
私の絵は順調に売れているし宝飾店の従業員は皆親切だ、お給料もいいから今やっているお屋敷の改修工事が終われば食事に使えるお金にも余裕ができるだろう。
王城で借りた質素な馬車が私のお屋敷に到着した、昨日と今日は宝飾店をお休みさせてもらっているからのんびりできるかな・・・。
そんな事を考えていると私の屋敷を眺めているご婦人に気付いた。
「あの、このお家に何か御用ですか?」
馬車の中で着替えたから今の私は女の子の姿だ・・・。
「いえ、改修工事をされているようですから気になって・・・最近王都にフィニアス・ヨウジョスキー氏の絵画が出回っていましたので、もしかすると戻ってこられたのかな・・・と」
「戻る・・・ですか?」
「はい、長く空き家になっておりましたが・・・ここはフィニアス氏のアトリエだったのですよ」
どうやらこの家は画家のアトリエだったみたいだ、フィニアス・ヨウジョスキー・・・知らない名前だなぁ・・・。
「それから・・・最近人気のアン・ムウェルツという画家が私の予想だと彼のお弟子さんの可能性が・・・」
「え・・・」
「画風が同じというか・・・ちょっとした細かなところがフィニアス氏と似ているのですよ、ですから師事されていたのではと・・・あ、これは完全に私の想像なのですけど」
実はアン・ムウェルツというのは私が絵を描く時に使っている名前だったりする!、師匠から絵を売る時は本名を使わない方がいいと教わったのだ。
「あの・・・実はここは私の家で、少し前に引っ越して来たんです、その画家さんについて何か分かれば連絡しましょうか?」
「・・・昔とてもお世話になったもので、もし戻って来ているのならご挨拶をと思ったのです、あ・・・もうこんな時間、お仕事に行かないと・・・」
私は別れ際にそのご婦人の連絡先を教えて貰った。
読んでいただきありがとうございます。
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