024 - ざまぁ? -
024 - ざまぁ? -
色々あったけれど僕は16歳になった、来年の今頃には卒業だ。
その色々あった中でも特に酷かった事件がある、僕の元父親がユーノス家にやって来たのだ。
何の価値も無いと思っていた娘が小さいとはいえ王都に商会を開いた、しかも商売が上手くいっている・・・その話は僕の元実家であるオースター家の耳にも入った。
僕に無関心だった元父親がようやく興味を持って調べたのだろう。
シーア・ユーノス・・・次期王妃様の親友、貴族や庶民に大人気のシルバーアクセサリー「アビス」製作者、奇抜なデザインの衣服が話題沸騰中のヴテック・シーア商会代表、アポロ王太子殿下のお茶飲み友達・・・。
役に立たないと他家に売り払った娘の価値に気付いた元父親がユーノス家に返せと言って押し掛けてきた。
「だから言っているでしょう!、売り払ったのは価値が無いと思っていたからです!、私は騙されたのだ!」
「・・・」
「・・・」
夜遅くに両親に呼ばれて同席したユーノス家の応接室で僕の元父親が吠える、唾まで飛んでるよ汚いなぁ。
義両親にゴミを見るような目をされているのにも気付かず元父親は更に続けた。
「金なら払います、そちらがうちに払った額の2倍出しましょう!、どうですか?(ニヤリ)」
下級貴族に対しては横柄な態度を取る元父親もユーノス家が相手だと最低限の礼儀は弁えているしお金を払って僕を買い取ってくれるようだ。
下級貴族だけどユーノス家の奥様は筆頭貴族コヴァーン家当主の妹なのだから・・・。
「シーアちゃんはどうしたいの?」
お義母様・・・カヴァーニ様が無表情で僕に尋ねる。
「もちろん戻りたくありません!」
ガタッ!
「何だとぉ!」
元父親が叫んで立ち上がった、仮にも商売をしている人間なのだから感情をどうにか出来ないのかな・・・。
元々オースター家は先代・・・お祖父様が築き上げた信用で上級貴族を中心に取引をするようになったから自分達が偉いと思ってるのかも?、まぁ一応上級貴族だから偉いのは事実なのだけど・・・。
「おじさん、貴方は大怪我をしてる元娘に傷物の役立たずだと言って思いっきり殴ったよね、そんな仕打ちをしておいてどうして僕がおじさんの娘に戻ると思ったの?」
「そんな些細な事をまだ怒っているのか!」
・・・このクソ野郎にとっては些細な事で済む出来事なのかもしれないけど僕は深く傷ついたのだ。
僕の言葉に冷静を装っていた義両親の表情が一変した、お部屋の温度まで下がった気がするよ・・・。
そういえばジーノさんにお願いして僕が殴られた事は秘密にして貰ってたんだ。
お義父様が執事のプリジェールさんを手招いて耳打ちした、そしてお部屋を出て行くプリジェールさん・・・。
ピキピキ・・・
僕の義両親が静かにブチ切れてるよ・・・。
「このっ・・・」
立ち上がって僕の腕を掴もうとしたけれど避けたからテーブルに指をぶつけた、とても痛そうだ。
「じっ・・・上級貴族である私に怪我をさせたな!」
突き指でもしたのか僕を睨む・・・面倒臭いなぁ。
「面倒臭いだとぉ!」
「あ、また思った事が言葉に出てたよ」
「・・・娘は行きたくないと言っておりますのでどうぞお引き取りを」
ハンニヴァルお義父様が低い声で静かに元父親に言った、凄い迫力だ、温厚なお義父様はちょっと猟奇的なお顔をされているから凄むと本当に怖いのだ!。
「だ・・・騙されて結んだ取引だぞ、返せと言っている!」
「娘は物ではありません、取引という言葉は不愉快ですなぁ」
「いくら欲しいのだ!、売り値の3倍・・・いや4倍でどうだ!」
お義父様の迫力に押されてるのにまだ未練があるのか更に食い下がってきた、でもこの辺でやめた方がいいと思う・・・お義父様が本気でキレそうだ。
「・・・ハンニヴァル殿にそのような顔をさせるとは、君は凄いねぇ」
声がして元父親が振り向いたそこに居たのは・・・。
「ゴンザレス様・・・」
お隣の屋敷から呼ばれて来たのか寝巻き姿のコヴァーン家当主にしてこの国の宰相、ゴンザレス・コヴァーン様だった。
「シーアちゃん、もう眠いだろう・・・お部屋に戻って眠りなさい(ニコッ)」
「そうだねぇ、明日も学園があるのだから早く寝ないとね(ニヤリ)」
「シーアちゃん、ここは私やお兄様に任せて寝ましょうねぇ(ニコッ)」
ゴンザレス様、お義父様、お義母様にそう言われたら僕は従うしかない、っていうかこの重々しい空気の部屋から今すぐ逃げたい!。
「で・・・では僕はもう寝ますっ!、おやすみなさい!」
僕は心の片隅で明日の朝、元父親が王都の川に浮かんでない事を祈った。
別にあのクソ野郎に情は無いけれど、彼が死んでしまうと僕を育ててくれたオースター家のメイド達が路頭に迷うかもしれない。
結論から言うとあのクソ野郎は2刻・・・2時間ほど経った真夜中に帰ったらしい。
らしいというのは僕は寝ていたからだ、それに僕が出て行ってから応接室でどのような話し合いがあったのか正直知りたくない。
翌朝僕は早起きして義両親が居るであろう食堂に向かった。
「あの男は納得して帰って行ったよ(ニタァ)」
お義父様が肉汁の滴るお肉を美味しそうに食べながら猟奇的な笑顔でそう言った。
「そうね、もう二度とシーアちゃんに近付く事は無いでしょう(ニコッ)」
お義母様も謎の含みのある笑顔で紅茶を飲んでいる。
「・・・」
後でゴンザレス様にあの家を潰さないようにお願いしておこう・・・そう思っていると食堂にゴンザレス様が入ってきた。
どうやらこれからお仕事のようで、お城に出発する前にここへ寄ったらしい。
昨日の寝巻き姿じゃなくて金糸で刺繍された衣装の上に大臣に支給されている豪華なローブを羽織っている。
「ふむ・・・シーアちゃんはあのお家のメイドが心配だと?」
「はい、まだ何人か僕を育ててくれたり親切にしてくれた人が残っていると思いますので・・・」
「名前は分かるかい?」
それを聞いてどうするの!。
僕は恩のあるメイドさん達の名前をゴンザレス様に教えた。
「レックスの奴と相談して潰すかどうかは今後の行動を見て決める事にしよう(ニコッ)」
そう言ってゴンザレス様は食堂を出て行った、やっぱり潰そうと思ってたんだ・・・ちなみにレックスというのは陛下だ!。
・・・
その後、僕の元実家に何があったのかは詳しく知らない、この前ヌコーニ様と一緒にアポロ殿下とのお茶会に参加していた時、背後から陛下が現れて・・・。
「シーアちゃん、元実家の件・・・大変だったねぇ(ニコッ)」
そう言って意味深な笑顔で去って行ったのだ・・・怖いんだけど!。
聞いた話だと商取引上の不正や脱税が発覚したようだ、商会は規模を大幅に縮小し上級貴族との取引をやめて平民相手の商売に切り替えた。
元父親は当主の座を退き元お兄様が跡を継いだらしい、元お姉様は・・・オースター家に居ないようだから誰かと結婚して家を出たのかもしれない。
それから・・・オースター家で働いていたメイドさんの何人かは今コヴァーン家で働いている。
ヌコーニ様とのお茶会の為に向こうのお屋敷を歩いていると昔お世話になったメイドさんに泣きながら抱きつかれて驚いた。
腐ってもオースター家は上級貴族だ、そこで働いていたメイドならコヴァーン家でも問題なくやっていけるだろう。
本当なら「ざまぁ!」な展開になってお家は爵位返上、一家離散になってもおかしくなかった。
でも虐待されていた訳ではないし食事もきちんと与えられて学園にも通わせて貰ったから元実家を恨んではいない、だからゴンザレス様には手荒な事をしないで欲しいと頼んでいたのだ。
僕のおかげで「微ざまぁ?」で済んだのだから感謝して欲しいな・・・。
読んでいただきありがとうございます。
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