023 - もりがーる? -
023 - もりがーる? -
王都に戻ったアンジェちゃんは陛下から貴族街の外れにある築100年以上の古いお屋敷を貰ったらしい。
トリスさんに聞いたのだけど・・・お屋敷を見たアンジェちゃんはゴーストが出そうで怖いと一晩中泣いていたそうだ。
一応普段生活するお部屋は頑張って掃除したおかげで住めるようになったのだとか。
「お買い物は久しぶりだぁ!」
アンジェちゃんが両手を高く上げてはしゃいでいる、今日は僕とアンジェちゃん、それからトリスさんの3人でお買い物だ。
王都の大通りを3人で歩いていると周りから凄く注目を集めている、原因はアンジェちゃんだ、この1年の間に背が伸びて更に綺麗になった。
男達が声をかけようとジリジリと距離を詰めて来る、その隣で威嚇するトリスさんと僕・・・。
僕も懐にトンファーを忍ばせているし軽装だけど武器を持ったトリスさんも居るから絡まれても心配は無い・・・と思う。
王家の「影」も離れた所から一人くらいはついて来ているだろう。
「日用品とお洋服を買うんだよね」
僕は久しぶりの王都を堪能しているアンジェちゃんに尋ねる。
「うん、貰ったお家は本当に何も無いからね・・・」
「変装用の地味な服も買った方がいいよ」
「え・・・何で?」
「気付かれないように後ろを見て、男どもがアンジェちゃんに声をかけようと群がって来てる、襲われないように変装するの!」
「でも私、身体は男だし」
「男でも大丈夫な人が居たらどうするの!」
「?」
そう、実際アンジェちゃんが男だとしてもいけるって野郎どもは大勢いる、それくらい今のアンジェちゃんは美少女だ。
ちょっと野暮ったい服を着てダサいメガネでもかけてたら少しはマシになるかもしれない。
まずは洋服店で普段着を選んだ、ゆったりしたベージュのワンピースと上に羽織る若草色のカーディガン、足元は編み上げブーツ・・・。
前世の僕が若い頃に流行った「森ガール」を意識した。
「これで髪を三つ編みにしたらエルフっぽいかな?」
「えるふ?」
「いや何でもないよ、ちょっと動かないでね」
僕はアンジェちゃんの背後に回り込み長い髪を三つ編みにしてあげた。
「ふふっ、完成っ!」
「わぁ!、かわいい!」
隣でトリスさんが驚いている、今までアンジェちゃんはこんな森っぽい?格好したことがなかったから新鮮なんだろう。
今までは高価そうな服を着ていたから王族特有のオーラが溢れていたけれどこれなら庶民っぽさのあるちょっとお金持ちのお嬢様に見える。
「可愛いなー、弓を持たせたらより一層エルフっぽさが・・・」
「だからえるふ?って何?」
「何でもないよ!」
「・・・」
次は変装用の服だ。
アンジェちゃんは男の格好をするのが嫌だと言ってたから少し悩んだけど・・・。
下は真紅のキュロットスカート、これはズボンだけどぱっと見スカートに見えるやつだ、僕のお店で売り出そうとジョーイさんに作って貰った試作品・・・。
上はお店に売っている黒の異世界人シャツ・・・と同時に作ったドラゴンのイラストのやつ、ブーツも僕がデザインした厚底のものを選んだ。
それから何故か売れ行きがいい革の指なしグローブ、色は黒だ!。
「ふふふ・・・これは痛い、中二病全開だ!」
「ちゅうに・・・何?」
「パネェって言葉は俺のためにあるんだぜっ!」
「は?・・・シーアちゃん何を言って・・・」
ダメだ、思わず前世の僕が愛読していたメンズ⚪︎ックルのキャッチコピーを呟いてしまった!。
でもダサくしたつもりが素材がいいから中性的なかっこよさが出てしまう。
「シルバーアクセサリーや鎖も少し付けたいな・・・」
かちゃかちゃ・・・
「シーアちゃん、何で指輪を全部の指につけるの?、一つでいいよ」
「これでいいの!」
「シーアちゃん、何でこんな重い鎖を腰につけるの?、邪魔になるし引っ掛かったら危ないよ」
「これでいいの!」
「・・・」
「ほらこの色付きメガネをかけて・・・出来たぁ!」
思っていた以上にダサかっこいい!、⚪︎ンズナックル風に言うと「黒と赤が俺のワルさを輝かせるぜ!」って感じかな。
「シーアちゃん、さっきから何を言ってるの?、黒と赤?、わるさ?・・・私輝くの?」
「わぁ!、また思った事が口に出ちゃったよ!」
・・・
「アンジェちゃん遊びに来たよー」
ギィィ・・・
アンジェちゃんが外れかけた扉から顔を出した、ちゃんと僕が選んだ森ガールな服を着ている・・・髪も三つ編みだしとても可愛い!。
肝心のお屋敷は窓ガラスは割れているし聞いていた以上に酷い状態のようだ・・・。
王都でお買い物をしてから3日経ち、僕はアンジェちゃんのお家に遊びに来た。
「・・・汚い所だけど、入って」
ぎしっ!
床が嫌な音を立てたんですけど!。
「あ、そこは床が腐ってるから抜けるかも?」
「早く言ってよ!」
ぎっ・・・ぎし・・・みしっ・・・ぱきっ・・・
僕は大丈夫だけど後ろに居るスタン君が歩くと床が悲鳴を上げる、今にも抜けそうだ。
「アンジェちゃんと2人きりで話したいからスタン君はお庭に居て貰えるかな?」
こくり・・・
頷いてスタン君が中庭に出て行った。
「トリスさんもお庭に出てていいよ、スタンさんとお話ししたいでしょ」
「はい、それは構いませんが・・・」
もじっ・・・
顔を赤くしたトリスさんがモジモジしている、僕とアンジェちゃんが気を利かせて2人きりにしてあげるんだから早く行きなよ・・・。
今日スタン君は僕の護衛という名目でコヴァーン家から借りて来た。
理由も聞かずあっさり許可して貰えたところを見るとヌコーニ様はアンジェちゃんが「あの」元王太子だと気付いているようだ。
ゴンザレス様から聞いたのかもしれないし、彼女は変に鋭いところがあるからずっと前にバレていた可能性もある。
スタン君はいよいよトリスさんに結婚を申し込むそうだ。
それを聞いた僕はアンジェちゃんと相談して告白の場所を提供した、廃墟みたいな庭でプロポーズというのもどうかと思ったのだけど、護衛任務が忙しい2人が会える機会があまり無いので仕方ない。
今頃は2人でイチャイチャしているかスタン君が指輪を出して結婚を申し込んでいるだろう・・・。
「僕もヌコーニ様も身長の伸びは止まったのにお胸は大きくならないんだよ」
僕とアンジェちゃんはお屋敷の中で唯一寝泊まりが出来る状態になっているお部屋で話をしている。
スタン君とトリスさんの話をしているうちに会話の内容が自然と恋愛や結婚になった。
僕に対して将来結婚するのかと聞くアンジェちゃん。
「僕は傷だらけだし身体は女性だけど心は男だから男性と恋愛なんて考えられないなぁ・・・それに胸も小さいから結婚相手だって嫌でしょ」
僕の言葉を聞いてアンジェちゃんの視線が僕の胸に・・・。
前世での僕は貧乳好きだったので望むところではあるのだけど、改めて見られると恥ずかしいな!。
ちなみにヌコーニ様も発育が悪い、寄せて上げても僕より少し大きい程度だ・・・結構気にしているようだから胸の話はしないよう気を付けている・・・。
恋愛の話が出たせいでアンジェちゃんを少し意識してしまった・・・艶やかな黒髪に整った顔立ちの超絶美少女だ!、僕だって年頃の女の子だから性欲くらいある。
初めてお部屋で一人えっちをした時にはアンジェちゃんに押し倒されて無理矢理・・・という妄想をしたら大変な事になった!、女の子の身体って凄い!。
まだ恋愛感情は芽生えていないけれど僕はアンジェちゃんが大好きだ。
2人は生物学的に間違いなく男女だからお付き合いもできるしアンジェちゃんに付いているかいないかは別として結婚もできるだろう・・・。
でも仲のいい友達という今の関係を壊したくない気持ちの方が強いのだ。
「アンジェちゃんも相手が僕なんかだと嫌だろうし・・・」
「え?、何か言った?」
「なんでもないよー」
コンコンッ!
バタン!
「アンジェちゃん聞いて!、わ・・わたわたわたっ!、けっけっこここ!」
お部屋にトリスさんが駆け込んできた、指には僕が作った最高傑作がキラリと光ってる・・・スタン君よく頑張った!。
「トリスさん落ち着いて、ほら深呼吸」
「すー・・・はー・・・」
「それで、どうしたの?」
どうしたのか分かっているのにニヤニヤしながらアンジェちゃんが尋ねる。
「す・・・スタン様から・・・けけけけ・・・」
相当動揺しているようだ。
「もしかして結婚を申し込まれたとか?」
「そう!、それ!」
ぽろぽろっ・・・
「うぅ・・・ぐすっ・・・嬉しいよぉ・・・一目惚れして、かっこいい人だなって・・・ずっと好きだったの」
「そのずっと好きだった人は今どこに居るの?」
「あ・・・中庭に放置してきちゃった!」
「ダメじゃん!」
読んでいただきありがとうございます。
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