022 - ゔてっく・しーあ -
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アンジェちゃんとの再会から更に半年が経ち僕は15歳になった。
アクセサリーで稼いだお金を使って僕は王都の路地裏に小さなお店を開いた、名前は「ヴテック・シーア商会」だ。
主に取り扱うのは庶民向けの衣料品、僕が前世でやっていた「ドラゴンアビス」でも取り扱っていたTシャツやハーフパンツ、それからブーツだ。
黒を基調にした独特のデザインが受けて一部の人達の間で評判になっている。
この世界には無地の服が殆どで、シャツの後ろにイラストが描かれているものは全く見ない、だからその隙間を突いて商品展開したのが成功したのだ。
お店は狭いけれどカウンター付きの店舗スペースがあって裏には在庫を仕舞っておける倉庫や給湯室兼休憩所、お手洗いがある。
元々飲食店だった建物を購入したから水回りは充実していて軽食も作れるようになっている。
内装は白と黒だ、黒を基調にして髑髏やドラゴンのイラストが壁に沢山描かれている、ストリート風の鮮やかな落書きを施した僕の趣味全開のデザインだ。
ちょっとやり過ぎたかなと思ったけれど僕のお店なのだから「好き」を全部詰め込んだのだ。
ヌコーニ様にも見て貰ったら一瞬固まった後で「・・・ニューヨークのスラム街っぽくていいんじゃない?」などと誉めているのかよく分からない感想を言っていた。
まだ商会長一人、従業員一人の小さな商会だけどこれから事業を拡大して老後は優雅なスローライフを目指すのだ!。
「商会長、何一人でニヤニヤしてるんっすか?」
僕に声を掛けたのは従業員兼共同経営者のジョーイ・ヴテックさんだ、僕より5つ年上の20歳。
彼は大通りに店を構える衣料品店で働いていたのだけど突然クビになり、路地裏で酔っ払いに絡まれていた所を偶然通りかかった僕が助けたのだ。
初対面で彼と意気投合した僕は洋服の縫製が得意と聞いて商会の立ち上げを持ち掛けた。
最初は小娘が何を言ってるのか・・・という感じだったのだけど、僕のデザイン案を見た彼が顔色を変えた。
事業に失敗しても負債は全て僕が負うという条件を出したら2つ返事でパートナーになってくれた。
「シーアさん貴族令嬢っぽくないっすね」
そう言って笑うジョーイさんはとても有能だ、何で前の商会をクビになったのか謎だった・・・心当たりが無いか聞いたところ・・・。
「そういえば商会長の娘さんが馴れ馴れしかったんすよ、仕事の邪魔になるし我慢してたんすけど・・・忙しい時期でイラついてたから邪魔だーって思わず怒鳴っちゃって」
ほぼ間違いなくそれが原因だと思う・・・ジョーイさん人懐っこくて顔がいいからその娘はジョーイさんの事が好きだったんじゃないかな?。
「いやぁ、騒がしい人って苦手なんっすよ・・・」
商会の名前は「ヴテック・ジョーイ商会」にしようと提案したのだけど、自分の名前がそのまま商会名になるのは畏れ多いから僕の名前も入れてくれと強く迫られて「ヴテック・シーア商会」になった。
「このシャツ、特に売れ行きがいいっすよ、もっと作りましょう!」
カウンターの中に居るジョーイさんがシャツを僕に見せる。
「僕はドラゴンのやつの方が売れると思ってたんだけど・・・そんなに売れてるの?」
「はいっす、子供達にも人気だから小さいサイズのも増やすっすよ」
そう言ってジョーイさんが手に持っているのは黒地に大きく「異世界人」と白い漢字で書かれたTシャツだ。
デザインはもちろん僕、試作品をお屋敷で着ていたらヌコーニ様に大笑いされた!。
これからはゴスロリっぽい女性向け商品を増やそうと思っている。
そうなるとジョーイさん一人の手作業に頼るのは限界があるから協力してくれる縫製工房を見つけないといけないし・・・学園を卒業するまでは忙しい日々が続きそうだ。
「こんにちはー、新作を納品に来ましたよー」
僕は裏口から合鍵を使って「ジュワイヨの宝飾店」に入る、まだまだ売れ行きが好調な僕のシルバー・アクセサリーを納品にやって来たのだ。
今日お店はお休みなのだけど、マダムは店に居ると聞いていたので今後の商品展開についても打ち合わせる予定だ、お店が開いているとお客様優先だから落ち着いて話ができない。
・・・
がしっ!
いきなり誰かに抱き付かれた!、防衛本能が働き相手の首に腕を回し締め落とす体制に入る。
きゅっ!
「んぐぅ!・・・きゅぅ・・・」
がくっ!
「あら、シーアちゃん・・・って!、きゃぁぁぁっ!、アンジェちゃん大丈夫ぅ?」
「え・・・」
マダムが商談室から出て来て叫んだ、僕の腕の中で絞め落とされ白目を剥いている女の子の顔を確認する・・・。
去年会った時より更に大人っぽくなった我が親友、アンジェちゃんだ!。
「わぁぁ!、アンジェちゃん大丈夫?・・・なわけないよね」
「ぐしゅっ・・・ひっく・・・ぐすっ」
「アンジェちゃんごめん、でも急に後ろから抱きつかれたら誰だって驚いて締め落とすよ?」
僕は目覚めて泣き出したアンジェちゃんの頭を撫でながら言った。
「そんな事するのはシーアちゃんだけよ・・・」
マダムが呆れたような顔で僕を見る・・・。
「久しぶりに会えたから驚かせようと思ったの・・・それなのに酷い・・・」
「アンジェちゃんが元気そうで嬉しいよ」
「・・・私、明日からこのお店で働かせてもらう事になったんだぁ」
1年遅れたけれど店員になれたようだ・・・それなら何かお祝いしないと・・・。
「そうなんだ・・・そしたら次のお休みの日には一緒にお買い物に行こう」
「うん・・・楽しみ」
「それでね、これからはトリスさんと2人暮らしなの」
「大変そうだねー」
トリスさんもサウスウッド領から戻っているそうだ。
スタン君との文通はこれまで10回を軽く超えている、僕の手紙と一緒にサウスウッド家に送られたからトリスさんの手元にも届いている筈だ。
スタン君はトリスさんが王都に戻ってきたら結婚を申し込むようだ。
僕に婚約指輪を作って欲しいと少し前に依頼されたから銀の合金を使って今の僕に作れる最高のものを格安で仕上げた。
本当なら10倍の値段でも売れただろう、でもスタン君にはお世話になっているし幸せになってもらいたい。
読んでいただきありがとうございます。
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