020 - あなたとまじわりたいっ! -
020 - あなたとまじわりたいっ! -
見つめ合っている2人を放置してアンジェちゃんの案内でお屋敷の中を歩く、僕とスタン君には2階の客室が用意されてるらしい、もちろんスタン君とは別々のお部屋だ。
4階建てのお城のようなお屋敷は湖に面していて客室からは壮大な景色が見えた。
「凄い眺めだねー」
「うん、私もここに来た日にはお部屋からずっと景色を眺めてたんだぁ」
窓を開けているからアンジェちゃんの長くてサラサラの髪が風に靡いていてとても綺麗だ、思わず見惚れてしまう。
「ねぇアンジェちゃん」
「ん?」
僕の呼びかけでアンジェちゃんがこちらを見た。
「後悔してないの?」
「・・・してないよ、今の私は自由だから!、心配なのは謹慎が明けてからだよ、自分でお金を稼がなきゃいけないし」
陛下から下級貴族の爵位を貰えてもお金は稼がないといけないのか・・・。
「ジュワイヨさんのところで働くんだよね?」
「出発する前に1年遅れてもいいかってトリスさんがお店に行って確認してくれたの、大丈夫みたい」
マダムはアンジェちゃんを気に入ってたみたいだし、断られる可能性は低いかな。
翌日は朝からアンジェちゃんとお散歩をする、お屋敷を出てしばらく歩くと湖へ続く遊歩道が整備されているから快適だ.
護衛の2人はお互い見つめ合いながら僕達の後ろを無言でついて来ている。
これで護衛の仕事ができているのか不安になるけれどお屋敷の周りは辺境を守る屈強な騎士が警備しているらしいから安全だと思いたい。
ばさばさっ!
「うわぁっ!」
「きゃっ!」
僕達の目の前に突然大きな鳥が降りてきた、男みたいに叫んだのが僕で女の子みたいに悲鳴をあげたのがアンジェちゃんだ。
同時に後ろに居た護衛の2人が剣を抜いて動く、速い!。
幸い鳥は護衛の2人の殺気に驚いて飛び立ったのだけど・・・。
「・・・い・・・いい動きですね・・・素晴らしい」
ぽっ・・・
「スタン様こそ・・・あ・・・あのっ・・・かっこいいですっ!」
ぽぽっ・・・
顔を赤くして見つめ合う2人、アンジェちゃんは僕の隣で「いいなぁ・・・」って呟いてるし!。
「僕達は何を見せられてるんだろ・・・」
「あの鳥はここの庭師のおじさんがご飯をあげてる子だと思う、大きいけど大人しいって・・・」
「そうなんだ・・・でも急に降りて来たらびっくりするよね」
もうすぐ朝食の時間だから僕達は引き返してお屋敷に戻った。
「では、全力で」
「望むところですっ!」
キンッ・・・
キンキンキンキンッ!
ずしゃぁぁ!
「ふっ!」
しゅっ!
キンキンキンッ!
ざっ!
「ふぅ・・・お見事」
「て・・・手加減されたのではないですかっ!」
「ふふっ・・・貴女がとても美しいのでつい見惚れておりました」
「なぁっ!」
剣をスタン君の首筋に突き付けたままのトリスさんに一瞬の隙ができた。
ざっ!
足払いをされてトリスさんが転ぶ。
どすっ!
「ひゃぁ!」
素早い動きで馬乗りになりトリスさんの胸に剣を突き付けるスタン君、お互い顔が近い!。
「勝負あり・・・でしょうか?」
「ひっ・・・ひゅっ・・・」
フルフル・・・
「あぅあぅ・・・」
「スタン君早く離れて!、トリスさんもう限界っぽい!」
きゅぅ・・・
がくっ・・・
僕が叫ぶのと同時にトリスさんが意識を手放した・・・どうやら刺激が強過ぎたようだ。
「ベアトリスさんっ!、大丈夫ですか!・・・もしかしてどこか痛くしてしまったのか・・・」
「違うと思うよ・・・」
気絶したトリスさんを抱えて取り乱すスタン君を見てアンジェちゃんがポツリと呟いた。
・・・
僕達は辺境を守るサウスウッド騎士団の演習場でトリスさんとスタン君の模擬戦を見ていた。
もちろん武器は刃を落とした練習用の鉄剣だ。
スタン君は今朝のトリスさんの動きを見て剣を交えたいと言い出したのだ。
「あ・・・貴女と交わりたいっ!」
「「「え?・・・」」」
突然のスタン君の言葉に全員が固まった、トリスさんなんて両手で顔を覆って取り乱してるし!。
「ひぃ・・・待って下さいスタン様・・・あのっ・・・私、まだ心の準備が・・・こういった事は両家の当主を交えてお話を・・・」
もじもじっ・・・
「い・・・いえ!、緊張して誤解を!、今のは剣を交えたいという意味でっ・・・」
「へ・・・」
耳まで赤くして誤解を解くスタン君と勘違いだと知って燃え尽きたみたいになったトリスさん・・・。
そして模擬戦がが始まりお互い引き分けた後の3回戦で前述の事故が起き、トリスさんが気絶してしまったのだ。
「・・・これをあと9日も見せられるのかぁ」
「そうだねー、楽しいねー」
また思った事が言葉に出ていたようだ、アンジェちゃんはやけに楽しそうだけど・・・。
スタン君は医務室に連れて行くと言ってトリスさんをお姫様抱っこして立ち上がる、こんな素敵な場面なのに気絶しているトリスさん・・・後で教えてあげよう。
それから・・・抱き上げる時、スタン君がさりげなくトリスさんの匂いを嗅いでいたのを僕は見逃さなかった。
・・・
この土地に来て3日経った、僕達はサウスウッド家でとても歓迎されている。
料理は森に出る野生動物を使っているらしく新鮮でどれも美味しい、川が近くにあるから魚料理もよくテーブルに並んだ。
今日の夕食は牛っぽいお肉に甘酸っぱいフルーツのソースがかかっているステーキ、野菜の沢山入ったスープとふかふかのパンだ。
「料理が美味しいからここに長く居たら太っちゃうね」
僕の言葉を聞いてアンジェちゃんの隣でお肉をモリモリ食べていたトリスさんの手が止まった。
このお家では僕達はお客様だ、主人や護衛の区別なくスタン君達も同じテーブルを囲んでで食事をしている、もちろん当主様夫妻やご子息も一緒だ。
フルフル・・・
「アンジェちゃん、私もしかして太った?」
アンジェちゃんに尋ねるトリスさんの声は震えている。
「トリスちゃんは太ってないよ」
お肉を上品にナイフで切り分けながらアンジェちゃんが答える。
「とっ!・・・トリスさんはぁ!、と・・・とてもお綺麗ですぅ!」
唐突にスタン君が立ち上がって叫んだ、相変わらず挙動不審だ。
それを聞いて顔を真っ赤にするトリスさん・・・食堂に居る全員が生暖かい目で見守っている。
「ふふっ・・・楽しいな」
アンジェちゃんがポツリと呟いて肉汁の滴るお肉を頬張った。
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