019 - さうすうっど -
019 - さうすうっど -
ざわざわ・・・
わいわい・・・
「さぁ皆さんお食事に行きますわよ!」
「「「はい!、ヌコーニ様!」」」
お昼になり僕達は学園の食堂に向かっている、現在のヌコーニ様と愉快な仲間達は全部で10人だ。
ヌコーニ様と僕、最後まで残っていた取巻き令嬢5人と婚約破棄事件後に戻ってきた初期取巻き3人組・・・。
その様子を少し離れて眺める女の子達が居る、駄聖女に寝返った令嬢、家の命令で仕方なく距離を置いた娘・・・理由は様々だけど一度失った信用は簡単には戻らないだろう。
「あ・・・ヌコーニ姉様!」
とたとたっ!・・・
先に食堂に来ていたアポロ殿下がヌコーニ様に気付いて駆け寄って来る。
まるで子犬みたいで可愛いな・・・殿下の取巻きは3人、どの子もタイプは違うものの美少年揃いだ、少し離れた席からこちらを見ている。
僕達も場の空気を読んで殿下の取巻き3人組の近くに場所を確保した、一緒に2人のイチャイチャを鑑賞しながら食事をするのだ。
「え!、アメリア・・・さん、女の子なの?」
ゴリーネさんが目を見開いて驚いている、僕も男の子だと思ってたよ・・・。
アポロ殿下の取巻き3人組の一人、短髪黒髪の子・・・アメリアさんは女の子だったようだ。
「あはは・・・実は兄が3人居て僕だけが女の子なのです、両親からはもっと女の子らしくしろって言われてます」
わぁ、僕っ子だ・・・人の事は言えないけど・・・。
「でも制服は男の子用だよね」
「はい、この姿だと女装してる男の子にしか見えなくて・・・」
確かに外見は男の子にしか見えない、でもよく見るとまつ毛は長いし唇はプルンとしていて可愛らしい。
「もしかして心は男の子とか?」
アメリアちゃんに聞いてみた、僕と同類かもしれない。
「どうでしょう・・・僕は男の子も女の子も大好きですよ(ニコッ)」
僕を含む女性陣が全員顔を覆って悶えた、こいつ・・・いやこの子はとんでもない魔性を秘めている!、あと3年もすれば男女関係なくモテまくるだろう。
がしっ!
突然僕の腕を「メガネさん」ことアーシアさんが掴んだ、彼女の方を見るともう片方の手でヌコーニ様の方を指差している。
「わぁ・・・」
ヌコーニ様とアポロ殿下がいちゃついていた、デザートを食べさせ合ってるしヌコーニ様が殿下の口元をハンカチで拭いている。
「いいなぁ・・・」
羨ましそうに「ぽっちゃりさん」ことルシンダさんが呟いている。
かっこいい婚約者が居るんだからルシンダさんもして貰えばいいのに・・・。
「さて、ヌコーニ様達も食べ終わったようだしお昼休みも半分過ぎたから戻ろうか」
ようやく僕の学園生活に平穏な日常が戻って来た・・・。
卒業パーティの騒動から約半年が経ちアンジェちゃんからは定期的に手紙と絵が送られて来るようになった。
僕が大自然に囲まれた景色を見たいと手紙に書いたからだと思う、その絵はとても素人が書いたようには見えなかったし回を重ねる度に上手くなっていった。
僕は毎回凄い上手い素晴らしいと誉めていた、実はお屋敷の近くに年老いた画家が住んでいて、そのお爺さんに直接手解きを受けていたのだとか。
本人は何もない田舎だから練習時間は沢山あるの・・・と言っているけどアンジェちゃんには絵の才能があると思う。
今年の長期休暇を使って僕はアンジェちゃんの居るサウスウッド領へ遊びに行く事にした、もちろん事前に陛下から許可を貰っている。
(息子は殆ど手紙をくれないから心配だ、向こうに行って様子を探って来てくれないか・・・出発前には何かあれば手紙をくれと言ってあったのにあいつときたら・・・以下略・・・話は変わるが昔から息子は雨が降ると体調を崩しやすくて・・・以下略・・・)
などと陛下からは長文の手紙が来た、僕は手紙をそっと閉じて見なかった事にする。
サウスウッド旅行に行く事をヌコーニ様に伝えると私も行きたい連れて行けと言う、でもアポロ殿下とのお茶会やお妃教育があるのでゴンザレス様から却下されて泣いていた。
「旅行は危ないわ!」
自分が行けないと分かったら今度は僕に行くなと言うヌコーニ様・・・。
「僕は強いから大丈夫だよ」
懐から出したヌンチャクを振り回して説得する。
「一人は絶対ダメ!、スタン君が一緒に行きたいって言っているわ!」
急に話を振られて慌てるスタン君・・・一応ヌコーニ様は僕の事を心配してくれているようだ。
・・・という事があって今僕はスタン君と一緒に南行きの魔導列車に乗っている。
この国は結構な田舎まで魔導列車の路線が整備されているのだ、もちろん列車の走ってないところの移動は馬車になる。
こととん・・・たたん・・・がたたた・・・
ふぃぃぃぃん・・・
「わぁ・・・いい景色だねー」
「そうですねー」
「・・・」
「・・・」
しゅおぉぉぉぉ・・・
がたたん・・・こととん・・・ととん・・・
ててん・・・とととん・・・
「スタン君、お茶いる?」
「いえ、お気になさらず」
「・・・」
「・・・」
僕は異世界転生して初めて見る知らない街の景色を眺めながら、学園での姿とはまるで違う渋いスーツを着たスタン君に話し掛けている。
長期休暇の間に無精髭も伸び、とてもワイルドで男臭さが増している、正直ハリウッドスターと言ってもいい程にかっこいい。
でも・・・会話が続かなくて気まずいよ!。
そんな事を思っていたのも初日まで、2日目を過ぎる頃にはお互いの気まずさは無くなった、僕は景色を楽ししみつつ本を読み、スタン君は時々僕に話を振る。
昔あの村には仕事で行った、今見えている山の向こうには湖があって・・・そんな説明を聞きながら僕は4泊5日の列車の旅を終えた。
「ここからは馬車で半日かぁ」
「では私は定期運行の馬車を見つけて・・・」
「失礼します、シーア・ユーノスお嬢様でいらっしゃいますか?」
気配も無く執事服の男が僕の背後に立っている、馬車を探して僕から離れようとしていたスタン君は腰の刃物に手を掛けて戻って来た。
「驚かせてしまったようで申し訳ありません、私はサウスウッド家に仕えております執事のセバスチャンと申します」
執事といえばセバスチャン、遂に出て来たかセバスチャン!。
「あ、はい、僕・・・私はシーア・ユーノスです、こちらはスタン・ラリアット君、護衛をしてもらっています」
「馬車を用意しております、こちらへ」
アンジェちゃんが馬車を用意してくれていたようだ。
「わぁい!、シーアちゃんだぁ!」
がしっ!
サウスウッド家のお屋敷に到着すると玄関から飛び出してきたアンジェちゃんに抱き付かれた、少し身長が伸びたようで僕は見上げて会話をする。
「久しぶりだねアンジェちゃん、絵に描いて送ってくれたとおりの景色でびっくりしちゃったよ」
アンジェちゃんの首には僕が卒業記念にあげた「ローゼンドロップ」が光っている、付けてくれてたんだ・・・。
お屋敷の中に案内された僕達は当主様に挨拶をした。
王国の東西南北にある辺境の地は王家の直轄地で最も信頼のおける臣下が治めているそうだ、中でもサウスウッドの当主様は国王陛下の幼馴染で親友、僕の事も陛下から聞いてよく知っていた。
「私のお部屋に案内するね、3階にあって窓から見える景色が綺麗なの」
「元気そうで安心したよ、しばらく見ない間に大人っぽくなってるし!」
普通に喋っているけれど僕の視線はアンジェちゃんの股間に向いている。
今日のアンジェちゃんは白のブラウスにグレーのロングスカート姿、どう見ても女の子だけど僕は彼女?の股間のモノが無事なのか気になって会話が頭に入って来ない。
「ふふっ、元気だよ・・・シーアちゃんも少し背が伸びた?」
そう言って柔らかく微笑むアンジェちゃんを見ていると・・・ナニが無事かなんてどうでも良く・・・は無いけど!、今は聞かないでおく事にしよう。
「お久しぶりです!、トリスさん」
アンジェちゃんのお部屋にはトリスさんが居た、護衛として一緒にサウスウッド領まで来ているのだ。
「シーアちゃん久しぶりー、田舎過ぎて驚いたで・・・」
僕に話しかけたトリスさんの言葉が途中で止まった、どうしたのかと思って顔を見ると・・・耳まで真っ赤だ、視線は僕の後ろに立っているスタン君に向けられている。
トクンッ!
僕は初めて人が恋に落ちた音を聞いた気がする・・・。
トゥンク・・・
再び恋に落ちる音がしたので僕の後ろに立っているスタン君を見ると・・・顔を赤くして物凄く挙動不審だし視線はトリスさんに釘付けだ。
2人の様子がおかしい事にアンジェちゃんも気付いた、僕より年上な事もあって事態を察し2人に席を外すようお願いする、お部屋の外で気が済むまでお話すればいいと思う・・・。
「私トリスさんがあんなになったの初めて見たよ、あの人って奥様居るの?」
人の恋話が大好きなのかアンジェちゃんは目をキラキラさせている。
「スタン君は独身だって言ってたけど・・・」
「それなら私達で2人の恋を応援しようよぉ!」
「えぇ・・・アンジェちゃんちょっと落ち着こうね」
しばらく僕とアンジェちゃんはお部屋で最近の出来事を話したり、王都の様子を伝えたり・・・楽しくお喋りをした後で扉の外をそっと覗くと・・・。
「まだ無言で見つめあってるよ!」
読んでいただきありがとうございます。
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