002 - おうりつがくえん -
002 - おうりつがくえん -
「そこの貴方!」
悲報・・・あれから2年が経ったのにヌコーニお嬢様はまだ僕の顔を覚えていた!。
貴族の子供が入る事を義務付けられている王立の学園・・・その入学式の日に僕はお嬢様に絡まれてしまったのだ。
「初めましてコヴァーン様、僕・・・いえ、私はオースター家の次女シーアと申します」
「初めましてじゃないでしょ!」
「チッ・・・」
「舌打ちされましたわぁ!」
僕の態度に怒りを露わにするお嬢様・・・その背後でヒソヒソと話をする取巻きの令嬢3人、僕は心の中で彼女達を「メガネさん」「ぽっちゃりさん」「ゴリさん」と名付けた。
「・・・僕の楽しい学園生活終わったかも」
「は?」
「いけない、思った事が声に出ちゃったよ」
「まだ声に出ていましてよ!」
僕は取巻き3人組の「メガネさん」と「ぽっちゃりさん」を見た、2人だけなら僕一人で対処できそうだけど「ゴリさん」まで相手すると間違いなく負けるだろう。
これから僕は嬢様達に囲まれて酷い事を・・・と思って覚悟していたのに何故かヌコーニお嬢様に気に入られ取巻き令嬢その4になってしまった。
「人生何があるか分からないなぁ・・・」
退屈で無駄に長い入学式が終わり、学園の寮に戻った僕はこれからの事を考える・・・。
不本意ながらもコヴァーン家ご令嬢の取巻きになった事は家族に知られてはいけない、金に汚く欲深い両親は筆頭貴族家の財産や権力を狙って僕を都合良く使うだろう。
幸い僕は卒業するまでの6年間を学園の隣にある寮で生活するからバレずにやり過ごせそうだ。
寮生活を選んだ理由は家に居ても家族との交流は無いし息が詰まるから・・・反対されると思っていたのに両親からは簡単に許可がおりた。
僕は3人きょうだいの末っ子だ、姉、兄が居てその次が僕・・・両親の整った容姿を受け継いだ姉達と違い僕は顔の配置が少し乱れてしまったようで上の2人より若干見劣りする平凡顔。
しかも祖母の血をより強く受け継いだのか他の家族のような光り輝く金髪ではなく茶色に近い燻んだ金色だ・・・。
だからと言って虐待や兄妹間での扱いに差は無かったと思う、両親は事業にかかりっきりで子供達には無関心なのだ、何かされるよりは関わらないでくれたほうがありがたい。
幼少期は乳母や屋敷のメイドに世話をされた、両親は時々夕食に同席する程度・・・ただ居るだけの存在だった。
同じように育てられた姉や兄も僕には関心が無い、教育も家庭教師に丸投げされていた。
両親としては教育を受けさせて高く買ってくれる下級貴族か商会へ嫁に・・・僕を政略の駒、商売の道具にしようと考えているらしい、寝室で話しているのを聞いてしまったから間違い無いだろう。
だから僕の価値が突然上がるのはまずいのだ、両親には今まで通り無関心で居てもらって適当なところで家から逃げ出し田舎でのんびり平民として暮らす・・・。
これが僕の思い描いている人生設計だ。
学園の隣にある寮の部屋を出て建物の中を歩く・・・入学式がお昼前に終わったから今はお昼だ。
食堂は寮と学園の中・・・寮は朝と夜、それから休んでいる学生の昼の食事が出るようだ、中は広くて清潔、2種類のメニューから好きな方を選ぶ方式だ。
今日は上級生が学園で授業を受けているから利用している人は居なかった。
寮の敷地を抜けて学園に入る・・・庭園が広く建物まで結構歩かされた。
僕の目の前に聳える学園は王立、しかも貴族の子息が通う場所だからまるでお城のような豪華さだ。
迷いながらも学園内にある食堂に辿り着きようやく食事にありつけた。
もっもっ・・・
「美味しい」
もっもっ・・・
・・・
「シーアさん!」
僕の後ろで声が聞こえた、とても嫌な予感がする・・・。
後ろを振り向くとヌコーニ様と取巻き令嬢3人組が立っている、どうやら彼女達は食事を済ませた後のようだ。
「ここ、いいかしら?」
取巻き令嬢の一人「ゴリさん」が低い声で僕に話しかける、これは断れないやつだ。
「はい・・・どうぞ」
食事をしている僕の目の前に4人が座る、そこで見られていると凄く気まずい!。
ヌコーニ様の取巻き令嬢その4になる事は今朝誘われ嫌々ながらも承諾した、でも何でこの人はこんなに僕に拘るんだよ!。
「もしかして2年前の事を根に持ってる?」
「2年前?」
売店で買ったと思われる肉串を目の前で食べていた「ぽっちゃりさん」が僕の独り言に反応した、思った事が口に出ていたようだ!。
「いえ!、何でもないです!」
ヌコーニ様によると彼女達4人は実家の王都邸から馬車で学園に通っているようで、毎朝待ち合わせて一緒に教室に入ろうと誘われているようだ。
「わぁ・・・面倒臭い」
「何ですって?」
「いえ!、何でもありませんっ!」
また思った事が口に出ていたようだ、相手は筆頭貴族、下手な事を言って怒らせたら僕の実家が消えて無くなるかもしれない。
「毎朝寮の前に馬車で迎えに行くわ!」
「困りますっ!」
思わず僕は叫んだ、そんな事をされたら目立って仕方ないだろう!。
「どうして?、取巻きは常に一緒に行動するものでしょう?」
やはりあの時の事を根に持っていて僕に嫌がらせをしようとしてるんじゃないかこのお嬢様・・・。
結局ヌコーニ様には学園入り口の馬車乗降口で毎朝待ち合わせる事で妥協して貰った。
・・・
ざわざわ・・・
わいわい・・・
「素晴らしいですわぁヌコーニ様!」
「さすがヌコーニ様!」
「今日もお美しいですヌコーニ様!」
入学式から数日が経ちヌコーニ様の取巻きが更に増えた、10人・・・多い時には20人の令嬢を従えて学園の廊下を颯爽と歩いている姿は圧巻だ・・・。
こんな振る舞いをしても上級生に目を付けられないのはヌコーニ様が筆頭貴族家の令嬢だからだろう、下手に機嫌を損ねて家を潰されるような事になったら大変だ。
「少し早いけれど教室に戻りましょう」
「「「はいっ、ヌコーニ様!」」」
・・・正直この派手な集団には関わりたくない、僕は平穏な学園生活が送りたいのだ!。
これだけ取巻きが居るなら一人くらい抜けても大丈夫だろう・・・そう思って集団から離れようとする僕をヌコーニ様が呼び止める。
「シーアさん、どこへ行くのです?」
さりげなく離れようとしたのに何でいつも見つかるんだよ!。
「ちょっとお手洗いに・・・」
これは咄嗟に考えた嘘だ。
「先程行ったではありませんか」
ヌコーニ様は無駄に鋭いな、それなら・・・。
「いえ、お腹の調子が・・・」
ざわっ・・・
「それは大変!、皆様!、お手洗いに戻りますわよ!」
「「「はいっ!ヌコーニ様っ」」」
「わぁぁぁ、お・・・お腹痛いの治りましたぁ!」
「本当に大丈夫なのですか?、我慢していると大惨事になりますわよ」
隣に居た「ゴリさん」ことゴリーネさんが僕に声をかけてくれる、彼女は見た目と違って細やかな気遣いのできる優しい女の子だ、本気で僕の事を心配してくれているようで心が痛い。
「何か悪いものでも食べたのではなくて?、拾い食いはするなとあれほど・・・」
「してないよ!」
続いて「メガネさん」ことアーシアさんがしれっと酷い事を言う、毒舌なだけで本人に悪気は無いし、3人の中では一番僕と仲が良かったりする。
「食べ過ぎね」
「違うし!」
食堂の売店で買った肉串を片手に持った「ぽっちゃりさん」ことルシンダさんはいつも通り・・・常に何かを食べている。
この3人に僕を加えた4人がヌコーニ様の初期から居る取巻きだ、周りに侍らせる令嬢を選別するのも4人の役目だったりする。
「・・・皆さん心配をかけてごめんなさい、お手洗いの前で待たれていると出るものも出ないので先に教室に戻っていて貰えますか?」
まだ僕の学園生活は始まったばかりだ・・・。
読んでいただきありがとうございます。
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