018 - びけいのおねしょたはとうといなぁ -
018 - びけいのおねしょたはとうといなぁ -
混沌とした卒業パーティが終わり学園は10日程の短期休暇に入った、もうすぐ僕が学園に入ってちょうど3年・・・14歳になる。
朝起きて身支度を整え、朝食を食べるために食堂へ向かう・・・僕にはヌコーニ様のような専属メイドは居ない、自分で身支度ができるからだ。
下級貴族でも裕福なお家は一人一人に専属メイドが付いているらしい、ユーノス家はとても裕福で、義両親には専属の人が居るけれど僕はいらないと言って丁重に断った。
養子縁組でユーノス家に籍は置いているし義両親も本当の両親とは比較にならないくらい僕を可愛がってくれている、でも僕達はあくまで契約上の親子だし僕はこの家の居候だ。
できれば将来は自立して生活したいという想いが強いのだ。
もっもっ・・・
「美味しい・・・」
今朝は僕の好きな肉挟みパンと香草のスープだ。
義両親は多忙なようで既に執務室でお仕事をしていてここには居ない、でも夕食はできるだけ一緒に食べるようお互いに調整している。
「お嬢様、お手紙が届いております」
食事が終わって紅茶を飲んでいるとユーノス家の執事、プリジェールさんが僕にいくつかの手紙を持ってきた。
プリジェールさんは30代前半くらい、背が高くてイケメンだ、まるでヴィジュアル系のバンドで歌ってそうな妖しい雰囲気を纏っている。
コヴァーン家のジーノさんとは別の方向性だけど2人ともキャラが濃い・・・。
「ありがとうございます」
差出人を見ると初期取り巻き3人組の一人、ゴリーネさんとジュワイヨさんの宝飾店関係のお手紙、それから・・・陛下だ。
僕は陛下からのお手紙を開封する・・・。
「アンジェちゃん、昨日出発したんだ・・・」
そこには息子が迷惑をかけたという謝罪の言葉と、謹慎先の領地へ昨日の朝出発した旨が書かれていた。
・・・
結局アンジェちゃんは騒動を起こした罰として1年間、王国南部の領地で謹慎する事になった。
公式にはフェリック殿下本人の強い希望により王位継承権を放棄、新しい王太子は第二王子のアポロ殿下になる事が国民に向けて発表された。
実質的な廃嫡扱い・・・でも王族としての籍は辛うじて残されたらしい。
国王陛下からは謹慎が終われば下級貴族の爵位をやるから好きにしろ(訳=自由に暮らしていいよ)と言われたようだ。
こうして・・・先日までお喋りしていたアンジェちゃんは僕の前から姿を消した。
「えーと、不祥事を起こしたり、罪を犯して廃嫡になった王族は・・・」
僕は今、王都の図書館で本を読んでいる、アンジェちゃんの処遇が気になったから調べているのだ。
「重罪の場合は処刑、軽い場合でも去勢した上での追放処分・・・うわぁ・・・」
確かに廃嫡になった王族が外で子孫を残すと厄介な事になる、それを防ぐ為に決められているらしい、去勢の方法は僕の前世と違って過激だ。
「物理的な方法として男性の場合はまるっと全部切り落とし、女性は手術による摘出かぁ・・・」
この方法は既に技術が確立されていて安全で傷口も目立たなくなるらしい、他に重い犯罪者に使われる魔法的な方法もあった、下腹部に魔法刻印を施してアレしようとすると全身に激痛が・・・。
「両方ともえげつないなぁ・・・でも正式に廃嫡になった訳じゃないからアンジェちゃんのお宝は無事な可能性が・・・」
僕は本を元あった場所に返却して新聞を手に取る。
「ニードロップ家当主の処刑が執り行われ、後継は遠縁の・・・」
卒業パーティの後、ゴンザレス様の反撃が始まったのだ。
ニードロップ家当主・・・貿易大臣であるフロントチョーク・ニードロップの数々の犯罪が証拠付きで明らかにされた。
貿易大臣の立場を利用した違法薬物の取引、人身売買、武器密輸、脱税、贈収賄、敵国への情報漏洩・・・しかもその罪を政敵であるコヴァーン家に全て被せようとしていた。
この事件がゴンザレス様と国王陛下によって公表され、コヴァーン家に囁かれていた数々の疑惑は払拭された。
当主フロントチョークは裁判にかけられて有罪、共謀していた妻と後継の子息も捕まり死刑となる予定だ。
残る唯一の家族・・・養子のホリー・ニードロップは仮にも聖女であったため処刑にはならず、教会での終身奉仕を命じられた。
駄聖女が拘束された時、自分はニードロップ派閥の下級貴族ホリー・ドロップキックで、ニードロップ家の当主に雇われ王太子を籠絡すれば王妃になれると唆された・・・などと意味不明な供述をしていたらしい。
「新聞によると・・・ドロップキック家の三女であるホリーは2年半前に病死し、家族から死亡届が出ている為、聖女ホリー・ニードロップとは別人と思われる・・・か」
ニードロップ家の後ろ盾が無くなって身柄は教会預かり、性格がとても悪いのに加えて今までの行いから教会関係者には嫌われていると聞いている、もちろん学園は退学となった。
しかも教会に軟禁状態で外には出られず一生タダ働き・・・ちょっと可哀想だけど自業自得だね。
短期休暇が終わり学園に新入生が入ってきた。
「ごきげんよう!、ヌコーニ姉様、シーア姉様」
馬車から降りた僕達に挨拶をしたのはアポロ殿下だ、新品の制服がよく似合っている。
アンジェちゃんとの婚約破棄の後、王家とコヴァーン家・・・両家の話し合いの結果ヌコーニ様とアポロ殿下の婚約が成立、もちろん当事者2人の意思も尊重されている。
アポロ殿下はヌコーニ様にとても懐いていて「姉様」呼びだ、何故か僕もシーア姉様と呼ばれている。
「「ごきげんよう、アポロ殿下」」
殿下とヌコーニ様は手を繋ぎ仲良く学園の廊下を歩く、まだ身長は殿下が頭2つほど小さいけれどすぐに追い越すだろう。
「ふふっ、美形のおねショタは尊いなぁ・・・」
僕は2人の後ろを歩きながら独り言を呟いた。
「お嬢様、お手紙が届いております」
「ひゃぁ!、びっくりしたぁ!」
廊下を歩いているとプリジェールさんに呼び止められた、気配もなく僕の後ろに居るのはやめてほしい!。
この人は顔がいいのに加えて声もいい、でも油断していると血を吸われそうな妖しい雰囲気があってちょっと怖いのだ。
「僕に?・・・ありがとう」
学園が始まって10日ほど経ったある日、僕に手紙が届いた、差出人を見るとアンジェちゃんだ。
「謹慎先の領地に着いたのかな?」
サウスウッドと呼ばれている南部の領地は自然が豊かで屋敷のすぐ側に森や湖が広がっているそうだ、ちなみに僕は生まれてから一度も王都から出た事が無い。
大自然に囲まれた生活が羨ましいと手紙に書いて返事を出そう。
国王陛下とは今も変わらず文通が続いていて最近は人生相談っぽい内容になっている、僕はカウンセラーではないのでいい加減にして欲しい。
それから・・・ヌコーニ様とアポロ殿下のお茶会にも毎回呼ばれていてアクセサリーの販売も好調だ、マダムからは増産を頼まれているからしばらくは忙しい日々が続きそうだ。
読んでいただきありがとうございます。
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