014 - ぎやぁぁぁ! -
014 - ぎやぁぁぁ! -
殿下の件から5日経った、今日は午後からヌコーニ様とお茶会だ。
場所はコヴァーン家の中庭にある東屋・・・天気が良いので風が気持ちいい、お茶菓子の乗ったカートの隣にはポーラさんが控えている。
そこで僕はとてつもなく不穏な話を聞いた。
「定例のお茶会で3日前に王城に行ってたのよ、そこでシーアさんの話が出て色々と聞かれたわ、今まで名前も出なかったのに不思議よね」
「げふっ!、えふっ!」
お茶を鼻から吹き出さなかった僕を褒めて欲しい!。
「だ・・・誰に?」
「王太子殿下とのお茶会なのだから殿下に決まってるじゃない、そこには駄聖女と第二王子殿下も居たけど何で急にシーアさんに興味を持ったのかしら・・・とりあえず頭が良くて私とは仲良しだって答えておいたわ」
「・・・他には何か聞かれた?」
「確か・・・口は硬いか・・・とか、約束を守る人間か?みたいな事は聞かれたわね、口は硬いけど時々ポロッと考えている事が言葉に出るから油断ならないわって・・・あら、顔色が悪いわね」
僕の素行を調べられている!。
ヌコーニ様とのお茶会の前に僕は街で殿下・・・アンジェちゃんに2回会っている、昨日と今朝だ。
昨日は街に出る用事があったから路地裏の食堂でお昼を食べていた、もちろん町娘のような服を着て貴族だと分からないように偽装してる。
背後からの視線を感じて振り向くと高価そうな服を着たアンジェちゃんとトリスさんが居た。
家族で営業しているような古びた小さな食堂・・・2人は席に座って居心地が悪そうにこちらを見ている。
アンジェちゃん達はこんなに香ばしい・・・いや、渋い佇まいの食堂に入るのは初めてのようだ。
この食堂には独自のルールがあって客の方から店のおじさんを呼ばないと注文を取りに来ない、その代わり味は絶品なのだ。
「あの、ご一緒しても?」
いつまで経っても店員が注文を聞きに来ないのでアンジェちゃんが涙目になっているし周りからも浮いている、放置するのも可哀想だったので仕方なく声をかけた。
こくり・・・
体格のいい常連客のおじさん達に囲まれて今にも泣きそうなアンジェちゃんが頷く。
店のおじさんを呼んで人気の肉串と香草のスープを頼んであげたら美味しいと言って感謝された。
その後は僕と一緒に食事をしてそのまま別れた・・・2人の目的が全く分からない。
2回目は今朝だ、ヌコーニ様とのお茶会の前に欲しい本があったので大通りの本屋に寄った。
目的の本を見つけて買おうとしたら本棚の隙間からアンジェちゃんがじっと僕を見ていて思わず叫んだ。
叫び声をあげた僕に注目が集まるのを見てアンジェちゃんとトリスさんは逃げるように本屋から去って行った・・・。
・・・
「あ、言い忘れていたのだけど、王太子殿下が次のお茶会からはシーアさんを連れて来るようにって・・・」
「ぎやぁぁぁ!」
どうやら僕は殿下に目を付けられてしまったようだ・・・。
ちらっ・・・
ささっ・・・
とてとて・・・
ちらっ・・・
「あーもぅ!、何なの!」
あれから少し経つのだけど僕はアンジェちゃんに付き纏われている、もちろんトリスさんも一緒だ、本当に何なの?、暇なの?、ストーカーなの?、他にやる事無いの?。
今日も王都の大通りを歩いている僕の後ろをついて来ているのだ。
だっ!・・・
僕は通りから外れて狭い路地に駆け込んだ、慌てて追いかけて来るストーカー2人組・・・。
「僕にお話があるのなら聞きますよ」
2つほど路地を曲がったところで立ち止まり、僕は追い付いた2人に話しかけた。
話し合いの場は再び「ジュワイヨの宝飾店」の中にある商談室、マダムにお願いすると快く場所を提供してくれた。
ここは大金が動く取引をする事もあるので防音がしっかりしているのだ。
「それで、僕の後を尾けて何がしたいのですか?」
「わっ・・・私がお休みの日に女装している事を黙っていて欲しくて」
「黙ってるって約束したじゃないですか、信じられないのならきちんと書類で契約を結びます?」
既にアンジェちゃんは涙目だ、学園で取巻きを従え堂々と振舞う王太子殿下どこ行った?。
「それにヌコーニ様との定例お茶会に僕も出ろって言ってましたよね、2人の婚約に関わる政略に僕を巻き込まないで欲しいのですが!」
フルフル・・・
ちょっと強く言いすぎたようだ、アンジェちゃんが震え出したよ。
「私からご説明させて頂きます・・・実は・・・」
・・・
トリスさんの説明は色々と言えない事もあるようで、省略し過ぎて何が目的なのか、何がしたいのか全然分からなかった。
でも何とか理解できた内容をまとめると・・・。
アンジェちゃんはヌコーニ様との婚約を解消したいそうだ、そっちから申し込んでおいて随分勝手ですねと言ったら泣き出した。
どうやら複雑な事情があるようで、あまり深入りすると消されるかもしれないから僕はあえて詮索しない事にする。
学園で纏わり付いて来る駄聖女を利用して婚約解消できるかもと考えたアンジェちゃんだったけど、あの駄聖女の暴走は想定外で正直持て余している。
仲が良さそうに見えたのはアンジェちゃんの演技らしい。
それなら突き放せばいいのに色々と政治的な圧力があって難しい、このままでは駄聖女と結婚させられてしまう、そこで秘密を知っている僕を駄聖女の代わりに側に置いて・・・。
「お断りしてもいいですか?、それって他の人が見たら僕がヌコーニ様の婚約者を寝取ったみたいになるじゃないですか!」
「寝取る・・・」
アンジェちゃんが顔を真っ赤にして俯いた、何だよこの可愛い生き物!。
「うりゅ・・・うっく・・・ひっく」
また泣き出したよ!。
「泣かないでアンジェちゃん」
トリスさんがアンジェちゃんを慰めながら僕を見る、僕が泣かしたみたいになってるし!。
「ヌコーニ様に理由を話して協力して貰えばいいじゃないですか、仮にも婚約者でしょ」
「ヌコーニさんのお家も怒らせるだろうし、婚約を覆すのは陛下の意向に背いた事になって罰せられちゃう可能性が・・・」
「ちょっと待って!、その話だと協力したら僕も罰せられるよね!」
フルフル・・・
アンジェちゃんはまだ震えている、可哀想だけど僕は陛下に罰せられるのは絶対嫌だ、どうにかして上手く断れないだろうか・・・。
「何でそんな事を考え付いたんですか?」
「私の秘密を知っている人は殆ど居なくて・・・あの聖女と違ってシーアさんとなら一緒にいても楽しいだろうし、お友達になれるかなって・・・」
涙と鼻水でぐずぐずになっているアンジェちゃんから友達の申し込みをされてしまった!。
「駄聖女の代わりは絶っ対に無理だし王太子殿下の姿の時も僕に近付かないで欲しいです!」
僕の言葉にアンジェちゃんが絶望的な表情をする。
「・・・でもアンジェちゃんの姿の時は遊んであげてもいいですよ」
読んでいただきありがとうございます。
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