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少女装鎧ジノグラフ  作者: 八波草三郎
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得るもの失うもの(1)

「とんだ素人がしゃしゃり出てきやがったもんだ」

 長剣を不気味に揺らしながら近づいてくる盗賊戦士。

「てめぇ、装鎧戦士(エルフィンアーマー)同士の戦い方をまったく知らねえんじゃないか。剣の一本も持たずにどうにかなると思ってんのか?」


 確かに変身後の正輝は武器を何一つ帯びていない。腰に下げていたナイフも彼が服の一部と認識していたがために変身外装の一部と化してしまっている。それを問題だとは思っていなかった。


装鎧戦士(エルフィンアーマー)ってのはなぁ、そのパワーに見合う強度の剣と、剣身に魔法をまとわせなきゃ斬ることもできねえんだ。そいつを今からてめぇの身体に教え込んでやる。実践でな!」

「解説ご苦労さん。よく理解した」

「どこまでもふざけやがってぇ!」


 盗賊団だけあって剣の扱いは格闘よりマシなようである。戦士のパワーで振りまわされる剣身はすさまじい風切音を放って空間を斬り裂いた。

 躱したつもりだったが、力だけで切り返した一撃が下から襲い掛かる。受けた左腕が火花を散らした。プロテクタに切れ込みが入ってしまっている。


「ヤベ。ごめん」

(この程度構いません)

「でもさ」

(マサキが気に病むのであれば精気をくだされば)


 切れ込みを意識して精気を送る。すると、見る間に傷口が修復されていった。自分に回復能力もあるとわかって安堵する。


「回復しただと? てめぇ、どんな魔法を使いやがった」

「なあに、ちょっとオヤツをあげただけさ」

「わけわからんことを!」


 無数とも思える剣閃をくり出してくる盗賊。しかも、それに頭目戦士まで加わってきた。相手の間合いに立ち止まっていると、避けきれないダメージが全身に切れ込みとなって表れてしまう。


「お前がどれだけ器用でも精気に限界があるだろう。このまま押し切ってやる」

「はっはぁ、そっちのあんたは傷の治し方を知ってるとみえる」

「当然だ。俺も昔は戦場働きをする戦士ギルドの一員だった。装鎧戦士(エルフィンアーマー)に話を聞いたことぐらいはある」


 念動をまとわせてあるだけあって、彼が軽く小突いただけで長剣は折れてくれない。ただし、逸らして離れることはできる。その間にすべての傷を回復させた。


「お前、どれほどの精気を」

「この程度はね」

「まあいい。切らすまで攻めつづければいい」


 徒党を組んでいるだけあって連携もそれなり。ただ、身を躱しつづけるだけではどうにもなりそうにない。


(マサキ、そのへんの剣を拾ってください。魔法強化すれば多少はもってくれます)

「剣ね。まあ、心配すんな」

(でも、このままでは)


 エメルキアはジリ貧だと思っている。しかし、正輝は違った。以前思いついた奥の手があるからだ。


「サイコブレード」


 軽く握った右手から、左手で立てた二本指を空間に這わせる。そこから念動力(サイコキネシス)が物質化して伸びていった。右手の中にも柄の感触が生まれる。黄色に鈍く光る剣身。長剣と呼ぶに十分な長さを備えていた。


「なんだと?」

「な、なんなんだよ、そりゃ!」


 盗賊たちは見たことのない武器におののく。それは正輝のパートナーであるエメルキアにしても同じことだった。


(マサキ、それは?)

「前にルキが魔法の放出口だって言ったパーツがあるだろ? この黄色に光る部分」

 ボディの一部を示す。

「これを応用すれば武器になると思った。俺のイメージどおりに成形してやればね」

(そんなことまで)

「しかも、こいつはイメージに合わせた強度を持たせられる。ただの剣に念動をまとわせただけのものとは桁違いだぜ」


 少女の放つ意識は盗賊たちには聞こえていない。しかし、威圧するには十分な内容が伝わったはずである。


「はったりだ!」

「試してみれば?」


 盗賊戦士が斬り掛かってくる。その一撃をサイコブレードで弾いて、返す一閃で真横から剣の腹を叩いた。抵抗もなく振り抜かれ、長剣は真っ二つに斬られていた。


「ば、馬鹿な!」

「別になんてことないだろ?」


 サイコブレード自体は念動(サイコキネシス)能力が高ければ形成できよう。ただし、ジノグラフの人間はそういった武器を使うヒーローを知らない。イメージできないものは形成展開できないのである。


「この!」

「甘いぜ」


 頭目戦士の振りおろした剣撃は避けつつ軽く叩いて逸らせる。地面に食い込んだところをひと払いで斬りおとした。二人とも武器を失ってしまう。


「なんてことしやがる! これほどの業物を探すのは大変だったんだぞ! 村の襲撃で試して、これから手広く襲ってまわる予定だったのに!」

「そんな悪巧みはここでお終いさ。俺の耳に入ったところであんたらの運命は決まってたんだよ」

「格好つけんな!」


 図星である。関与せずに解決するなら別に構わないと思っていたが、盗賊団が装鎧少女(エルフィン)まで連れていた所為で堪忍できなくなったのである。壊滅させて少女たちを解放しなければ収まらない。


「なあ、もう勝負ついてんだから降参しろ。大人しく装鎧少女(エルフィン)たちをこっちに渡せばこれ以上痛い思いをさせるつもりはない。あんたが言ったとおり、俺は国とは関係ないんだ」

「そんな理屈が通用すると思うか! 装鎧少女(エルフィン)を使えなくなったら俺たちはもう終わりなんだよ!」

「強情だな」


(とはいえ、どうしたもんか)


 正輝はこのあとの処理を迷っていた。

次回『得るもの失うもの(2)』 (斬り殺してください)

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