ライダーとは(3)
変身した正輝に十人近くの賊が一斉に襲い掛かる。しかも、手にした長剣をめいめいに振りかざしながら。エメルキアと一心同体の彼にはそれさえ怖ろしさもない。
「どうせ敵わないんだから引っ込んでろ!」
全周囲に念動力を放つ。剣が届く距離に近づけもしない。正輝を中心に弾け飛んだかと思うと、通りの家々の壁に激突して気絶する。
「引っ込んでるのはてめぇのほうだ」
「くおっ!」
突如として横殴りの衝撃。いや、感知はしていた。変身した頭目が飛び蹴りで狙ってきていたのだ。感じてはいたのに、変身後の感覚に慣れていない正輝が反応できていなかっただけ。
「痛て。なるほど、痛みはこっちに来てる」
(ごめんなさい。こればかりはどうにも)
「当然だ。感覚器が俺にまわってきてるんだから痛覚だってこっち持ち。それよりも君の身体を傷つけないように気をつけないとな」
(変換されているので、よほど大きな喪失がなければ身体に問題はでません)
融合部分を大きく欠損したりしなければ大丈夫なようだ。もちろん、そんなことになれば彼は痛いではすまないだろう。
「さっきからなにをごちゃごちゃと」
「俺はあんたと違って装鎧少女と相談しながら戦ってるからな。親密度が違うんだよ」
「わけのわからんことを抜かしやがって」
エメルキアは契りを結ぶことで経路が開くと言った。ただの想像でしかないが、装鎧少女との親密度は変身時に引きだせる能力の高さと比例するのではないかと思っている。
「取り締まりに来た王国の装鎧戦士じゃねえな? 妙な格好しやがって」
巨体をアーマーをで鎧った頭目が歩いてくる。
「違うな。俺は流しのライダー……、装鎧戦士さ。あんたみたいな悪人を成敗するのが趣味のな」
「とことんふざけてるな」
「ふざけてなんかない。実際、ここで村を助けたところで一文の得もないし」
唸りを上げて拳が迫る。ウェイト差でいくと絶対に受けとめられない一撃。それなのに、正輝は当然のように止められる。変身のバフ効果は想像を遥かに超えていた。
「あんたらがパワー任せに攻めてくるのなんか一つも効かないぜ?」
「ぐぅ! 一体なにもんだ」
受けとめた拳をひねりながら引き込む。頭目は体勢を崩されて、ただ堪えただけでは腕を折られると覚ったか転がって逃げた。
地面に叩きつけるつもりだった彼は肩透かしを喰らう。しかし、もう一人が仕掛けてきていたので飛び退いた。
「それで、だ」
家の壁を三角蹴りして舞いあがる。
「自由に念動力が使えるとなると、変身すれば空中機動も可能ってわけ」
「なぁ!」
彼がやってきた空手にしろスポーツチャンバラにしろ、不用意にはジャンプしない。足場を失えばステップもできず回避ができなくなるからだ。
ところが変身後は違う。空中でどんな体勢であろうが、念動力で体重を軽くできれば方向転換もできる。自由自在な攻撃に転じることも可能なのだ。
「キック!」
普通では決まらない飛び蹴りが容易に決まる。
「げはぁっ!」
「そして、パンチ!」
「おごぉ!」
仰け反らせてからの連打も決まる。対人戦闘をするうちに力の使い方や五感の受けとめ方を習得していく。装鎧戦士の戦い方がわかってきた。
膝蹴りを喰らわせ、力が抜けた盗賊戦士を頭目に投げつける。頭目戦士は配下の身体を腕一本で払い除けてみせた。パワーは元の身体能力に比例して上がっているようだ。
「おいおい、もっと味方を大事にしてやれよ」
「弱いものは淘汰される。我らにとって常識だ」
「そうかよ。じゃ、あんたが淘汰されろ」
地響きを立てかねない圧力で頭目戦士が迫ってくる。正輝は手を開いて指をほぐすと改めて拳を握り込んだ。それで正拳の形を整え直す。
「とぉ!」
「うらぁ!」
拳同士が衝突する。昼間でもそうとわかるほど派手に火花が散る。頭目は振り子のように反対の拳を突きだしてくるが彼は付き合わない。
ターンしながら背中から懐に入り込む。被さってきた頭目戦士の顎を両手で掴むと、身体を背中に乗せて逆さ落としにする。ゴリ押しの攻撃でも装鎧戦士のパワーは現実にしてくれる。
「ぐっはぁ!」
逆に落下速度を上げて肘を鳩尾にと落とした。
「これで凹みもしないのかよ。どんだけの強度があるってんだ」
(普通の鎧とは違います。強度と弾力性を兼ね備えてますので)
「まあ、特撮みたいに打撃が爆発はしないもんな」
(なにが爆発するのです?)
当然の疑問である。そこに爆発するものがないのに破裂したりはしない。ジノグラフもあくまで物理法則が通用する世界なのである。
「ってことは、装鎧戦士同士の戦闘でどうやってダメージを与えりゃいいんだ? 融合してない中身にまで浸透するような打撃じゃないと駄目なのか? そんな便利な技はない」
(魔法か武器を使うことになりますね。あんな感じに)
「そうきたか。そいつはライダー同士の戦い方として正統派じゃないんだけどさ」
打ちのめされた盗賊戦士が復帰してきている。しかも、その手に長剣を握って。剣身が念動の力をまとっているのが視覚として入ってくる。
正輝は険悪な武器に身構えた。
次回『得るもの失うもの(1)』 「解説ご苦労さん。よく理解した」




