ライダーとは(1)
それが起きたのは昼間だった。ドニニー村への過去の襲撃は、三回中二回は油断していた夜中だったと聞いていたので正輝も驚く。危急を知らせる声が響きわたり、彼らも慌てて外を見る。
(堂々としたもんじゃん)
村の唯一の通りを闊歩する盗賊団。
(完全に嘗められてる。抵抗なんて意味ないと思ってるな)
自警団が前面に出て押し戻そうと努力しているが逆に押し込まれている。武器をかざしても相手はどこ吹く風だ。
「引っ込んでろ。どうせなにもできないんだからよ」
「そうはいかん。これ以上、村からなにも奪わせないぞ」
「はーん? で、どうするって? その剣で斬り掛かってくる度胸があるのかね」
自警団の男たちは及び腰。骨折などの軽くない傷が治っていない者が含まれているのもあろうが、それ以前にあきらめの色も感じる。
「マサキ、あれを」
「な……に?」
「どうやら装鎧戦士が混じっているようです」
言われて見てみると、少女を従えている男が二人。ことさらに肩を怒らせて威張っている。装鎧少女と思われる少女には首輪まで掛けられていた。
「あいつら!」
一気に怒気が膨らむ。
「ドニニーの方たちが抵抗できなかったのも仕方なかったのかと思います。どれほど自警団の方々が強くとも、研ぎ澄まされた剣を持っていようとも、装鎧戦士には絶対に勝てません」
「なんでそんなことに」
「それは、わたしにもさっぱり」
正輝は部屋を飛びだすと足音高く階段を降りる。一階ではおかみさんと旦那さんが厨房で怯えていた。
「教えてくれないか? なんで盗賊団なんかに装鎧戦士がいる」
彼の剣幕にもびくりと震えた。
「詳しくは知らないよ。前にあいつらが自慢げに言ってたのは、襲った車列が実は国のもので積荷の中に装鎧少女が混じってたって。で、メンバーの中に適合者がいたから使ってるらしいよ」
「意図的かどうかはわからないが、やつらは違法に装鎧少女と契りを結んだってことだな」
「じゃないかい」
怒りは増す一方である。装鎧少女にとんでもない蛮行をする盗賊にも腹が立つし、それを武器にして村を襲おうという考えにも腹わたが煮えくり返るような思いだった。
「どうせ強制的に契りを求められたんだろ。やつらから装鎧少女を取り返す」
「マサキ、それは……」
エメルキアがなにかを伝えようとするが耳に入らない。ただ、首輪を掛けられて引きずられるように歩いている少女を解放することしか考えられなかった。
「トラコ」
自警団長に呼び掛ける。
「マサキ、お前」
「下がってろ。こいつは俺が片づける」
「なに言ってんだ。お前みたいな職人が敵う相手じゃない。それより妹さんを逃がしてやれ」
それは善意だろう。
「おいおい、そこの兄ちゃん、偉そうなこと言ってんな。オレたちに逆らったら確実に命はねえぞ。こっちには二人も装鎧戦士がいるんだからな。わかんねえか?」
「わからんな」
「ぐほぇ!」
近づいてきた盗賊の一人の鳩尾に一発入れる。フルコンタクト系の空手でしっかりと鍛えてきた正輝の拳だ。ただですむはずはなく、その男は倒れて悶絶する。
「見ない顔が増えてるな。ただの馬鹿に変わりはないが」
頭目らしき、装鎧少女の一人を従えた男が唸る。
「馬鹿で結構」
「世間知らずに世の中ってもんを教えてやろう。来い!」
「こっちもだ。来い!」
二人がキーワードとなっているであろう台詞を吠える。すると、装鎧少女たちがまとっていたボロマントが消え裸身を露わにする。そのまま光となって形を失うと男たちにまといつき、金属光沢のある全身鎧のようなフォームへと変身した。
「おい、そいつを撫でてやれ」
変身した頭目が命じている。
「そっとだぞ。教育だ。一発で殺すな。見せしめ代わりにして村人どもに示してやれ」
「わかってますぜ、頭領」
「ライダーとは……」
憤りで上手く声が出ない。
「なんだって?」
「ライダーとは弱きを踏みにじる力じゃない! そんなのは絶対に許してはいけない!」
「でかいこと言ってんじゃ……!」
「ビルドイン!」
キーワードを唱えると、宿屋の入口に隠れていたエメルキアの服が溶ける。光の粒子となって彼女の中に格納されると、今度は少女自身が光となって正輝にまとわりついてきた。
次々とプロテクタを形成すると皮膚と融合していく。脚も胸も腕も綺麗に覆われていくと、最後に仮面を形成して顔へと貼りついてきた。刹那の暗転を経て視界が明瞭になる。変身が完了した。
「マサキ、お前、装鎧戦士だったのか!」
「トラコ、わかったら離れてろ。近くにいたら危ない。ただでさえパワーが上がってるのに、今の俺は加減ができそうにない」
忠告すると自警団長は団員を引っ張って下がっていった。見ていなくともそれがわかる。変身のバフ効果はすべての感覚にまで及んでいる。
「誰を教育するって?」
「おま!」
ヘルムのバイザーを上にあげて驚愕の面持ちをさらしている。
「そうやって弱点を見せている時点で話にならない」
「なにを!」
「吠えてる暇があれば掛かってこい!」
正輝は盗賊の装鎧戦士に負けるとはまったく思っていなかった。
次回『ライダーとは(2)』 「やっぱ、とことんぶちのめすしかないか」




