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少女装鎧ジノグラフ  作者: 八波草三郎
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花のしもべ(3)

 正輝も網を借りて子どもたちの手伝いをすることにした。姉弟は花ネズミが逃げる前に捕ってまわる戦法だったが、彼は別の作戦を練る。

 エメルキアを肩車すると、網を構えてそろりそろりと花畑の中へ。静かにしていた間にまたよじ登ってきていた花ネズミの下に網を入れる。少女が念動力(サイコキネシス)で叩いて落ちたところは網の中という寸法。


「お兄さん、上手」

「いっぱいだぁ」

「任せろ」


 子どものやり方はどうしても騒がしいので周囲の花ネズミは逃げてしまう。逃さないようゆっくりと動いて近づけば、より多くの獲物を仕留められる。花畑を縦断しただけで網はいっぱいになっていた。


「これで村の友だちにも分けてあげられるな」

「うん、ありがとう」


 蓋の付いた目の細かい籠の中へと花ネズミは仕舞われる。じきに気絶から目覚めるだろうが、そのときは手遅れなのだ。どういう運命が待っているのかは、まだ彼も知らない。


「みんなにも教えてあげよ」

「うん、上手だったもん」


 花ネズミを大量捕獲した姉弟は、今度は蜜ヒルに取り掛かる。こちらは飛んでいるあたりで網を振りまわすだけなので、すぐにそれなりの数を集められた。


「おうふ。見せてくれなくていい」

 蠢く蜜ヒルを自慢げに見せに来る姉弟を遠ざけた。


 彼らが満足したところで昼食のようだ。いつものナンみたいな平パンに焼いた肉や野菜などが挟まれたものが供された。正輝たちもご相伴に預かる。


「いい。この組み合わせならトカゲ肉でもいけそうだ」

 水気の多い新鮮な野菜は癖のある肉にも合いそうである。

「トカゲはちょっと硬いものだからこの子たちが喜ばなくて」

「いやいや、贅沢は言わない。今は十分に満足してる」

「そうですか?」


 温和な奥方は正輝の好みも気に掛けてくれるが味付けは見事なもの。ただし、スパイスがきいてないのは大陸風の味付けだと思った。つい振り掛けたくもなったのだが失礼なので自重する。


「で、これが花ネズミの揚げたものです」

 差しだされてしまう。

「おう、これはなかなかショッキングな見た目だぜ」

「んー? 美味しいよ?」

「僕大好き」

 躊躇いもなく口に放り込んでいる姉弟。


 尻尾を切り落として油で揚げただけの花ネズミである。もちろん、小さいから捌いたりできないのは当たり前。しかし、形がそのままなのは少々抵抗があった。


「あー、確かになー」

「コリコリして美味しいです」

「んまいー」

「結構なお味ね」

 めいめいに感想を述べる。


 味は甘い。蜂蜜のようにコクはないが、単純な砂糖甘さでもない。高温の油で揚げたのか身もほとんどサクサクの状態になっていて甘い。焼き菓子に近いものになっていた。


(存外に甘いものだな。こういう生き物って体内に菌を飼ってる。蜜を消化するだけじゃなく、その菌のタンパク質も一緒に消化するから身体が成り立ってる。でも、主食が蜜だと肉もそれなりに甘くなるもんなのか)


 食感、味ともに非常にいい。ただ、見た目がアレなだけである。イナゴの佃煮に似た忌避感が若干残っているのを別にすれば最高のオヤツなのは否めない。


「で、こっちが蜜ヒルのクッキー……」

「はいはいはい!」

 正輝は渡される端からエメルキアたちに分配した。

「すみません。兄はヒルが駄目なので」

「そうでしたの? ごめんなさいね」

「いや、嗜好の問題だから気にすんな。妹たちに食べさせてくれ」


 素通しさせてもらう。小動物のように齧るさまを眺めて心の栄養にさせてもらうにかぎる。この食習慣を回避する術を考案しておかなければならない。


 昼食をドワッツ一家と終えた正輝はドニニー村へと帰るのだった。


   ◇      ◇      ◇


 正輝たちはドワッツ家に寄って布地を安く分けてもらった。これで服に関する懸案はほとんどが解消する。


「どうやって染めてる?」

 色どりも少なくない。

「草木、花なんかがほとんどだと聞いてます。わたしもそっちは詳しくなくて」

「青や緑は海ヒルとか川ヒルの色素とかも使ってるとか」

「もしかして、あれを食うからそうなってる?」


 ジノグラフの人間には地球人類のそれとは大きく異なる点がある。肌色はともかく、髪色や目色に関しては非常に多岐に及んでいた。青や緑、はてはピンクや紫など千差万別である。そのお陰で水色の髪に碧い瞳のエメルキアを妹だと言い張ることも可能。


「まさか。関連付けて考えてる人はいないと思いますけど」

 少女は否定する。

「研究してないからじゃないか? 青系色素って体内で生成できるものなんだか」

「それを言ったらわたしたちだって変ってことになります」

「それってイメージの問題じゃないの? 意識的に色づけしてるのかと思ってた」


 彼女たちはその気になれば形を変換できる。色も変えられるものと思っても変ではない。しかし、それは彼の勘違いだという。


「生まれながらのものです。簡単に変えられるものではありません。例えば、変身時に服も変換してますけど、元の色にしか戻せないのと同じ理由です」

「そこの理由ってのを理論的に理解できてないもんな。まあ、そういうものなんだと思おう」


(待てよ、青系の色ってったらコバルト化合物だな。人体には毒だけど、こっちの人類ってもしかしたら耐性あるのかもしれないな。取り込めるくらいに)


 想像すればキリがないと思う正輝であった。

次回『ライダーとは(1)』 「マサキ、あれを」

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