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少女装鎧ジノグラフ  作者: 八波草三郎
鴻ノ木正輝

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妖精種(1)

 目的のゼアネルヒの家に着いた。扉へと向かうエメルキア。正輝は一歩下がって控える姿勢にする。出てくるのは老爺か老婆か。物知りな長老というのは相場が決まっている。


「ゼアネルヒ様、エメルキアです。お邪魔してもよろしいですか?」

「いいよ、入んなさい。後ろの彼もね」


 まだ、扉も開いてないのに言い当てる。それだけで侮ってはならない人物だと知れた。


「では、お邪魔します」

「お邪魔さま」


 エメルキアの目配せを受けながら続いて扉の中へ。正輝はそこで膝と両手を突いてがくっりと項垂れた。


「どうしたのです?」

「そんなオチがあるのかよ」


 椅子に腰掛けてこちらを振り向いているのはエメルキアと変わらない年頃の少女だった。同じ青い瞳を持ち、水色の髪が床にこすりそうな長さである点だけが違いか。若干鋭さを覚える容姿もやはり息を呑むほど整っている。


「これが長老さま?」

「はい、聞くかぎり千年近くは生きていらっしゃいます」

「こっちの人はご長寿なんだな」


 薄々は勘づいていた。おそらくゼアネルヒは人間じゃない。そんな空気をまとっている。達観の極地にいる瞳で彼を見つめてきている。


「申し訳ない。失礼した。俺は正輝。この島に迷い込んでる」

 覚られている気がしてそう告げた。

「みたいだねぇ。外の世界の人かい?」

「どういう違いなのかわからないが、俺にとってここは異世界だ」

「なるほどねぇ」


 しげしげと観察される。ゼアネルヒの見えているものと彼の見えているものでは違うような感じがする。


「すごいね。精気の塊みたいな御仁だ」

 薄く笑われる。

「そうなんです。だから、びっくりして」

「だよねぇ。ロナタルテも飛びつくだろうし、あんたも傍にいたくなるってもんだ」

「それだけに心苦しくて。マサキにわたしたちのことを話してもよろしいでしょうか?」

 どうやらエメルキアの心痛の原因は彼らしい。

「そんなに気に入ったのかい?」

「優しくて……。ロナタルテがマサキの精気をあんなに吸ってると知っても気にしないで受け入れてくれるんです。その優しさにすがりたくなってしまって」

「契りたくなるくらいかい?」


 そう問われて少女は正輝の顔を見上げる。躊躇いもなくこくりと頷いてしまったので焦った。


(いやいや、契るって契約だけの意味じゃないぞ。あっちの意味じゃないよな)

 思わず制止したくなったが真面目な話の邪魔だと自制した。


「あんたにもそんな相手が見つかったんだね。喜ばしいんだかなんだか」

 曖昧な返事だった。

「で、あんたはどうしたい?」

「俺か? 俺は現在の自分の状態がわからなすぎて判断のしようがない。もしかしてゼアネルヒ様は俺みたいな人間のことを知ってるか? 戻る方法があるとか」

「いや、さすがに知らないねぇ。長いこと生きてるが、余所から誰か来たとか聞いたことがない」

 決定的なことを言われた。


(戻りたければ自分で方法を探すしかないのか。そもそも、俺は戻りたいのか?)

 心中で葛藤する。


 日本での暮らしはそれなりに安定したもので、しがらみもある。なら、未練があるかと問われると微妙なところだ。不平不満も少なくないが、それは誰もが同じことだと思う。自分の希望が叶わないからといって駄々をこねるほど子どもでもない。


(でも、心機一転違う暮らしをするなら?)


 少女のすがるような青い瞳が心に刺さる。彼女抜きで暮らすことなど無理だろうし恩義もある。自分がエメルキア頼りだったのだから、彼も頼られてしかるべきだと思った。


「じゃあ、偶然戻る手段が見つかるまでルキと暮らす。知るべきことがあるんなら教えてほしい」

 決然と言った。

「マサキ」

「恩知らずになりたくない」

「ありがとう」

 ロナタルテも「一緒、嬉しい」と顔に抱きついてきた。

「わかったよ。話してやりな」

「はい。黙っていてごめんなさい、マサキ。実はわたしもロナと同じ妖精種なんです」

「妖精種? ロナと同じ? ゼアネルヒ様と一緒で人間じゃないとは思ったが、このフィギアサイズと一緒だって?」


 考えなしにまくしたてると「フィギア」の部分だけ変換されない。「この20cmサイズ」と言い直すと、ロナタルテが怒ってモミアゲを引っ張られる。


「痛てて。わかったよ、悪かった。ロナも立派な妖精さんだ」

 指で頭を撫でると大人しくなった。

「幼体は小妖精(リトルエルフィン)って呼ばれることが多いですけど」

「あー、なるほど。幼体ね。子供の頃はこんなに小さいままってことか」

「いえ、幼体のままでずっと過ごしている妖精種も結構います。普通の状態だと半分以上がそうかもしれません」

 彼が思ったのとは違う説明がある。

「その言い方だと、半分以上がロナみたいな姿形のままで一生を終えるように聞こえるぜ?」

「そう理解してもらっても構いません。木々や生き物から得られる精気は少なくて、ちょっとずつ分けてもらったとしても、わたしのような形態になるほど溜めるのは簡単じゃないです」

「そんな理屈か」


 つまり、大サイズになるには相応の条件が必要になるらしい。大量の木々から精気を得るか、大量の精気を持つ生き物から得るか。


「ルキサイズになるのは険しい道なのか」

「必要になったら活発に精気を集めて形態変化します。この姿は生殖個体なんです」


 聞こえてはならない単語が耳に入って正輝はギョッとした。

次回『妖精種(2)』 「両極端じゃね?」

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