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少女装鎧ジノグラフ  作者: 八波草三郎
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ドニニー村(3)

 正輝とエメルキアたちが麦畑を渡る風の文様を眺めていると屈強そうな男たちの一団がやってくる。最初は気にしなかったのだが、男たちが彼に向かって一直線となれば無視もできない。


「よお、もしかして自警団ってやつ?」

 他に武装している集団などいまい。

「そうだ、お前が昨日やってきたという旅人か?」

「正解。なにか用か?」

「警告までだ。村の人間に余計な手出しをするな。特に若い娘には、だ」

 意外な注意をされる。

「俺、なんかそれっぽい態度だった?」

「いや、好奇心旺盛な年頃の娘となるとお前に目を奪われるだろう。相手にせず、さっさと出ていけ。それが一番穏便な対処法になる」

「そんな無理矢理追いだすようなこと言うなよ。俺だって事情をわかって気にはしてるんだ」


 邪魔扱いされるのは心外だった。しかし、彼らの心情も理解できる。盗賊団に女性まで奪われてしまえば村の存続に関わる。さらに余計な懸念事項など抱えたくはあるまい。


「女の子を連れて出たりしないって。俺たち兄妹はのんびりと旅したいだけなんだ」

 方便を並べる。

「それが嘘じゃないことを祈る。そうでなければ、黙って見過ごすわけにはいかないぞ」

「実力行使もありか。勘弁してくれ。あんたたちと事を構えるつもりなんて微塵もない」

「その言葉、違えるな」

 念押しされた。

「ところでさ」

「なんだ?」

「そうやって見回りしてるんだろ?」


 武装した五人ほどの集団で練り歩いているのだから盗賊団への対策だろう。そうじゃなければ相当警戒されてることになる。


「それ以外になにがある?」

 どうにも険悪である。

「そんなあんたたちに朗報だ。ここにメタルライトというものがある。どうせ、夜回りもするんだろ? これさえあれば油を切らすこともなきゃ、雨風もへっちゃらだぜ?」

「なにを言いだす?」

「いや、単に売り物があるから買わないかって話」


 腰に下げていたメタルライトを取りだして点けてみせる。自警団の男たちは変わった道具に感嘆していた。


「使い方にコツはあるが慣れたらなんてことはない。便利だろ?」

 精気の流し方さえ教えれば彼らでも点灯させられた。

「むぅ、これは……、いいな」

「だろ? 金属筐体だから多少は荒い扱いにも耐えられる。お買い得だぜ?」

「悪くない。が、俺たちで自由になる金もない。村長のとこへ売り込みに行け」

 予想の範囲内の返事がある。

「と思った。だから、あんたが欲しいって口添えがなきゃ村長だって首を縦に振れないじゃん。案内してくれよ」

「そういうことか。ちゃっかりしたやつだな」

「わかってくれ。これが売れないと、俺は宿屋のおかみさんにツケを払ってあげられないのさ」


 繋ぎが不可欠なのだ。いきなり村長のところへ持っていったって門前払いにされるだけだと思っている。


「わかった。昼過ぎに村長の家に来い。話を通しておく」

「昼過ぎか。ま、しゃーない。伺う」


 自警団は去っていく。別のところに色気を出したと感じれば、それまでの印象は変わるものである。正輝も役者の端くれなので、そういう心理面には強い。


「しかし、どうしたもんか」

 別の問題が出てきた。

「なにか?」

「連中を見たろ? 俺より二回りくらいボリュームのある男だ。それが、怪我をもらってる。生身で加勢してどうにかなるような盗賊団じゃないな」

「そういう意味ですか。装鎧戦士(エルフィンアーマー)であることを隠すのであれば無茶ですね」

 少女も納得する。

「ドワッツの親父さんも領主に窮状を訴えてきたらしいから手出ししないのが良さそうだな」

「そうなります」

「もちろん、君が危険にさらされないかぎり、だ。そんなことになれば躊躇いなく変身する」


 自衛の範囲に収めたいところ。ただし、乗り掛かった船でもある。事の顛末くらいは見定めてから村を出るくらいの心持ちだった。


「いざこざはどこにでもあるもんだな」

「マサキが抱えるような問題じゃないわ」

「そのとおりです。この国が対処すべきです」

「ベッドで寝れるのはいいー」


 胡座の中に座らせているエメルキアの髪を撫でる正輝だった。


   ◇      ◇      ◇


「売れたな。わりと吹っ掛けたのに」

 狩人にメタルライトが一個捌けた。

「早暁に村を出発するらしいので都合がよろしいのでしょう。村に二軒しかない狩人であれば、それなりに稼いでいらっしゃるのかと」

「ともあれ、一件落着だ。今夜から大手を振って宿に泊まれる。飯も頼み放題だ」

「おかみさんに心配掛けないですみましたね」


 しばらくは暮らせるはずである。旅に欠かせない旅費を入手するのが急務だったので、収入に目処が付いたのは大きい。


「量産すっか」

「素材にも限りがあるので計画的に」

「おっと、ルキに財布を握られそうだ」


 ちょうど昼過ぎと頃合いである。少女たちと軽口を交わしながら村長の家と聞いた場所へと足を向けた。


「別に豪勢な屋敷ってわけじゃないか」

「隣のあれは集会所かなにかでしょうし」

 付随する建物がある。

「決して豊かではないのよ。盗賊団に狙われたらあっという間に困窮するくらいだもの」

「美味しいもの出ないかなー」

「あんまり期待できそうにないぜ」


 ロナタルテの望みは叶えられないだろうと思いながら正輝は戸を叩いた。

次回『ドニニー村(4)』 「細工職人ってわけか」

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