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少女装鎧ジノグラフ  作者: 八波草三郎
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ドニニー村(1)

 同行した家族は、正輝の発音に怪しげなところがあるのも影響し、彼が田舎者だという設定を信じ込んでそのまま村に伝える。彼らはただの田舎者の旅人として受け入れられた。


「おかみさんは、普段は飯屋をして旅の人間が来たときだけ宿屋に早変わりってわけ?」

 宿のおかみに訊く。

「そうさ。こんな辺鄙な村に旅の人が来るなんてほとんどないからね」

「旦那さんは?」

「うちも農家だよ。手伝いと畑に出てる。大急ぎで次の麦を育ててるのさ」

 ドドニー村は聞いたとおり一部食材に関して食糧難に見舞われている。

「手伝い?」

「よその次男坊や三男坊。畑を持たない職人の家とかの息子たちはそうやって稼ぐしかないね。こんな小さな村じゃ稼ぎ口なんてそんなにない」

「なるほど。じゃあ、困ったな。あいにくと、田舎者すぎる俺たちは当たり前に採集生活をしていて稼ぎってものがなかった。要するに宿代がない」


 工面しようと思って聞いたのだが、手っ取り早く稼ぐ手段に困る。メタルライトも売り先がないと捌けない。


「今夜のところはドワッツのところの恩返しに泊らせてやるよ。あれが帰ってきてくれたんで食いつなげた。それ以上に滞在したいってんなら考えな」

 例の家族の父親の名前が挙がる。

「おかみさんの言うところももっともだ。で、ここに戦いを主に生業とするギルドの支所みたいなもんある?」

「そんなもんはないね。そっち関係だと狩人の家が二軒と、他は自警団の連中だけ」

「うーん、手伝ってどうこうって相手じゃないか」

 売り込みの相手としては薄い。

「あんた、命知らずだね。ドワッツに聞いたと思うけど、ドニニーの近くに盗賊団が居着いてたまに襲撃に来てる。自警団も頑張っちゃいるが、手伝いとか死にに行くようなもんだよ。そんな小さい妹さんを遺してどうするのさ」

「それも、もっとも。となると、ハンターさんのほうかもね。どこの家か教えてくれよ」

「いいよ。なんなら狩りに行ってきな。獲物は村長が買い取ってくれるから」


 耳より情報だ。ここでは大概のものが共有財産のようである。肉も農作物も一度村長の家を経由して分配されるようである。


(なんだったら、流体金属(メタル)を少し分けてやれば金は手に入りそうだ。狩猟ってのは実利的じゃない)

 正輝に経験もない。


「自警団も商売相手にはなりそうだ。束ねてるのはやっぱ村長?」

 権力は集約されていそうである。

「だね。団長がある程度判断して独自に動いちゃいるが、元締めは村長さ」

「わかった、ありがとう。とりあえず、晩飯はツケでお願いできる?」

「しょーがないね。当てがあるならいいよ」


 おかみさんも小妖精(リトルエルフィン)をまといつかせている彼を物珍しいものとして扱っている。コタカッタ王国内ではほとんどない光景なのだろう。


「どう思った?」

 エメルキアにこっそりと訊く。

「真っ当な反応だと思います。おそらく、村くらいでは装鎧少女(エルフィン)に触れる機会もまったくと言っていいほどないのでしょう。疑われる心配はないかと。マサキはどんなつもりでこちらに」

「なんつーかな、ああもダイレクトに窮状を語られると、助けられるもんなら助けたいと思って」

「やっぱりですか」


 ドワッツの家族とドニニー村に同行すると決めた時点で少女は変だと思ったようだ。彼の目的からは遠ざかる方向なのだから。人の多い場所でなければ情報は入ってこない。


「ごめん、付き合わせて」

「構いませんよ。マサキの好きなようになさってください。これは、あなたが知りたいことを知る旅です」

「でもさ、ルキたちに危険を背負わせるようなものにしたくないんだよ」


 出てきたお茶をすすりながら話す。女将さんは、小妖精とも普通に話している正輝を呆れた感じで眺めているが、特に見咎めることまではしない様子である。


「はいよ。今はこんなものしか出せないけどね」

 夕食がやってきた。

「ありがとう。助かる」

「ちゃんとツケとくから気にしなさんな」

「ちゃっかりしてる。そうするさ」


 出てきたのは本当に質素なものなのだろう。しかし、彼にしてみれば結構文明的なメニューに見えた。なにより、パンっぽいものがある。


「肉は獣肉かな?」

 流体金属(メタル)製らしきフォークで突付く。

「そうだと思います」

「どれどれ」

「美味しいかなー」


 ロナタルテと一緒に頬張る。ずいぶんと久しぶりな感覚がよみがえってきた。トカゲ肉になかった脂分が多いのである。


「柔らかい。そして、ジューシー。いける」

「美味しいかもー」

「普通じゃない?」


 ティナレルザの反応は薄い。つまり、一般的なものなのだと思った。


「しかし、いかんせんパンチが足りない。味気はいい感じなのにピリッと感が。こっちじゃそんなにスパイス文化がない?」

「確かにそうね。島だとあんなにスパイス使ってるから不思議だったわ」

「いやー、トカゲは癖っぽいからスパイスきかせないと匂いが鼻についてさー」


 もちろん、そのほうが美味しいからというのもある。実際に、魚の干物や燻製にもスパイスはたっぷりときかせがちだった。


「で、こいつが主食か」

 平ったい焼きパンで、ほとんどナンに近かった。

「おー、いかにも炭水化物って感じ。これがあると食ったって気になる」

「そうなんですね。わたしたちはあまり摂らないものでしたので」

「そっかー。ストレートに肉体の燃料みたいなもんだしな。パワーが漲るぜ」

 大胆に齧り取る。

「それは今夜が楽しみです」

「人が聞いたら勘違いしそうなこと言うなよ」


 正輝はちょっとだけ焦った。

次回『ドニニー村(2)』 「マサキの知っている村とは違いますか?」

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