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少女装鎧ジノグラフ  作者: 八波草三郎
パムール島の異変

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世界の成り立ち(4)

 装鎧戦士(エルフィンアーマー)の成り立ちは理解した正輝だが、世界情勢となるとまだまだである。それに嫌な予感もしていた。


「なあ、協力体制が簡単じゃないってことは?」

 当たらないでほしい予感。

「戦争も多いと聞き及んでおる」

「領土紛争か」

「理由までは伝わってこんがそうじゃろうの」


 ゼアネルヒの情報源は、大陸から渡ってくる小妖精(リトルエルフィン)なのだそうだ。彼女たちが教えてくれるのは事実だけであって、人間の心理にまでは至ってないのは当然のこと。


「今や、装鎧戦士(エルフィンアーマー)は戦争の道具じゃて。数が多いほうが勝つとまで言われてるそうじゃ」

 悪い予感とは当たるものらしい。

「とびっきりの人間の悪い癖だな。身を守るための手段なのに、攻撃力が高いと知れば兵器として考える。情けない」

「前に妖精種(わしら)の数が増えておると教えたじゃろう? 理由がそれじゃからのう」

「なんか、すまん。エルフィンたちが人類を守ろうと身を挺して奉仕してくれたってのに人間ってやつは。くだらん目的に君たちを利用して。そりゃ、孤島に隠遁したくもなるってもんだ」

 島の長老は「それもあるのう」と苦笑い。

「確かにそんな体たらくじゃ問題だ。メタル進化種が突如大挙して押し寄せたりしようもんなら今度こそ人類は滅びるかもな。同情の余地もないが。ゼアネルヒ様もルキもう気に病まなくていい」

 滅んでしまえと言いたくもなる。

(ですが、そうもいかないのでは? マサキとしては大陸に人類が文明を築いているのは一定の保険というか、心の拠り所になってるのではないですか?)

「痛いとこ突いてくるな」

「マサキは大陸に行きたいのー?」

 ロナタルテも不安げにする。

「興味がないって言えば嘘だ。気にはなってる。だからって、島を出てく理由になるほどじゃない。聞けば聞くほどな」

(それが、本心であれば嬉しいのですが)

「仮に俺が気にするとしたら、人類を滅ぼしたメタル進化種がパムール島に押し寄せてこないかって点だ。どうやら、ゼアネルヒ様の禁域の力は人間には効果があってもメタル系生物には効果がないみたいだしな」


 島にメタルスライムが生息していることから推測できる。ゼアネルヒが否定しないので事実だとわかった。


「あながち間違ってはおるまい。最悪な事態としてはあり得るの」

 この一件に関しては肯定的なのが難しい。

「正直、今の俺は率先して厄介事に首を突っ込みたくはない。それくらい充実した暮らしをしてる。ただな、わずかながらでも不安を抱えたままで、これまでみたいに楽しめるかはちょっと自信ない」

(わかります。わたしも不安になってきました)

「偵察くらいはしてくるべきか。だとすれば、どこまで深入りすべきか。悩ましいとこなんだよ」


 今の正輝が再び人間の中に身を置いたとき、どんな心理の変化が訪れるか自分でも予想がつかない。そちらのほうが住心地がいいと思うかもしれないのは否めない。


「なにが正しい? ゼアネルヒ様はどちらを勧める?」

 経験値の塊に判断を委ねたいところ。

「そなたの生きたいように生きろ。そうとしか言えんの」

「頼っちゃ駄目か」

「わしにもわからんのじゃ。そなたがジノグラフに迷い込んできたのは偶然なのか必然なのか。それはおそらく、そなたにしか解き明かせないじゃろうと思っておる」

 意外なことを言われた。

「そうか。そこまで考えて」

(ゼアネルヒ様のおっしゃることも頷けます。わたしたちの常識とは違う感性を持つマサキでないと出せない結論はあるように思います)

「だよな」


 意味があるのかないのか。そもそも、意味とは作るものだとも思える。行動が全ての起点となるのだ。


「無理に急ぐ必要もないの。よーく考えるがよい。差し迫った事態とも思えぬでの」

 彼女が言うのは気休めか。

「そうさせてもらう。安易に決断できない。じっくり腰を据えて考えてみるさ」

(島の中は安全が確保されています。時間はたっぷりありますので)

「とはいえ、老いるまで考える気はない。君と俺では時間の感性が違うからさ」

 余裕で千年生きる妖精種(エルフィン)とは比べるべくもない。

(そんなつもりじゃ……)

「冗談さ。急ぐ気がないってだけ」

「マサキは時々意地悪なのー」


 ロナタルテにエメルキアをいじめるなと叱られた正輝であった。


   ◇      ◇      ◇


(マサキには大陸の、世界の現状(・・・・・)を知ってほしくないです)

 エメルキアも杞憂であるとは思っている。


 彼ならば容易に変節することはあるまい。しかし、流されてしまうのも人の性分である。絶対はないと思っている。


(仮にマサキが変わらないとしても……。だったら余計に大陸はマサキにとって暮らしにくい場所かもしれない。島の安全のために、彼に苦難を強いるのは本意じゃないです)


 心を苛むような事実に直面することになる。それは彼女にとっても同じこと。ロナタルテもまだ知らない悪意を知ることになる。皆が苦しんでまで、あるかどうかわからない事態に対策をする必要があるのか。判断はできない。


(止めたい。でも、止めてはいけない。ゼアネルヒ様の言ったマサキの意味も嘘ではないと思うから)

 考え込んでしまう。


「どうした、ルキ?」

 心配げに尋ねられる。

「仮に偵察に行くとしても君を置いてくつもりなんて微塵もないからな。ルキなしじゃ俺なんて全くの無力なんだから。頼むぜ」

「頼まれなくてもついていきます」

「ロナも絶対に行くー」


 必要とされるのが最も心の薬になると感じるエメルキアであった。

次回『船造り計画(1)』 「金属を海に浮かべるのは無理がないです?」

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