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少女装鎧ジノグラフ  作者: 八波草三郎
パムール島の異変

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変身(2)

「これがゼアネルヒ様が言ってた契り?」

(はい、そうです)

 正輝の疑問にエメルキアは平然と答えてくる。

「俺、勘違いしてた」

(どう思われてたのですか? 情を交わすのと誤解なさって?)

「わりとダイレクトに来たな」


 性行為と勘違いしてたのは間違いない。だが、少女の声のイメージのまま「情を交わす」などと表現されると対処に困る。もっとストレートに言われるよりマシかとあきらめた。


「なになにー!」

 戦いが終わったのを見てロナタルテもやってくる。

「今は俺とルキが一体化してる状態だ」

(伝わるでしょう?)

「聞こえるー。ルキの声だ」

 肩にとまって接触していたら小妖精(リトルエルフィン)にも思念は通じるらしい。

「確か、特殊な共生の形だとか言ってたな。一つの身体に融合して、でも意識は二つあるのは特殊っちゃ特殊か」

(さっきも言いましたけど、もっとあやふやなはずだと聞いています。わたしも契りはマサキが初めてなのでなんとも言えませんけど)

「面白ーい」


 ロナタルテがプロテクタを叩いている。彼女の力では感触さえ怪しいほどの強度がある。拳を打ちあわせると「ギン!」と金属音がした。


「個体メタルの強度だな」

 少女の創造物がこんな感じだ。

(まさにそのとおりです。わたしは今、メタル系生物の形態に近いままマサキの表皮とも融合しています)

「そっか。ルキたちはその気になればどんな生物の形態も取れるんだもんな」

(それなりに精気を要するので気軽にとは言えません。でも、この契りだけは別で、装着者の精気と意思に依存するからかも)


 エメルキアにとって、この変身は知識の範囲であるのは本当のようだ。可能なのがわかっていて契ったらしい。


「ロナにもできるー?」

 なぜかうらやましそうにしている。

(無理ですね。最低でも繁殖形態に上がる必要があります。今も融合しているだけで、全体の量、厳密にいうと重さは変わってないんです)

「質量保存の法則ってやつだな」

(マサキはわたし一人分を背負っているのと同じですね。能力底上げがあるので重いとは感じないでしょうけど)

 事実、まったく重さは感じないどころか、むしろ身体が軽くもある。

「そういや、痛みも消えてる」

(傷は修復しました。正確には変質したときに本来の形を記憶している状態です)

「なるほど、傷は状態異常扱いだからか」


 傷を始め、軽い感染症などは融合時に修復するらしい。元の形とでないと上手く融合できないという仕組みなのだそうだ。そこはエメルキアも詳しくは知らないようだが。


「で、これは俺の意思で解けると?」

 ずっとこのままとはいかないだろう。

(できます。反対に、わたしの側からはかなり難しいのです。契りの解除を念じてみてください)

「それはいいとしてだ、俺、どんな格好してる?」

(それは……、説明しがたいです。ご存知のように、マサキのイメージに依存する形態に変化しています。わたしの能力は強化版として使えるので、メタルトカゲの流体を使って鏡を作ってみてください)


 忘れがちだが、変身後の正輝は少女の感覚から能力までを十全に使える。しかも、バフの掛かっている状態でだ。これは大きい。そうでなくてはメタルトカゲは倒せなかった。


(鏡ね。いつもルキがやってるみたいに)


 足元の流体金属(メタル)の溜まりに指を入れる。メタルトカゲのものなのでそれなりの量だ。鏡面をイメージしながら引きあげると、手鏡のような形で持ちあがってきた。


「便利だ」

(普通にできるでしょう?)

 顔の前にかざす。

(マサキのイメージはちょっと変です。こんな目の大きな生物を知りません)

「…………」

(あなたのイメージからなので外れてはいないはずなのですが)


 顔面の三分の一を占めているかのような目。それは、ハニカム状の格子模様の入った複眼に見える。緑ベースの顔に真っ赤なつり上がった目がこめかみ辺りまで続いている。

 額には角というかアンテナというか、触覚に当たるものが天頂を向いて伸びていた。頬から顎にかけては幾つかのプロテクタに覆われている。強いていえば、区切りが顔をなしているともいえなくはないレベル。


(ヤバい。俺が子供の頃から想像していた仮面ライダーそのものじゃん。これは恥ずいかも。オリジナリティあるのはちょっとは救いかもしれんけど)

 羞恥に背中が汗ばむ感じ。


(おかしな生理反応があります。なにか変です?)

 遠慮なく指摘された。

「いや、これはな……」

(見たことのない生物形態です)

「変わってるー」

 膝から崩れ落ちそうになるのをどうにか堪えた。

「なんというか、俺の世界にいた『虫』って生物の仲間をモチーフにしていてだな」

(こんな大きくて不気味な生き物がいるんですか? 怖くないです?)

「いや、違う。ほんとはもっと小さいんだ。あくまでモチーフに使ってるだけ」


 やはり、バッタを想像してエメルキアに伝える。少女のおののく気配が伝わってきた。


(気持ち悪い生き物です)

「いや、ここのヒルだって気持ち悪いぞ! 俺の世界の女の子だったら見ただけで悲鳴をあげて逃げてくからな!」

 思わず言い訳じみた言い分になる。

(そうですか? 普通にいますけど)

「いくらでもいるよー?」

「感性の問題だ」


 正輝にはそうとしか言えなかった。

次回『変身(3)』 (待ってください。この形態はリスクもあるんです)

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