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少女装鎧ジノグラフ  作者: 八波草三郎
パムール島の異変

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変身(1)

「わたしと契りを交わして一つになってくださいますか?」

 少女は正輝にくり返し訊いてくる。


 冗談を言っているようには見えない。エメルキアの貫頭衣の裾は何度も枝に引っ掛けたのかずたずたに裂けている。どれだけ急いで駆けつけてくれたのか聞くまでもない。その少女が切実な目で訴えてくるのだ。


「言うとおりにすると、あれを倒せる?」

「はい、倒せます。でも、あなたの許可なしにしていいものではありません」

「わかった。契ろう。俺はどうすればいい?」

「そのままで。わたしに心を開いてください」


 言われたとおり少女を降ろす。腕を開いてきたので同じようにすると、指を絡めて手と手を合わせてきた。そのまま身体を重ねる。エメルキアの正輝を思う気持ちが一気になだれ込んできた。


「お……う」


 彼女の服が光の粒子となって消える。少女の裸身にまとわりつくように舞っていた。見つけてくる青い瞳が真剣な光を湛えていて目が離せない。ふわりと微笑んだエメルキアは自身も徐々に光の粒子へと変じていく。


「おい!」


 大量の粒子は銀色の輝きを帯びてきた。そこへ追いついてきたメタルトカゲがトゲを飛ばしてくる。しかし、少女が変じた銀色の粒がすべてを弾き飛ばしてしまう。トカゲはその様子に怯んでいた。


「これは……」


 銀色の粒はメタル系生物のボディと変わらないものに見える。ただし、包まれていても不思議と危険な感じはしない。むしろ、守られている安心感があった。


(マサキ、あなたの強い姿をイメージしてください)

「俺の強い姿?」

(あなたが一番強いと思っている形態を)


 銀色の粒が各所で集まりはじめる。それはプロテクタの形をなして皮膚に貼りつくような動きを見せた。腕も足も、そして胴体も、幾つものプロテクタが生まれて貼りついてくる。指さえも細かな造作をして覆われていく。


(融合します。これがあなたとわたしの契りです)

「これが、契り」


 呆然と自分の身体を見つめていた。その顔面あたりにも銀色の粒が集まっていく。仮面を形成すると顔に覆いかぶさった。貼りつくだけでなく、溶けあうような感触がする。本当に少女と一体化しつつあった。


「これは、もしかして」

(なんだか奇妙なイメージです。マサキの強い姿は変わってますね)


 融合が完了した。否、これは変身である。細かく分かれたプロテクタに覆われた指はベースが緑色。関節部分は黄色になっている。流体金属(メタル)を触ったときのような感触があるのに関節部は柔らかかった。


「纏ってるんじゃないな。こいつはほんとに融合してる」

(はい、今マサキとわたしは完全に一つになりました。ですけど、なんでこんなにわたしの心が自由に伝わってるんでしょう?)

「そういうもんじゃないのか? 一体化だろ?」

(いえ、身体だけでなく自我も境目が曖昧になってしまうものなんです。わたしの意識は薄れてしまうはずなんですが)


 形を失っているエメルキアの声が聞こえているのではない。彼女の意識が直接彼の中に響いてきている感じ。確かに少女を身近に感じるが、綺麗に重なっているだけで意識は溶けあったりしていない。


「別のもんはほんとに融合してるみたいだな。これがルキの視界なんだろ?」

(ええ、そのあたりは共有しています。能力のほうはマサキに移植しています。自由に使ってください)

「そいつはありがたい」


 というのも、目の前のメタルトカゲが違うふうに見えている。本体も見えているのだが、それに重なるように力の流れのようなものが漂いつつ舞っている。その大元の場所が彼には明確になっていた。


「おうおう、好き勝手してくれたもんだな? 覚悟しろ」

 身体は自由に動くので、ゆったりとメタルトカゲに歩み寄っていく。

「完全に一体化の変身だ。最高の気分なんだけど」


 手を握れば綺麗に拳を作れる。もし、見たとおりの金属の硬いプロテクタで覆われているだけでは邪魔になって握り込むことはできない。それができているということは、正輝の皮膚もエメルキアの身体と一体化してその形になっているということ。


「よくもいびり倒してくれたな。さあ、勝負つけようぜ」


 思いだしたようにトゲを飛ばしてくるメタルトカゲ。しかし、その速度はずいぶんと遅く感じる。


「動体視力とかもバフ掛かってる?」

(ばふ? わかりませんが、すべての能力が底上げされているはずです)

「いいねえ。こいつは本物の変身ヒーローになった気分だ」


 手でひと払いしただけでトゲは弾き飛ばされ、さらに引き伸ばされて千切れてしまう。かなりのパワーだった。手刀を作って軽く払ってやると、チンと金属同士がぶつかり合う音がしてトゲの硬い部分がへし折れていた。


「効かないな。さあ、往生しろ」


 突如としてダッシュしてきたトカゲが脚に噛みつこうとしてくる。金属光沢を持つ鋭い牙が並んでいるが、まったく怖ろしいとは感じない。蹴りあげると、頭は粉砕されて銀色の雫が舞う。


「じゃあな」


 振りおろした拳が力の流れの源を貫く。メタルトカゲはぐずぐずと形を失っていき、流体金属(メタル)となって大地に広がった。


「うっしゃあ!」


 正輝は思わず拳を突きあげ勝利の雄叫びをあげた。

次回『変身(2)』 「個体メタルの強度だな」

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