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少女装鎧ジノグラフ  作者: 八波草三郎
孤島スローライフ

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まばゆさと幸せの中で(3)

 昼食後も釣りをする。腐ってしまうのならば、あまり釣っても仕方ない。もちろん、保存法を考えたからに他ない。

 まずは冷凍。エメルキアに物を冷やす魔法を提案するも、これは理解を得られず当然イメージもできずに失敗。しかし、正輝には秘策があった。


「乾燥させればいいんですか?」

 少女は不思議そうに言う。

「そう、糸作りのときとかみたいに水気を抜く、要するに水だけ移動させる魔法を使ってみて」

「それならできそうですけど。でも、硬くて食べられなくなるだけな気がします」

「まあまあ、ものは試しで」


 内蔵を抜いて開きにした魚はエメルキアが魔法を用いるとしおれていく。徐々に縮んでいくさまはまるで早回しの映像のようだ。


「ストップ。そのくらいで」

 魔法を止める。

「とりあえず、こんなもんか。あまり水分残すと痛んじゃうからさ」

「乾燥させると腐りにくくなりますけど、魚だと食べにくいのでは?」

「そういや、家にはフルーツの乾燥させたやつあったな。仕組みは知ってるじゃん」


 干物にした魚は縮んでカチカチだ。確かにそのままでは食べにくい。香りもより強烈になっている。


「証明しよう。今は満腹だからちょっとだけ」


 一部を切り取ってフォークに刺し、焚き火の残りで炙る。程なく、良い香りが漂いはじめた。二人は興味津々で見入っている。残った脂が溶けて泡立つところまでいくと目を丸くしていた。


「熱っち。ほら、食べて」

 ちぎって渡す。

「美味ーい!」

「ほんとだ。すごく濃い魚の美味しさが。凝縮させられてるんですね?」

「そう。干物は魚の保存法にして、一つの究極的な調理法でもある」


 彼も試食する。熱せられて柔らかくなった身は芳醇な旨味を伝えてくる。炙った炭の煙も相まって、奥深い香りが嗅覚をも刺激してきた。干物にする前に施した塩気やスパイスの辛味も見事にマッチしている。


「海水煮詰めて漬けながら干物にするのもありだと思うけどな」

「やりましょう!」

 妙に主張が強いのは少女が干物を気に入ったからか。

「わかったわかった。この鍋、まだもちそう?」

「固形強化します」

「じゃあ、俺が海水汲んでくるから」


 焚き木を追加して火を起こした竈に海水の鍋をかけて煮詰めていく。半分くらいになったところで、開きにしてあった魚を浸してエメルキアが軽く乾燥させる。その作業をくり返して新たに干物が完成した。


「これを燻してだな」

 試食用に切り取った身を炙る。

「ああ、すごい。塩っぱさがまろやかになりました。こっちのが好きです」

「もっと美味しー!」

「ちょっぴり苦みがあるけどな。それもアクセントだ」


 海藻を採ってきて海水と一緒に煮込んで使ったりと幾つか案も浮かんだのだが、それは次の楽しみに取っておこうと思う。今はエメルキアやロナタルテが喜んでもぐもぐしているところを眺めるのが楽しかった。


「じゃ、しばらくの楽しみを確保したところで、あとはゆっくりするか」

 浮き輪を持ちだして言う。

「はい、遊びの日ですものね」

「なにするー?」

「そうだな。とりあえず浮かんで揺られるか」


 正輝が浮き輪にお尻を嵌めて乗り少女を招く。お腹の上に横座りしたエメルキアはちょっと気恥ずかしそうに浮き輪に背を預けた。ロナタルテも彼の胸の上で大の字になっている。


「のんびりしたのもいいだろ?」

 塩でごわついてきてしまっている少女の髪を指でくしけずった。

「とっても楽しいです。海で遊ぶというのがよくわかりませんでしたけど、こんなにいろいろできるんだってびっくりしてます」

「そっかぁ。俺にとって海は美味しいもの食って遊び倒す場所だって感覚だったからな。今日は実益も兼ねてるけどさ」

「いろんな発想があるものですね」

 少女は「ふふふ」と笑っている。

「俺が育ったのも島国でさ、こんなに小さい島じゃなかったんだけど」

「そうなのですか」

「だから、海も豊富にあって魚も穫れる。食べ方も千差万別。それぞれの楽しみ方もいっぱいあった。そういう暮らしをしてくると、こんな感じに育ってる」


 別に漁をして生計を立てていたわけでもないが、ざっくりとでも伝わればいい。彼にとっても、今の暮らしは自然なものなのだと。無理はしてないとわかってほしかった。


(俺を不安にさせまいとしてか、妙に頑張ってるところあったもんな。確かに置いてきてしまったものも少なくはない。でも、在るがままに生きるのも悪くないと思いはじめてる)

 正直なところである。


 孤島の生活はお世辞にも現代日本のように便利とはいえない。逆に掛け離れているといってもいい。しかし、パムール島はどこか日本人である彼の遺伝子にマッチしている部分があると感じている。


(この感じがさ)


 海に沈もうとしている夕日がオレンジに染まりつつある。それは幼い頃の記憶と同じで特に違和感のないもの。

 それに、水色の髪に青い瞳という感性から大きく外れた究極の美のような存在が傍にある。指で頬をなぞれば、信頼しきった眼差しで見つめてくる。ある種の感動が胸に染み入ってきた。


「異世界スローライフ、最高!」

「すろーらいふ?」

「まあ、気にすんな」


 波に揺られる時間を満喫した正輝であった。

次はエピソード『パムール島の異変』『メタル遭遇戦(1)』 「マジ? ほんと? 乱獲しすぎたか」

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