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少女装鎧ジノグラフ  作者: 八波草三郎
孤島スローライフ

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島の探検(5)

「行ってこーい」

「ぶー!」


 正輝はヒルの尻尾側に釣り針を掛け、文句たらたらのロナタルテに運んでもらう。長さが30mしかなかったが結構深いはずだ。岸から10mと離れていないところで腰まであったので間違いない。


「水トカゲに飛びつかれる前に帰ってこいよー」

「わかってるもん!」


 陸生のヒルが水中で窒息するのかどうかもわからない。だが、しばらくは生きて暴れているはず。魚にとっては格好の餌になると思っているが如何に。


「来た」


 すぐに手応えがある。糸がグンと持っていかれそうになった。思ったより遥かに強い引きである。


「熱いわ!」

 手の中で滑って摩擦で熱せられる。


 堪らず足で踏んで固定した。エメルキアに頼んで、バイク用の革手袋を持ってきてもらう。人差し指と中指は指抜きになっているが、ないよりマシである。手の平で巻き込むようにして引っ張る。


「さあ、勝負だ」

「頑張れー」


 糸の強度的には問題ない。あとは正輝との駆け引きである。まずは思う存分泳がせてやる。水トカゲに獲物をかっさらわれないよう祈りながら徐々に引き寄せていく。


「粘りやがるな」

「すごいですね」


 格闘すること数分、弱ってきた魚が引き寄せられてきた。驚いたことに1m以上はある。如何にも肉食といった大きな口をぱっかりと開けて浮いてきた。浅瀬まで来たところで顎を掴んで持ちあげる。


「ゲットだぜ!」

「お昼ご飯穫れたー!」


 暴れる魚にナイフを入れて締める。いい感じの獲物に思わず笑みがこぼれた。ついでにヨダレもこぼれそうになるのを堪える。


「淡水魚は確か寄生虫ヤバいやつだよな。わかる、ルキ?」

「見たり触ったりだけではちょっと。生き物は複雑すぎます」

「久しぶりに刺し身といきたいところだが今日は我慢すっか」


 食の冒険は危険だ。命に関わる。大人しく枝に差して焼き魚にする。Y字の枝を二本拾ってきて、焚き火の両側に差すとその上で炙る。待っていると、非常に香ばしいなんとも食欲を刺激する香りが立ってきて、ロナタルテも目が離せない様子で周りをぐるぐると飛んでいる。


「いただくか」

 しっかりと火を通して敷いた葉っぱの上に。

「おー、堪らん。脂も乗ってて塩加減もいい。スパイスがこれまた」

「柔らかくて美味しー」

「いいお味です。脂が甘いですね」


 身をほぐして取り分けると、珍しく二人ともしっかりと食べている。肉より魚のほうがヘルシーで食べやすいのかもしれない。必須ではないにしても、喜んで食べてくれる相手が傍にいるのは気分がいい。


「こりゃいい。大量に持って帰りたいけどでっかすぎる。くぅ」

 残念である。

「帰ったら、バイクに付ける大型のバッグを作ろう。幾らかマシになる」

「ですね。今回は現地で楽しむだけで我慢しましょう」

「こういうの、川にもいればいいのに」


 島の川にそれほどの川幅はない。残念ながら希望は持てないだろう。ただし、海ならそのサイズの魚もそれなりにいるはず。そちらを見据えた対策になる。


(なにより、海の魚なら生食できる可能性が高い。わりと急務だな)

 正輝は目論む。


「バッグと一緒に糸の準備も、だな。ロナもこれなら飛ぶ価値あるだろ?」

 流し見る。

「喜んでー」

「釣り用の革手もですね。難しそうでした」

「リールとまではいかないが、糸巻きくらいは作ってもいいな」

 少女は「りーる?」と首を傾げている。


 釣具となると構造がわからない。しかし、収納に便利な道具くらいなら想像でできる。食生活の充実は彼にとっても大事なこと。


「トカゲ食脱出の目星はついた。そのうち、干物とかいけるな。いいぞ」

「水トカゲは味見しないのー?」

「よせ。食うか食われるかをする趣味はない。それより、腹がこなれたら夕食用のを釣る。夜のために薪も多めに拾っておいたほうがよさそうだ」


 火は絶やさないようにすべきだろう。夜は水トカゲが上陸してきそうな気がする。周囲に焚き火をするくらいの気構えでいたほうがいい。


「ここはそうそう来れるところじゃないからな。とりあえず一泊は満喫しよう」

「そうですね。道すがら、結構な量のスパイスの実が採れたので、帰って乾燥させたいです」

「ルキならここでもできるんじゃ?」

「なぜかはわかりませんけど、スパイスは自然乾燥のほうが美味しくできるんです」


 そう言われると、家の壁には至るところにスパイスが吊るして乾燥させてあった。保存の意味かと思っていたが、どうやら本当に乾燥させていたらしい。


(小説や漫画の異世界みたいに保管用のアイテムボックスみたいな魔法があれば最高だったのにな。なかなかままならないもんだ)

 焼き魚をほとんど平らげながら思う。


 持ち帰る術があれば釣れるだけ釣るのだが、腐らせるくらいならそのままのほうがいい。あと二匹だけ釣ろうと思った。


「よし、行け、ロナ号」

「発射ぁー!」

 勢いよく小妖精(リトルエルフィン)が飛びだしていく。


 二匹ゲットした彼はエメルキアと一緒に薪を集めてまわる。平らな寝床の周りに焚き火を作り、交代で火の番をすることにした。


「大丈夫ですか、マサキ?」

「なんだ、眠れないか?」

 横になった少女が見つめてくる。

「ちょっと、興奮してるみたいです」

「そっか。楽しいか?」

「マサキが来てからずっと楽しいです」

「そりゃ良かった」


 正輝は微笑む少女の頭を撫でて寝かしつけた。

次回『島と世界(1)』 「ルキの格好はどうにも無防備すぎる」

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