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少女装鎧ジノグラフ  作者: 八波草三郎
孤島スローライフ

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島の探検(4)

 彼らがたどり着いたのは高確率で火口にできたカルデラ湖である。外輪部からのなだらかな斜面にはところどころに低木しかなく、ほとんどが草原となっていてバイクで走りやすかった。


「いいねいいね。なんか、ここに住みたくなってくる」

 正輝はいい気分で湖畔へと乗りつけた。

「綺麗ですね。ちょっと空気が薄いみたいですけど、慣れれば住めないことはないでしょう」

「飛びやすいけど向き変えにくい感じー」

「ちょっとだけだろ? 気にすんなって」


 ロナタルテの不満はわずかな感覚的なものだろう。運動すれば息が切れるかも知れないが、普通にしていて息苦しくなるほどではない。三千mも登った感じではない。


「とりあえず、水浴びするわ。汗臭くて堪んないだろ?」

 一番の気掛かりを口にする。

「そんなに気にはなってないですけどお先にどうぞ」

「ちょっと臭かったかもー」

「すまんすまん、すぐに流すから」


 さっさと服を脱いでざぶざぶと湖に入っていく。見た目のわりに急に深くなっていてびっくりするも、浸かるにはちょうどいいので全身を流しはじめる。

 爽快感を満喫していると、なんだか気配を感じて湖畔のほうを見る。エメルキアが火を起こしてくれているが特になにもない。なんの気なく振り向くと、湖面を一筋のさざなみが接近してきていた。


「なん……だと?」


 嫌な予感がして血が引く。後ろに頭から突っ込み全力で泳ぐ。足が着いたので立ちあがって走りだす。その頃にはギョロリとした目玉と背中の鱗が見えてきていた。


「ワニー!」

 一目散に少女のほうへ。


 水際を抜けても走って追ってくる。異様に大きく見えたが、実際には2m強くらいだろう。しかし、噛みつかれれば痛いどころでは済まないサイズの顎の持ち主である。


「あら」

「逃げろ!」

「マサキ、格好悪いー」


 かなり素早く走ってきて今にも追いつかれそうだった。だが、急になにかに殴られたように首が跳ねる。何度も弾けたように首を振ったかと思うと、くるりと向きを変えて湖水のほうへと戻っていった。


「ワニがいるのかよ!」

「水トカゲです。こんなに大きいのは初めて見ましたけど」

 事もなげに言う。

「教えといてくれてもいいじゃん」

「人を襲うほどとは思ってませんでした」

「魔法で叩いてあげたからいいでしょー」


 小妖精(リトルエルフィン)まで撃退に参加してくれたらしい。どうやら、この中で最弱は正輝なのかもしれない。


「マジか。あんなんがいたら悠長に水浴びもできない」

 愕然とする。

「もう、襲ってきません。痛い思いをしたのは忘れませんから」

「そうか。知らずに襲ってきたのか。そうだよな」

「ええ、ここに人間サイズの動物がやってきたのは初めてな気がします。思わず狙ってしまったのでしょう」

 おそらく湖で最強の捕食者なのだろう。

「どうしたもんか」

「ビビってるー」

「一緒に行ってあげますから」


 火を起こした少女が同伴を申し出でてくれる。エメルキアが下着になるのを待って、もう一度湖水に足を踏み入れた。しばらくすると先ほどのさざなみが複数近寄ってくる。


「めっ! です」


 一つのさざなみが、上からの衝撃波かなにかに叩かれて沈む。胴体ごと跳ねると慌てて泳ぎ去っていった。他の水トカゲもあきらめたように去っていく。


「教育しておきました」

「すまん。助かった」


 まだ警戒は解けず、少女に背中を洗ってもらっているあいだも沖のほうを見つめる。今度は本当に水トカゲが戻ってくる気配はなかった。


「まいった。あんまり穏やかな湖だったから油断した。こんなとこ、住めたもんじゃない」

「仕方ないです。この島でも最大サイズの捕食者かもしれません」

「そう言いながら笑わないでくれ」


 やっと落ち着いてきたので、交代してエメルキアの髪を流してやる。あまり汗もかかないし、垢という概念もなさそうな美少女だが髪は埃にまみれてしまう。綺麗に梳いてやると気持ちよさそうにしていた。


「あれ、食べます?」

「勘弁しろ。ゾッとしないぞ」

 戦う気になれない。

「どうすっか。草原のあちこちでウサギみたいなの見た気がするけど」

「うさぎ? 跳びネズミですね。あれを捕まえるとなると罠かなにかでないと」

「素早いよな。狩る道具を作るよりは……」


 水トカゲを思いだす。体長2mもあるトカゲが何匹も生息できる生態系がここにはあるのだ。それを利用しない手はない。


「釣ろう」

 湖水には魚がいるはず。

「糸ってメタルと融合したら強くなる?」

「はい、それなりに」

「じゃあ、それで」


 遠出に際して道具を詰めたバッグには少しずついろいろなものを入れてきていた。修繕用の糸もある。それを流体金属(メタル)で強化して、釣り糸にできないかと考えたのだ。


「よろしく」

「器に入れてください」


 もちろん、少女は流体金属(メタル)も革袋に入れて持ち歩いている。器に移して、その中に糸を入れて浸透させてもらった。取りだした糸は銀色の光沢を持つワイヤーのようになっている。


「十分だ。ここの魚はスレてないだろうから少々見えても大丈夫だろ」

「針もできましたけど投げないといけませんね。(おもり)も作ります?」

「いや、俺に名案がある」


 正輝は餌になるヒルを求めて周囲の石を裏返した。

次回『島の探検(5)』 「水トカゲに飛びつかれる前に帰ってこいよー」

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