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少女装鎧ジノグラフ  作者: 八波草三郎
孤島スローライフ

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バイクへの挑戦(2)

(大学の頃、バイクに凝っていじってて良かった。まあ、ライダーへの憧れが強かったのもあったし)

 正輝のはもちろんヒーローのほうである。


 バイクアクションなんかも当然のごとくできないと駄目だと思っていた。運転もしっかり練習したし、感覚を掴むために中身の勉強もした。それが役に立つ日が来ると信じて。意外にも異世界に来てからのことになったが。


「ほんと助かる。ルキは飲み込みがいい」

「いえ、そんな」


 ボールベアリングの構造などイメージを伝えるだけで理解してくれる。必要な強度なんかも察してくれて、ちゃんと合わせてくれた。家の中ではビュンビュンと扇風機代わりのプロペラが回っている。


「すごく楽に回るようになりました。マサキの世界の文明ってすごいですね」

「魔法が使えない人間ばかりだと工夫しないと便利な生活ができないってことさ」

 簡単に説明する。

「大概のものは作ってくれそうなんだけど、生憎と俺もトランスミッションの構造を完璧に理解するとこまで勉強してない」

「とらんすみっしょん?」

「回転数を制御して、回転数を落としてパワーを上げたり、とにかく速く回したりする構造のこと。歯車(ギア)の組み合わせでできるのは知ってるんだけど、考えるとなると難しい。それに、極端に重くなっちゃうんだよな」

 内燃機関(エンジン)みたいに簡単に大きな出力を得られる動力ではない。

「だもんで、Vベルトでの無段変速構造にしようと思う」

「ぶいべると?」

「簡単に言うとだな……」


 スクーターなんかが採用している方法で、車のオートマチック機構とも違う。断面がV型をした強固なベルトを用い、谷型に切った二枚の板に挟み込む方式だ。

 回転数がある程度上がるまではタイヤを少なく回転させてパワー重視にする。回転数が上がっていくとベルトが外側に滑っていって、タイヤをより多く回転させるほうに変わる。


「単純にいうと、最初はプロペラ十回転でタイヤが一回転するくらいにしとく。で、スピードが上がって進む力が小さくても良くなってきたら、二回転で一回転させるとかにする」

 かなり雑な説明をする。

「物を動かすのには、最初は大きな力がいるけどだんだん小さな力でも動くようになるからですね」

「いやー、ルキはほんとに頭が良いな。それさ。それがベルトが二枚の板の中のほうか外のほうか、どこで噛んでるか変えることで回転数を制御する方法」

「わかります」

 頭の中で想像している様子。

「やってみないとわからないけど、上手くいったら自動で変速制御ができるようになる。そうなると、俺がするのはクラッチ操作、そのベルトに動力を伝達するか否かだけになる」

「楽ですね」

「なにせ、俺は動かすのが下手だ。操作する部分が少なけりゃ少ないほどいい」


 理想は理想。実験してみなければ可能かどうかはわからない。ただし、今の正輝にはエメルキアという素晴らしく優れた部品加工の担い手がいる。

 当時の日本人開発者が苦労して部品を工夫しつづけたのに対し、彼はその場で微調整ができてしまうのだ。このリードはあまりにも大きい。


「みるみる形になってくるな」

「でも、ちょっとずつ問題も出てきてます。強度の関係もありますし試行錯誤はしないとですね」


 なにせ、数秒で0.1mm単位の調整をしてくれるのだ。厚さを厚くしたり、スプリングの強さまでその場で変えてくれるのだから開発は捗っていく。


「ギアを使わないと駄目なとこもあるな。重くなる。面白くない」

「ベルトを多用すると劣化が心配です。構造的に交換も大変なので強度の高い構造にしたほうが良さそうです」

「ある程度の重さは仕方なしか。シャーシフレームやケーシングも金属製にするしかないもんな」


 並行してブレーキも作らないといけない。走らせるのと同じくらいに止めるのも大事だ。ドラムブレーキは考えてみたが意外と難しかったので、単純にディスクブレーキにした。動かすところが挟むところだけなので正輝には都合がいい。


「タイヤはオフロード仕様にしたいとこだな」

 島には舗装道路などない。

「おふろーどとはなんですか?」

「悪路走行可能な形になってるってこと。こう、表面を凸凹させてさ、石とか土でも捕まえやすい感じにする」

「形を変えるだけでいいのなら簡単です」

 サイズ調整の必要ない皮の加工は容易だという。

「いい感じ。さすがにチューブレスとはいかないけど、被膜皮でチューブ作れるし」

「空気の圧縮とかも任せてください」

「その調子でサスペンションのほうも頼むわ。やっぱ、案外速く走るものができそうだし、尻が痛くなるのも嫌だしな」


 要となる機構も多様で作るべき部品は多い。アイディアの問題もあるだろうが、こちらの世界で二輪車の概念がないのはそういう理由からかもしれない。それなら、走りトカゲを育成するだけで十分、と。


(かなり趣味の乗り物になってきたな。便利だから作りはじめたつもりだったのに)

 予想外だった。

(まあ、いいか。どうも、人間の乗れるサイズのトカゲを愛好できる自信もないし)


「さて、最大の難関に挑むべきときが来たみたいだぞ」

「まだなにかあるのですか?」

「ルキにも無理かもしれない」


 正輝は未だその問題の解決策の端緒さえ掴んでいなかった。

次回『バイクへの挑戦(3)』 「あんなに可愛くなくないもん」

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