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少女装鎧ジノグラフ  作者: 八波草三郎
孤島スローライフ

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23/30

バイクへの挑戦(1)

 正輝は念動力(サイコキネシス)の練習を数日頑張ってみたもののヒルレベルから気持ち伸びただけだった。それ以上はどうしても上手くならない。


(常識が邪魔してるのかもしんないけど、下手なのはどうしようもなく事実か)

 四半世紀の人生経験は簡単に消しされない。


 変わらず、涼しい午前中に洞窟への開通作業をし、午後は別の思いつきも試すようになっていた。それはエメルキアの協力なくしては始まらない。


「これ、回して」

 作ってもらったのは軸受とプロペラである。

「暑いですか?」

「暑くないって言ったら嘘ってとこだけど、これは別に使う」

「はぁ、回します」


 午前中の作業の後は汗だくになっているので川で水浴びして帰る。それが少女の最初の勘違いを起こさせたのだろうが目的は別だ。

 だいたい、真っ先に流体金属(メタル)加工で作ったのがバスタブだった。川の傍に置いて水を汲み、エメルキアに湯にしてもらう。気持ちよく入浴しているとエメルキアもロナタルテも一緒に入りたがるのが玉に瑕だが。


(裸体に羞恥心が乏しいのはどうにかならんものか)

 これも常識に関わる部分なのでなんともいえない。人間にも裸族がいる。


「こんな感じでいいです?」

 プロペラは結構な速度で回っている。

「いいねいいね。ロナ、絶対に触るんじゃないぞ。細切れになる」

「わかってるもん。刃物回ってるような形だし」

「興味が先に立つ子どもじゃないんだったな」

 つい悪戯しそうだと思ってしまう。


 流れる風に逆らって飛ぶ小妖精(リトルエルフィン)がそのまま突っ込んでしまわないか気になる。仕方ないので別の遊びを教えてやる。


「そこで『あー』って言ってみな」

 手に捕まらせてから言う。

「? ああああああああ。なああにいいこおおれええええ」

「声が跳ね返ってきてるんだ」

「おおおもおおおしいいいろおおおおいいいいい!」

 しばらく遊ばせておいてから次の段階へ。

「ルキ、回転を速くしたり遅くしたりってどのくらい自由になる?」

「できますけど、自在にとなると慣れが必要になります」

「急にってのは無理か。まあ、惰性で回る分もあるし」


 緩んだり速くなったりはするものの変化は急激ではない。プロペラそのものの重さもあることだし、彼女たちの能力の適性もある。

 石を飛ばす魔法も見せてもらったが、それは一気に撃っているだけ。加速しつつ一箇所で円を描きつづけるとかの運動をさせるのは難しいらしい。


「じゃあ、ずっと回しつづけるのは疲れる?」

 力の使い方としては楽なはず。

「簡単です。精気の供給だけあれば」

「問題なしか。目鼻は付いたな。あとは俺の知識が通用するか否か、か」

「なにをするんですか?」

 疑問に思ったらしい。

「乗り物を作ろうかと思ってる」

「それでですか。車は、押し車で走らせるんですよ?」

「押し車?」


 少女が絵に描く。それはハムスターとかの回し車のようなものだった。木で作った円盤同士を棒で繋げている。丸いハシゴのような形をしていた。


「これを回して革ベルトとかで車輪に伝えます。それで走らせる荷車のことです」

 この異世界にはすでに車という概念があるようだ。

「そうか。念動が得意ってことは、わざわざ動物に車を曳かせる必要がないってことか。俺が一番じゃなかったな。当たり前か」

「乗り物ってよりは運搬用ですけど。マサキもそうじゃないんですか?」

「いや、俺のは完全に乗用としての構造」


 彼が理想としているのはオートバイである。純粋に乗りまわす目的の乗り物が欲しかった。しかし、この世界にはガソリンもなければエンジンもない。

 ならばと思ったのが念動を動力源にする考えだ。最初から回転力にしてしまえばいい。ただし、実験結果として直接タイヤを回すのは操作上有効ではない感じだ。


(重たいものを回転させて惰性まで使う。それが一番パワーを安定して取りだせそうなんだよな)

 だから、プロペラを作ってみた。まずはエンジンである。


「金属製になるからさ。押し車を作ると重くなる」

 少女は「なるほど」と納得する。

「それに高速で回転させると摩擦で熱くなる。冷ますのにも風が作れるといい」

「よく考えてますね」

「これも俺には常識のうちなんだ」


 エンジンほど熱は出ないが空冷式になる。軸受というのも真剣に考えなくてはならないが正輝の知識でどうにかなるか模索が必要だろう。


「その常識がこちらの人間にはないからかもですね」

「なにが?」

 意図が読めない。

「人が乗るだけなら走りトカゲを使います」

「もしかして、人が乗れるサイズのトカゲがいる? それって噛みつかない?」

「噛みません。草食のトカゲを飼いならして使ってるみたいです」


 乗用動物がいないというのは思い違いだった。島の外には当たり前にいるらしい。


「あとは『クラッチ』機構と変速機構か」

「くらっち?」

 当然に変換されない。

「俺の考え的には、ルキにはずっとプロペラを回すだけに専念してもらって、それを車輪に伝える仕組みは自分で操作しようと思ってる」

「それがいいかもですね。幸い、流体金属(メタル)の加工品は魔法の伝わりが非常にいいみたいですし」

「利用できるだろ?」


 いろいろと試すうちに判明した事実だ。彼は流体金属(メタル)のドミノならわりと簡単に動かせるのに、持ってきた石だと同じくらいの重さでも力は半減する。どうやらメタルを介在させるだけで力の伝達が容易になるという仕組みらしい。


「クラッチと変速機、ブレーキあたりは俺でなんとかなる。ルキにはエンジンをやってほしい」

「『ぷろぺら』を回す役ですね。結局はマサキがエネルギー源ですけど」

「ああ、持ちつ持たれつだ」


 二人乗り前提ながら一歩前進だと正輝は喜んだ。

次回『バイクへの挑戦(2)』 「マサキの世界の文明ってすごいですね」

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