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少女装鎧ジノグラフ  作者: 八波草三郎
孤島スローライフ

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22/30

念動の練習

 正輝はエメルキアの指導で魔法の練習を始めていた。練習方法は簡単なこと。少女とベタベタすればいいのである。膝の上に座った彼女は彼の腕に触れたままだった。


「力の変換はこんな感じです」

「んー、こうか?」


 要は、言葉みたいな複雑なものでも伝達する手段があるのだから、同じ要領で伝えてもらえばいいという考え方。精気を念動力(サイコキネシス)にする力の変換方法をエメルキアに実際にやってもらい、それを正輝が感覚的に習得しようというもの。


「ふん!」

「はう……」

「どした?」

 気張ると、胸の中で少女が力が抜けたようになる。

「マサキがすごい精気を流してくるものだからピリピリってして」

「感電したのか?」

「リトルエルフィンを産んでしまいそうです」

「いやそれ発情してない?」


 言われると少女は顔を上気させている。妙に艶っぽくなった表情に彼は困ってしまった。


「大丈夫です。本当に産まれちゃったりはしません」

 少し息を荒くしたエメルキアが言う。

「満腹ですごいことになってるだけです」

「よくわからん」

「ロナにも分けてー」


 小妖精(リトルエルフィン)が腕にしがみついてきて満足そうにしている。満腹になったのか、そこで力尽きたように眠りはじめた。


「ったく、なんなんだよ。俺はそれどころじゃないってのに」

 持ちあげて横のベッドに寝かした。

「すみません。ロナはわたしほどのキャパシティがなくて」

「すぐにいっぱいか。そんなに精気を放ってる?」

「驚異的です。まるで無尽蔵に湧きだしてくるみたいで。どうなってるのか聞きたいのはわたしのほうかも」

 力が抜ける。

「なんだかな。魔力すごい系じゃなくって、ただのエネルギー源かよ」

「たまに言うそれはなんなのです?」

「わからなくてもいい。こっちでも不遇なのかもなってだけ」


 気落ちすると、少女に心配を掛けてしまうので自制するが悲しくもなる。望んでも望んでも彼の求めているものは手からすり抜けていくかのようだ。


「疲れてませんか?」

「いや、体力的には問題ない」


 最近は、比較的涼しい午前中に茂みの刈り払いをしている。例の洞窟への道を作りたくて作業に精を出していた。それは自身が求めるいろいろな道具作りに必要なので苦痛はない。


「せやっ!」

 気合で弾みをつける。

「あ、今の悪くなかったです」

「お? こうか?」

「そんな……、そんな感じです」


 気合が入るほどに少女が色っぽい反応をしてしまうので悪いことをしている気分になってくる。気が抜けそうになるのを必死に食い止めなくてはならなかった。


「はぁ……」

 とうとうエメルキアもダウンした。

「なんとなくわかった気がするから休んで」

「すみません」

「いいって」


 少女を抱きかかえてベッドに横たえる。そのまま毛布を掛けてやると寝息を立てはじめた。


「ふん!」

 気張ってみても変化はない。

「どうすりゃいいんだ?」


 目の前には、流体金属(メタル)で作ってもらったドミノのコマくらいの小さな板。それを触れずに倒したいだけなのに上手くいかない。


「気合の入れ方が違うのか? はぁ!」

 つい小さい頃に観たアニメキャラの必殺技みたいな動作をしてしまう。

「お?」


 パタリと倒れる。多少は空気は動いただろうが倒れるほどの風は起こせてないはず。どうにか念動力(サイコキネシス)が効果を発揮してくれた様子だ。


(そうじゃないと困る。ここはサイコキネシスが働きやすい世界のはずなんだぜ?)

 そこでどうにもならないではまったく才能がない証明になる。


「たかが4、5cmのヒルが自分を浮かせられるってのに、精気は強いって言われる人間が板一枚倒すのに苦労してどうする」


 嘆いたところで才能に恵まれてないのは事実なようだ。大人しく金属板を立て直すと気合いを当てつづけた。


「上手になりました」

「どうにか」


 エメルキアが目を覚ました頃にはコンスタントに倒せるようになってきた。ただし、派手なモーションを必要とする点は改善したいところ。


「魔法はイメージに起因するところが大きいんです。マサキの場合、身体を動かすのが要因になったとしても変ではないかも」

 相談するとそんな回答がある。

「でもさ、格好悪くない?」

「……大丈夫です」

「一瞬の間ですべてを語らないでくれ」

 落胆しつつも練習を続けるしかない。

「でも、あきらめず何度でも挑めるのも才能だと思います」

「くり返し鍛錬するのは慣れてる。そんなやり方しか……、待てよ」

「どうしました?」


 勘違いしていた気がする。力の使い方なのだから、身体を動かすのと同じに考えていた。イメージなのだから、もっと理論的に挑戦してみたほうがいいのかもしれない。


「もしかして、こう?」

「あ!」


 倒れていた板がスッと立った。物が軽くなる、つまり重力を断ち切るイメージで持ちあげようとしてみたのだ。どうやら正解だったらしい。


「できたじゃないですか」

「できた。そっか。こんな感じか」


 板は浮き、横滑りを始める。そんなスピードは出ないが、テーブルの上で自在に動かせるようになっていた。


「よし! どうにかヒルレベル!」

「です!」

「言っててなんか悲しくなった!」


 正輝がテーブルに突っ伏して嘆くのをエメルキアは慰めてくれた。

次回『バイクへの挑戦(1)』 「乗り物を作ろうかと思ってる」

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