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少女装鎧ジノグラフ  作者: 八波草三郎
鴻ノ木正輝

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19/28

幹部怪人ゼネラルアビス(1)

 鴻ノ木(こうのぎ)正輝は改造人間である。ただし、仮面ライダーではなく幹部怪人ゼネラルアビスであった。


   ◇      ◇      ◇


 幼少期の正輝は一般的な少年だ。普通にテレビのヒーローものに傾倒し、将来はヒーローになると豪語していた。


 それも、いつまでも続きはしない。小学校に上がる頃には当然のようにそれはテレビの中だけのフィクションだと覚る。ただし、正しい行いを求める心は幼少期に培われたともいえよう。


 小学校に通うあいだは様々なスポーツに触れた。両親はそれほど勉強にうるさくなく、自由にさせてくれたのが幸いする。身体は問題なく成長した。

 中学校からはフルコンタクト系の空手を習うようになる。格闘技をするのは、幼い頃に観たヒーローへの憧れの余韻のようなものか。力なくして正義は語れないという思いが根底にあったように思う。


 高校生ともなると競技としての格闘技は本格化し、通っていたクラブから個人選手として大会に出るようになった。二年生にもなると全国大会にも顔を出す。

 多少は期待もされたが、それほど優秀な成績は収めていない。どこか不満のあった格闘競技にのめり込めなかった自分もいた。


 大学受験にあたり、体育会系の推薦ももらえてなかった正輝は、なにか水の合わなかった文系を捨て理系に行く。そこで巡り合ったのが鉱物学だった。

 しかし、大学進学後すぐに芸能事務所にスカウトされる。あまり意識していなかった彼だが、実は顔の造作は整っているほうなのだった。仕事が忙しくなり、鉱物の勉強は浅く広くで終わってしまう。


 事務所に入ると、経歴からアクション俳優の道があると気づいてしまう。それは、子供の頃に憧れたヒーローへの道であった。

 もちろん、実際にヒーローになれるのではない。ただ、自分のように瞳を輝かせて憧れられる子どもたちのヒーローになるのが目標になった。


 二年ほどは下積み生活だった。刑事もののチンピラ役だったり、単発の犯人役だったり、どちらかといえば顔出しの仕事のほうが多かったと感じる。事務所の方針なのでそうは逆らえない。

 そんな中でオーディションで合格したのが、ずっと続いている戦隊ヒーローシリーズの次期新作『速攻戦隊クウテイジャー』の敵役、悪の組織『アビスコネクト』の幹部怪人『ゼネラルアビス』。しかも、人間形態もあるゼネラルアビスのスーツアクターだけでなく顔出しのほう、深見将人役も兼ねる抜擢だった。


 そして、一年続いた『速攻戦隊クウテイジャー』は大当たりする。それも、アビスコネクトの幹部怪人ゼネラルアビスは、特撮好きの女性陣に大受けしてしまい、本当は終盤で討伐されるはずの設定が変更になり生き残ってしまった。

 その後、クウテイジャーは一年に二回は劇場版が制作されつづける。当然、正輝はゼネラルアビスとして配役続行となった。


「マネージャー、俺、そろそろ他のヒーローものにも挑戦したいんだけど」

 三年我慢して言いだしてみた。

「なに言ってる。お前、ゼネラルアビスじゃん。それで十分当たってるだろ?」

「もちろん、ゼネラルアビスの仕事で結構食えてるのは確かだけどさ」

「無理だって。もう、『ゼネラルアビス』深見将人でイメージ固定しちまってる。他なんか出られるもんか。子どもたちにさえ顔が売れまくってる」

 長編シリーズによるイメージとは怖いものである。

「せめて、スーツアクターだけでいいから」

「駄目。社長にストップ掛けられてる。まだ、お前を顔出しで売りたいんだとさ」

「それだってままならなくなってるのに」


 たまに刑事ものとか他のドラマにちょい役で出ても、SNSではゼネラルアビスだと彼を呼ぶ。ゼネラルアビスの人間形態が刑事ものに出てたと揶揄されるのだ。

 正直、クウテイジャーを降りたくもなってくる。他のクウテイジャーのヒーローたちは人気が出て主役級でドラマデビューしていく中、正輝だけがゼネラルアビスとして取り残されていく。


「まあ、同情はするさ」

 マネージャーも言う。

「子ども時代に恵まれず、悪の組織に身を投じて改造され、闇落ちしていく姿が特撮ガールズにめっちゃ刺さったみたいでな、ほとんどお前をクウテイジャーのメインみたいに扱ってる部分もある」

「なんか、同人誌とか多量に出まわってるって聞いた」

「これだけ続いて購買力まで持っちゃった彼女たちがゼネラルアビスを買い支えてしまってるんだよ。制作側も引くに引けなくなってる。それはなんだ? 結局、入れ込んで演じたからじゃないか」

「俺の所為か?」


 今ひとつ納得できない説得の仕方をされるものの現実はそうである。クウテイジャーの現場では非常に待遇が良いのも事実なので認めざるを得ない。彼を悲劇のヒーロー的に描くシナリオでも制作されている。


「せめて、ヒーロー側に転進できてたらな。こんなに悩むことなかったのに」

「馬鹿言え。ゼネラルアビスの悪でありながら悪に徹しきれないところが特撮ガールズに受けてんだ。今さらクウテイブラックとかなれるわけない。クウテイジャーとのライバル関係とかも未だにヒットしてる一因なんだし」

「アクション、張り切りすぎたか」

「あー、お前の本格的なアクションも好評だな。地味なのに」


 いろいろと重なり合った現実に打ちひしがれる正輝であった。

次回『幹部怪人ゼネラルアビス(2)』 「今のお前に母さんを任せられるか」

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