地学流開拓(4)
「この世界は物を動かす超能力が得意な生き物ばかりがいる世界。いや、むしろ超能力が働きやすい世界というべきか?」
「可能性としてマサキも慣れたら使えるようになるかもしれないと?」
「期待を込めて、だな」
正輝は実証を終えて満足気にエメルキアを見た。ロナタルテは自分が飛んでいるのが不思議なことと再認識した様子で身体のあちこちを見ている。
(まあ、当たり前すぎてどういう力の使い方をしているかも認識できてないんだろうけどさ)
下手に疑うほうが失敗を招きそうではある。
「それで、魔法の仕組みがわかるとどんな便利な点があるんですか?」
「そこ、ツッコむ?」
痛いところを突かれる。
「俺の自己満足だな。魔法と呼ばれている能力は厳然としてあるし、それを看破したからって打ち破れるわけでもない。強いていえば、どんな使い方をすればもっと便利になるか第三者的視点に立てるってところだな」
「第三者的視点。なるほど」
「要は、今もいろんな使い方をして活用してるけども、それをもっと広く便利に使うこともできそうだなって話」
ここまで暮らした中でも、エメルキアやロナタルテの知識は彼に及ばない点が様々あった。経験値というよりは一般常識的な差。その差を利用して融合させればいろいろなことができそうに思う。
「例えば洗濯桶」
「川のですか?」
「行ってみようか」
ただの桶に入れて洗濯板でじゃぶじゃぶ洗うのよりは便利になっている。それでも、縄跳びの要領で板を回転させる、歯車と皮ベルトで力を伝達する仕組みはかなり原始的になっている。
「この歯車なんかは相当壊れやすいだろ?」
「はい、数カ月に一回は使えなくなって交換です」
構造的に単純だ。円盤の外周に棒が幾つも立っているだけのもの。実際に今も何本か刃が欠けてしまっている。
「これは根本的に素材が弱いから。見た目からして、そのへんの砂と流体金属を使って作ってるんじゃないか?」
指で叩きながら尋ねる。
「御名答です。石みたいなものなので割れやすいんです」
「これをさっきの金属製のものに変える。それだけでも強度は上がるが、もっと工夫ができるな」
「もっとですか?」
今の構造では棒の根本に一番の負荷が掛かる。こすれて削れてくるし、割れもするだろう。それを近代的な歯車に変えていけばいい。
「ここって雨降ったら増水する?」
重くて簡単に動かせないものになる。
「そんな長い川でもないので、この場所で脛の高さ程度です」
「だったら流されないな。本格的にやろう。できれば、型を作って同じものにしたいけど元型がいるな。木を彫るか」
「マサキのイメージを伝えてくれれば流体金属で作りますけど」
「そいつはいい。原型作って、それで型枠を作ろう。型枠はもったいないから川砂製でいい」
少女と手を繋いでイメージを伝える。エメルキアが彼のイメージを元にメタルの金属歯車を作りだした。今度は外枠にメタルと川砂を入れて固めてもらう。メタルの原型を抜けば歯車の型ができている。
「これにメタルと採ってきた金属を入れて融合させると金属製歯車のできあがりさ。同じサイズの歯車をいつでも何度でも作れる」
「こんな考えがあったんですね」
「面白ーい」
物をイメージで作りつづけてきた彼女たちには新鮮な驚きだったらしい。しきりと感心している。要は、魔法みたいな力を使えない人類が培ってきた文明技術。
「力の伝達は安定するし壊れなくなった。でも、これじゃ足りない。ここ、回転軸を垂直に曲げてるだろ?」
歯車同士を直角に交えて回転軸を水平から垂直に変えている部分がある。
「ここが一番壊れやすいです」
「物を変える。『かさ歯車』とか『テーパーギア』って呼ばれてるもんだ」
「作ります」
再びイメージ伝達をして流体金属を固形化成形してもらう。円錐状をしている直角に噛ませる歯車だ。それも同じ要領で型を作り準備完了。
「ついでに自動化しよう」
提案する。
「自動化って?」
「放っとけば回るようにする。ここだと風車じゃなく水車のほうがいいな。あと、桶の中の回転棒も衣類が傷みにくいものする」
「そんなに工夫するんですか?」
伝達歯車以外の部分は磨耗とかあまり考えなくていいので直接イメージ伝達だけで作る。川の流れで回る小さな水車と歯車を軸で繋げ、桶の中に洗濯機の中にあるようなプロペラ盤を作って換えた。
「それっぽくなっただろ?」
改良が終わる。
「水の動きがソフトになりました。それでいてしっかりと回ります。水を汲むだけでよくなりましたね」
「すごい! 面白い!」
「これからは適当な時間、入れとくだけで洗濯は終了」
渦に飛び込みそうな小妖精を回収する。実験がてら洗濯物を持ってこいと言ったら、喜び勇んで家に飛んでいった。
「マサキは本当にいろんな知識を持ってるんですね。びっくりします」
エメルキアも瞳をキラキラさせている。
「前いた世界でどんな勉強をしたらそれほど広範な知識を溜められるんですか?」
「どんなって、普通だな。俺の世界じゃある程度の知識は義務的に教えられる」
「それってすごいことじゃないです?」
この世界では違うようだ。
「好んで勉強した分野もあるからな。日常からもいろいろ」
「どんな生活していたか気になります」
「んー、あんまり望んでた将来じゃなかったんだけどな。わからないとこも多いだろうけど話してみるか」
戻ってきたロナタルテを肩に乗せると、正輝は少女に自分のこれまでのことを語りはじめた。
次回『幹部怪人ゼネラルアビス(1)』 「なに言ってる。お前、ゼネラルアビスじゃん」




