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少女装鎧ジノグラフ  作者: 八波草三郎
鴻ノ木正輝

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パムール島の暮らし(5)

 狩った飛びトカゲの切り取った被膜を正輝が金属棒で叩いて柔軟にする。エメルキアはそれを繋ぎ合わせていく。接着ではなく、組織を編み合わせて接合しているという。接合させた一枚皮には確かに接着跡もない。


「組成が同じものだとこういう魔法が使えます。違うと非常に難しいですけど」

「一時的に分解してるみたいな感じかな。自分の身体も変形させられるルキたちにはそんな魔法も使えるんだ」


 当面はそれで話を進めている。彼はまだ魔法には不審感を抱いていた。便利は便利だが、そのひと言で片づけるには条件が厳しいと思う。


(不便な一面も多すぎるんだ。全然派手さがない)


 例えば、炎を出してくれと言っても無理だと言われる。そこに燃えるものがなければ火は点かないのだそうだ。当たり前といえば当たり前である。

 炎とは要するになにかが気体燃料になって光と熱を発している部分のこと。任意の空間に急に炎を生みだすとなると、燃料をどこかから取りだしていることになる。アイテムボックスみたいな空間魔法がないと物理的に不可能。


(案外、この縛りが物理法則に従ってる面がある。そこになんか秘密がありそうだ)

 正輝はそう感じていた。


「あれ? でも、魔法で繋ぎ合わせるんだったら糸いらないんじゃね?」

「繋ぎ合わせるのまでは簡単でも、成形はできないんです。一枚皮を作ったら切りだして縫い合わせないといけません。接合しようとするとサイズが合わなくなります」


 そのへんのコントロールが難しいのだという。専門家ならピッタリと繋ぐのも可能なのだが、素人の少女にはその加減が上手くできない。一度切りだした素材のサイズを変えられない以上、縫い合わせるのが確実だという。


(失敗しても直しが利くってわけか)

 理解した。


「どんな感じですか?」

「いいじゃないか。こっちが裏地なわけだろ?」


 パンツ一丁にされてサイズ合わせをしていく。被膜の表側、飛びトカゲの身体の上側に当たる部分の表面には産毛のようなものが生えている。それで撥水しているらしい。そっちを裏側にすると肌触りが良くなる仕掛けだった。


「こら、ロナ。パンツをずらすんじゃない」

「だって、ここに潜ると具合よさそうなんだもん」

「人の下半身を棲家にすんな」


 倫理観が怪しいというか、羞恥心に乏しいのはエメルキア、ロナタルテに共通している。二人とも、寝るときは平気で服を脱ぐし、下着で彼にくっついて眠る。いくら栄養補給とはいえ潔すぎる。


(下着っつっても布を簡単に成形しただけのもんで、胸の後ろや腰で括ってるだけだしさ)

 簡単にはだけそうで危うい。


「じゃあ、これで縫っていきますね」

「問題は『チャック』のとこな」

 そこで気づいた。

「『ちゃっく』ってなんですか?」

「変換されなかった。ここって正式にはなんていうんだろ? ともかく、俺には君たちに付いていないもんが付いていてだな」

「男性器ですね」

 ダイレクトに言われた。

「まあ、そうだ。男の場合、用を足すのに使う。簡単に取りだせるかどうかで利便性が違うわけだ」

「そうでした。わたしの服とはぜんぜん違う構造なの忘れてて」

「考えてくれると助かる」


(二人のは開けっぴろげすぎる)

 そうは思うが言いだしにくい。


 一枚布に頭を通して下げるだけ。お尻の側を前に巻き、表側を後ろに巻いて腰紐で結んでいる。なので、横がスリットみたいになっていてしゃがむと太ももまで丸見えになる。外で強い風にさらされたときも際どい感じだった。


(用足しには便利だろうけどさ)

 まくるだけである。


「男性器の部分は……」

「あまり声高に言わないでほしい」

 正輝のほうが恥ずかしくなる。

「ウエストは革紐かなんかで締めるにしてもさ」

「縦に割って重なるようにしましょう。産毛を取っておくと密着するので力を入れないと剥がれなくなります」

「それはいい。貼り合わせが悪くなってきたら……」

「簡単に直せます」

 問題解決して安堵する。


(チャックか。あれば便利だけど、こればかりは簡単に作れるもんじゃない。文明万歳なところはある)

 あまりに身近だとその便利さを忘れてしまいがちだ。


「不思議ですね、ロナ。マサキはなんで男性器を敬遠するのでしょう」

「変だよねー」

 怪訝な顔をされる。

「いや、そこは恥ずかしがってほしいわけよ」

「でも、わたしたちにとってはベストな精気供給源なものですから」

「だったなー。ルキってそのために人間の姿をしてるんだった」


(なるほど、これは妖精種(エルフィン)たちが妙齢女性の形態だと問題になったわけだ。なんだっけ? 淫魔(サキュバス)か。そんなふうに見えても変じゃない)


 妖精種にとっての繁殖活動が人間にとってもそうであれ、一方的に吸われるだけに思われてしまう。恐怖心に繋がってもおかしな話ではなかった。


「俺、作業進めるわ。被膜以外のところはベストにしてくれるんだったよな」

「お願いします。ボトムスできたら、この『らんにんぐぱんつ』を変成させてシャツと下着を作りますから」

「頼むわ」


 正輝は下がパンツ一丁で作業させられているのを深く考えないことにした。

次回『地学流開拓(1)』 「変だろ。でも、面白いことが起こるんだぜ?」

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